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(回答先: 世の中間違っとるよ〜 遺憾に存じます/植木等 投稿者 五月晴郎 日時 2012 年 6 月 16 日 01:01:52)
1964年、ブラジルでの出来事。当時の大統領、ジョアン・グラールは、土地収用法、選挙法の改正(二千万人とも言われる文盲者への投票権付与)、そして共産党の合法化という拳法の一部改正をはかっていた。しかし、この動きに不信感をおぼえたアメリカ政府は、グラール政権打倒を画策。軍部を支援し、4月2日の軍事クーデター成功を演出する。3日に当時の米大統領ジョンソンは、新政府樹立の祝電を送る。これによって米政府が軍事クーデターの動きを事前に知っていたということが世界に知られてしまうわけである。それに暗躍していた組織が、「アメリカ国際開発局(USAID)」だった。同局は南米に対する教育の支援、医療支援、寒村の開発、行政指導など、資金援助だけでなく、まさに「進歩のための同盟」を体現する機関として設立された。が、その中にはCIAの関係者も加わっており、このブラジル軍部クーデターの演出や、その後ブラジルの国家警察が行なう凄惨を極めた拷問を指導するなど、政治の裏の部分でも暗躍する組織でもあったのだ。
さて、本作「戒厳令」は、1970年、実際に起きた事件をもとに作られている。事件とはこのようなものだった。モンテビデオで、左翼武装集団「ツパマロス」が、ブラジル領事と、イタリア系アメリカ人ダン・アンソニー・ミトリオンを誘拐。領事を人質にとるというのはわかるが、なぜ一般のアメリカ人なのか?実はこのミトリオンという男は、元CIAの教官で、左派弾圧のために南米に送りこまれ、すでに多くの左派弾圧グループを育成し、実際に各地で弾圧にあたっていたという、影の要人だったのである。ツパマロスはこのミトリオンから、ブラジルで行なわれている拷問との関連を聞き出し、政府には人質と同志の交換を打診した。しかし政府はそれに応じず、逆に「非常保安措置」つまり戒厳令を発し、少しでも左翼活動に関連の疑いのあるものは次々と逮捕、ときには拷問、ときには死に至らしめた。結局ミトリオンは処刑される。
ミトリオンをモチーフにした主人公サントーレを演じるのは、イヴ・モンタン。前2作とは違い、今回は悪玉としての出演である。映画は誘拐されたサントーレがツパマロスに尋問される場面、国家警察のロペス大尉が捜索をすすめる場面、そして新聞社長のカルロス・デュカスが事件の真相を知ろうとする場面、この3つで構成されている。私たちが視点をおくのはこのカルロスだろうか。カルロスは、私たちのように、ウルグアイという国がいかにあやつられているかを知らない。それを知ろうとするわけだが、戒厳令がしかれ、なかなかうまくいかない。その間、サントーレは尋問の中、次第に自分が左翼弾圧グループを育成、拷問のしかたなど具体的な指導にあたってきたかを告白し、彼が育てたロペス大尉は、その告白に比例しながら、残虐性を強めていく。家族を連れ去られ泣き叫ぶ母親、身に憶えのない罪を着せられ救いを求める男・・・悲惨な状況である。
カルロスは悲惨さを強める状況の中、サントーレが左翼弾圧運動を組織していたことを知り、今戒厳令下で捜索を指揮しているロペスが「死の中隊」と呼ばれる弾圧グループを指揮していることを知る。しかし、事実がツパマロスによって明かにされても、なお政府は弾圧を続けようとする。「正義と権力を守る」と。欺瞞だ。欺瞞の政府だ。そしてサントーレは処刑され、事態が沈静化した後、空港には新たなサントーレが降り立つのである。ツパマロスは息をひそめて、その第二のサントーレを狙う。本当の正義とは何だ?そして権力とは?自由を求める戦いは、いつ果てるとも知れない。
http://www.geocities.jp/vivacinema/gavras/seige.htm
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