http://www.asyura2.com/12/lunchbreak52/msg/539.html
Tweet |
以前石破氏はFXにおいてF-35を選んだのは宜しくなかった、政権に返り咲いたらあれはキャンセルする、と仰っておりました。さて、どうなることでしょう。
F35戦闘機、カナダは白紙撤回 日本は導入強行
http://sankei.jp.msn.com/world/news/121215/amr12121521050009-n1.htm
日本が導入を決めているステルス戦闘機F35について、カナダ政府は14日までに、全65機導入の白紙撤回を正式決定した。購入・維持価格が160億ドル(約1兆3360億円)から、3倍近い450億ドルに跳ね上がったためだ。
これに対し、日本政府は2012年度に1機当たり約102億円で購入。13年度は2機分の取得経費として
308億円と1.5倍に価格が高騰したが、計画を見直していない。また、戦闘機に不可欠の短射程空対空ミサイルすら装備できない未完成型の購入を決定。日本企業がどれほど参加できるか不透明なまま、最終組立工場の設備費として1168億円を盛り込んでおり、防衛関係者の一部から、日本の会計検査院の監視機能に疑問を寄せる声も出ている。
F-35をFXとして採用した場合、色々と問題があるのはこれまでも述べてきた通りです。例えば、
1)国内の戦闘機開発・製造基盤が失われる。
国内で4割生産を許すという報道を鵜呑みにして、これで国産戦闘機は大丈夫だと喜んでいる人がいますが、余りにもナイーブです。米国は英国にすら厳しく情報開示を制限しています。簡単に我が国に生産を許してくれないでしょう。
言うまでもありませんが戦闘機単価におけるソフトウェアは金額ベースではかなり大きなウェイトを占めております。これに日本がさわれることはないでしょう。恐らく「4割」にはソフトは含まれていないでしょう。
ドンガラにしても、仮に4割が生産できるとして、たった40機のために4割が国産されるならば、ものすごく単価は高騰します。恐らく一機300億円とか400億円になるでしょう。
それは機体を分担生産しているパートナー各国から仕事を召し上げることになります。それにはパートナー各国は抵抗するでしょう。そもそもF-35は自国分も量産できて「儲かる」から参加した国も多いはずです。横車を押せば、プロジェクトから撤退する国もでるでしょう。
何をもって4割生産というのかは知りませんが、そもそも非現実的です。リップサービスと考えるのがオトナでしょう。
2)国内の戦闘機関連のベンダーの信頼を失った。
新しい玩具が欲しかったばかりに、FX選定を引き延ばし、しかも戦闘機開発・製造基盤を維持するのか、しないのかもハッキリしませんでした。このため住友電工などの有力企業も含め、少なくない企業が戦闘機生産から撤退しました。今後既存機の保守だけではビジネスが維持できずに撤退する企業が増えるでしょう。
防衛省はどうせ業者なんて、仕事を振ればまた戻ってくるだろうと思っているでしょう。が、いったん他の商売をはじめたらこんなリスキーで、将来性のない仕事に皆がホイホイもどってくる思うのはナイーブです。仕事が無い会社は撤退すらできずにしがみついているでしょうが、他に仕事のある会社、将来性を考えて撤退した会社は戻ってこないでしょう。
3)将来の戦闘機開発・製造基盤が失われた。
1)で述べたように、米国はそうそう技術移転、仕事を振ってはくれません。ことに戦闘機のキモである、システム統合、アビオ、レーダーなどは尚更です。
我が国が次の戦闘機の開発するにしてもその間の事業を維持できるだけの仕事がありません。そもそも生産基盤が失われており、次世代戦闘機の生産自体が画餅です。
当然F-35において将来に近代化においても我が国が参加できる余地はあまりありません。これまた将来の戦闘機開発・製造基盤を維持するだけの仕事が確保できない要因になります。
4)F-35は運用コストが高い
F-35はステレス性の維持のために、維持保守費が高いといわれています。またウエポンべイに兵装を搭載するために既存の戦闘機が使用している国産兵装が使えません。このため兵器体系が二種類になります。これまた運用コストを押し上げます。
5)空自ではF-35の性能を活かせるアセットを有していない。
F-35の能力をフルに活かすためにはC4ISR関連のアセットが必要です。また空中給油機も必要です。ところがF-35自体調達コストが高く、またコストの高いXC-2の調達も本格化します。ですから空自にこれらを十分に備えることは難しいでしょう。高性能のPCをスタンドアローンで使うようなもので、費用対効果が悪すぎます。
6)調達コストが不透明
米国は軍事費削減の一環で既にF-35の調達数を大幅に減らしています。英国の同様。カナダの撤退でカナダ分の生産数は減ります。調達数が減ればコストがあがります。他の採用国も調達数を減らす可能性は大です。
となれば尚更空自の調達コストは上がります。しかも安倍総裁は積極的に円安誘導をするつもりですから、尚更調達コストはかなり高騰する可能性大です。
7)単発機であるが故の戦時の生存性
米海軍のパイロット達にしろ、英海軍のパイロット達にしろ、単発機で洋上を航行することはかなりきついといいます。戦時ならば尚更です。まあかつてFSX開発の時もそれゆえ双発機が計画されました。ですが政治的な妥協でF-16の「改良機」の開発が決定しました。F-2を新型戦闘機と呼称するのは羊頭狗肉であります。
単発機のF-35のエンジンが洋上で止まれば、機体、パイロットが失われる可能性が大です。不思議なことに海自のP-1を4発エンジンだから双発よりも生存性が高いと主張する人達がF-35の単発故の生存性には言及せず、F-35の採用を慶事のごとく喜んでおります。まことにもって不可思議であります。
さて仮にF-35の採用がキャンセルされるとして、FXの候補だった他の機種、いずれが宜しいでしょうか。
F/A-18 ホーネット
これを輸入すれば調達コストは最も安くつきます。米海軍、海兵隊との相互運用性もあり、整備工場を国内につくれば整備コストも安く済みます。ライセンス生産も比較的安く上がるでしょう。三機種の中では一番安上がりなソリューションです。
ですが米国製の機体ですからアビオやシステム関連に我が国が触ることができません。今後の近代化では国内にあまり仕事は落ちません。
ユーロファイター
採用国で余っておりますから、中古をかなり安く買い叩くことが可能でしょう。で、これを将来的にはレーダーを換えるとか、アップグレードすればいい。またライセンス生産については可能ですし、殆どブラックボックスがありませんから、国内生産技術移転が期待できます。また将来の近代化に参加することも可能です。オフセットで機体の一部を我が国で生産して供給すること可能です。
現実的には機体の組み立てと、一定パーセンテージのコンポーネントを我が国で生産することでしょう。これがコストパフォーマンス的には有利でしょう。
またこれをステップとして次世代機の開発に繋げることも可能でしょう。
つまり、単にコストを下げるのあればホーネット、生産基盤の維持、将来のビジネスの拡大の可能性を考えればユーロファイターが有利です。
何度も申してきましたが、FXの選定は単なる戦闘機の調達ではなく、我が国の防衛航空宇宙産業を如何に育成していくべきか、という大きな視点で論ずるべきでした。ところが防衛省、空自の態度は木を見て森を見ないものでした。これはまた政治の不在が原因でもあります。政治がキチンと防衛省を把握し、防衛産業のあるべき姿を思い描いて、政治を行えば回避できるトラブルでした。
ところが歴代の大臣は空幕の言うことを鵜呑みにして、その三味線で踊されてきたわけです。FSXであれだけ煮え湯を飲まされたのにF-22を売ってくれ、ダメならF-35でいいですと揉み手でワシントン詣をしているようでは見識を疑われます。
米国のご機嫌を取り結べば日米関係は強化されるんでしょうかね。かつて自民党政権は中韓のご機嫌を取り結んで、彼らが不快にならないようにご機嫌を取ってきました。彼らの言うことは全て受け入れ、主張は全て正しい、ウチの教科書はインチキでした、従軍慰安婦も南京大虐殺も全てお説の通りです、とおもねってきました。
ですが、相手におもねる国は相手国から尊敬されません。尊敬できない国とまともな関係を結ぼうという国はこの惑星には存在しません。米国に対しても国益に不利なことは断固として断り、自分の主張をするべきです。
「安倍総理」が単なる追従が日米安保の強化と思っているのでなく、何が国益かを冷静に考えているのであれば、見切り千両でF-35の調達中止を決定すべきです。
まあ、どうしても独自の外交をしたくない、思考停止の対米追従こそが外交であり、我が国の国益だと考えているんであれば何もいいませんが。
関連記事
FX、F-35の選択は正しかったのか
http://kiyotani.at.webry.info/201202/article_4.html
F-35とFX調達
http://kiyotani.at.webry.info/201110/article_1.html
FX調達の問題点
http://kiyotani.at.webry.info/201107/article_11.html
FX F-35 と池袋の悪徳風俗店の相似性
http://kiyotani.at.webry.info/201112/article_3.html
WEBRONZA記事
F―35採用で防衛産業は崩壊する
http://astand.asahi.com/magazine/wrpolitics/2011121900010.html
FXはユーロファイターを採用すべきだ
http://astand.asahi.com/magazine/wrpolitics/2011110100003.html
FX購入の代わりに、コンポーネントの輸出を
http://astand.asahi.com/magazine/wrpolitics/2011110200003.html
FXのユーロファイター採用は、米国に対する大きなカードになる
http://astand.asahi.com/magazine/wrpolitics/2011111000009.html
次期戦闘機(FX)の機種は公平な基準で選択しろ
http://astand.asahi.com/magazine/wrpolitics/2011111800008.html
UH-Xに関係している可能性があるエライ人達
月刊WEDGEに「いつまで続けるのか丸投げ防衛装備調達」を寄稿しております。
http://wedge.ismedia.jp/category/wedge
朝日新聞のWEBRONZA+に以下の記事を寄稿しています。
【次期輸送機XC−2と自衛隊の川崎重工への偏愛について(上)】――緊急性はあるのか?
http://astand.asahi.com/magazine/wrpolitics/2012112000007.html?iref=webronza
次期輸送機XC−2と自衛隊の川崎重工への偏愛について(中)】――急ぐべきは偵察システム
http://astand.asahi.com/magazine/wrpolitics/2012120500005.html?iref=webronza
次期輸送機XC−2と自衛隊の川崎重工への偏愛について(下)】――航空輸送力へのマイナス
http://astand.asahi.com/magazine/wrpolitics/2012121000005.html?iref=webronza
もう一つのUH−X疑惑――空自次期救難機を巡る疑問(上)(2012/10/29)
http://astand.asahi.com/magazine/wrpolitics/2012103100007.html
もう一つのUH−X疑惑――空自次期救難機を巡る疑問(下)(2012/11/01)
http://astand.asahi.com/magazine/wrpolitics/2012102600008.html
http://kiyotani.at.webry.info/201212/article_12.html
この記事を読んだ人はこんな記事も読んでいます(表示まで20秒程度時間がかかります。)
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。