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●「日本は本当に経済成長しないのか」(EJ第3221号)
2012年01月19日 :{Electronic Journal}
財務省の増税シナリオの2つの前提条件を再現します。前回は1について考えたので、今回は2について考えます。
1.日本の政府負債残高は対GDP比で2倍もあり、このままでは財政は破綻する
2.日本の名目GDPは成熟国家であるがゆえにもはや0%程度しか成長できない ←
昨日の検討で、日本の「政府負債残高は対GDP比2倍」という事実は、けっして褒められたことではないが、負債の積み上げに疑問があることや、負債総額の大きさだけを問題視して強調し危機を煽っており、プラスの金融資産を差し引きしたネットで見る必要があります。
OECD諸国ではすべてネットで債務残高を計算しているのです。そういう計算をすると、日本の負債残高は対GDP比で米国並みの80%を少し上回る程度なのです。これが、昨日検討した事柄です。繰り返しますが、日本の財政はよくはないものの、危機的ではないと申し上げておきます。
それでは、第2の前提について考えます。
財務省のシナリオでは、「日本の名目GDPはもはや成長しない」と考えているようですが、これは大間違いです。確かにバブル崩壊後に15年間も名目GDPがまったく増えていないのは事実ですが、その原因はデフレにあり、政府や日銀が本気になってデフレを克服しようとはしないで、放置したことがその結果を招いているのです。まるで、消費増税をする環境を整えるためにそうしているのではないかとさえ思えるほどです。それも日銀はデフレを維持し、しかしそれがより深刻化しないよう巧妙にコントロールしているようにすら見えるのです。財務省や日銀はきっとデフレが好きなのでしょう。
少し話が外れますが、今回の消費増税について、前原政調会長がある雑誌で次のように話しているので、ご紹介します。
ある金融機関の頭取から伺った話ですが、普通なら消費税を上げたら、景気が悪くなると予想され、円が下がり、金利が上がり、株価が下がる。しかしこれまで日本は、政治が財政再建の意思を示さなかった。一方で、税率5%は世界的にも低い水準で、それを引き上げた場合には、むしろ政治決断を評価し、円が上がり、金利が下がり、株価が上がる可能性もある、と。
──「Voice/ボイス」2012年2月号より
この発言には異論があります。しかし、野田政権の消費増税推進の考え方がこれにあることは確かです。それにこの対談にはいささか違和感を覚えたのです。このときの対談相手は竹中平蔵氏なのですが、2人の意見がまるで噛み合っていないし、竹中氏もいつもの主張を妙に抑えたところがあって、スッキリしない対談になっていると思います。
前原氏は「政治が財政再建の意思を示さなかった」といっていますが、そんなことはないと思います。自民党時代にも何度か財政再建に取り組んでいます。それよりも問題なのは、経済政策が間違っていることです。景気が悪化して景気対策を行っても、少しでも景気が上向くと、すぐ緊縮財政政策を取り、それを潰してしまうことを何度も繰り返していることです。
なぜそういうことになるのかというと、経済政策の実権を財務省が握っていることにあります。それは、橋本内閣による中央省庁再編によって、2001年1月から、経済企画庁の機能が内閣府に吸収されたことと無関係ではないのです。
経済企画庁は経済問題を所管する専門部署ですが、そんなに強い権限があったわけではないものの、これによって外から国の経済運営が見えたのです。しかし、内閣府に入ってしまうと、経済運営の司令塔が外部から見えにくくなり、その事実上の実権が財務省に握られてしまったのです。このように、官僚主導は経済運営にまで及んでいるのです。
したがって、経済に弱い首相や経済閣僚が就任すると、経済運営の主導権は財務省の思うがままになります。彼らは勝手にやってたとえ失敗しても、責任は政治家に取らせることができるので安心して自由に何でもやれるのです。自分たちの身は安全地帯に置いて、勝手な考え方で国を事実上運営しているのです。今回の野田政権の消費増税の推進が財務省のシナリオに乗って動いているのはそのためです。
確かに日本のような先進国になると、現在の中国のように高度成長は無理ですが、4%〜5%の成長は可能なのです。リーマンショックに遭い、いまだ失業率が9%台であえぐ米国ですら2010年度の名目GDPは14兆5265億ドルであり、前年比で4.2 %の経済成長をしているのです。
もし、日本の名目GDPが平均して年4%成長していれば1992年度の名目GDP483兆円は、2010年には980兆円になるのです。20年でほぼ2倍になるわけで、世界一の経済大国の米国と肩を並べる存在になっていたのです。
このようにいうと、名目GDP成長率4%なんか夢のまた夢という人が多いと思われるが、これまで米国や欧州ではごく普通の成長率であり、けっして異常ではないのです。むしろ、15年間にわたってデフレを放置して、意図的に経済成長を抑えているように見える日本の経済運営の方がはるかに異常です。
現在日本にとって深刻なのは、赤字国債が年々増えていることです。これを解決するには税収を向上させることです。そのために何をするべきでしょうか。それは名目GDPを向上させることなのです。そのためには、何よりも早く日本経済をデフレから脱却させることであり、消費増税ではないのです。デフレからの脱却は不可能ではないからです。
── [財務省の正体/47]
≪画像および関連情報≫
●竹中平蔵氏VS前原誠司氏の激論
前原/もちろん、財政政策と・・・税制だけでは「3%の名目成長、2%の実質成長」というような目標は果たせない。 竹中/そこで留意したいのは、現政権は日本の名目成長率を1%強に置いて財政再建計画を組んでいるということです。
そこでは政府と日銀がアコード(協定)を結び、財政政策と金融緩和を協調して行なう姿勢も必要になる。そのような姿勢なくしては竹中さんがど指摘のとおり「ワニのロが広がったままで、いくら増税してもムダ」でしよう。
しかし諸外国をみると、たとえばアメリカの計画は名目成長率3・5%。イギリスは5%。日本は人口が減っていきますから、アメリカやイギリスよりは低いにしても、やはり3%ぐらいを実現しないと成果は出てこない。まずは名目成長率の目標をきちんと設定し、なおかつ水ぶくれしている約10兆円の歳出をしっかり削る。これが不可欠です。
──「Voice/ボイス」2012年2月号より
「Voice/2月号」
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元記事リンク:http://electronic-journal.seesaa.net/article/246974833.html
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