02. 2013年11月12日 02:05:19
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陰りが見えてきたティーパーティー「保守強硬派」は一時的な運動で終わるのか 2013年11月12日(火) 堀田 佳男 米社会で保守強硬派として知られる「ティーパーティー(茶会党)」の活動に陰りが見えてきている。高揚した運動が展開されていたかに見えた茶会党だが、波が引くように静かになっている。 2009年にオバマ政権の「大きな政府」に反旗を翻すかたちで登場した茶会党。1773年に起きたボストン茶会事件で新大陸に渡った人たちがイギリスの茶法(課税)に反対したように、オバマ政権に「もう税金はたくさんだ」と抗議する意味で立ち上げられた保守派の政治運動だ。 彼らは同政権が多額の税金で大型景気対策を実行し、金融機関を救済したことに異を唱えた。社会政策では反同性愛、反人工中絶、反不法移民を基本スタンスとし、米国内では保守派の中でもかなり右に寄った一派で、近年の日本の右傾化とは性質が異なる。その茶会党に今何が起きているのか。 11月5日に全米各地で行われた選挙で、茶会党は劣勢に立たされた。バージニア州とニュージャージー州の知事選、そしてニューヨーク市長選などの選挙では、いずれも茶会党が推す候補は落選した。 人気低下を利用した民主党候補 伝統的に保守の地域に入るバージニア州では、テリー・マコーリフ元民主党全国委員長(56)が新知事の職を射止めた。共和党からは同州の司法長官であるケン・クッチネリ氏(45)が出馬し、茶会党が同氏を全面的に支持したが期待したほどの支持は集まらなかった。 マコーリフ新知事は選挙戦で、茶会党の人気が低下しているのを逆利用し、相手候補が茶会党であるとのレッテルを貼った。10月に連邦政府の機能停止に陥ったのは、茶会党の「カミカゼ議員」のハイジャックによるものだと有権者に訴えた。 民主党全国委員会の広報官モー・イレイシー氏が説明する。 「クッチネリ候補はこの選挙で有権者に、『政府機関停止と極右思想を本当に支持するんですか』と問いかけたようなものでした。それが判断基準になったのです」 一方、ニュージャージー州の知事選では共和党現職のクリス・クリスティ氏(51)が再選を果たした。しかし、彼は共和党員ではあるものの、茶会党とは一線を画した。穏健派の知事として、必要な時はオバマ大統領と手を取り合ってきた。彼の主張は「反オバマではなく、現実的な保守政治こそが重要」という内容である。盾を突いてばかりでは社会の前進はないとの考え方だ。 またニューヨーク市長選では、24年ぶりに民主党の市長が誕生した。ビル・デブラシオ氏(52)は得票率73%で圧勝。富裕層への増税を公約に掲げたリベラル候補だ。妻は以前同性愛者だった黒人女性で、その人を口説いて結婚した人物としても知られる。 茶会党の政治運動に陰りが見えてきた理由の1つは、「顔」になるリーダーがいないことだ。「茶会党の代表はこの人」と誰もが口にできる政治家がいない。ロン・ポール下院議員やその父のランド・ポール上院議員、またフロリダ州選出のマルコ・ルビオ上院議員らが茶会党を代表する政治家ではあるが、政治運動の指導者としての位置づけではない。ましてや、日本ですぐに顔が浮かぶ政治家ではない。 一時はサラ・ペイリン前アラスカ州知事や実業家のドナルド・トランプ氏らの名前も挙がったが、全米レベルで運動を統括していくだけの統率力と政治力はなかったし、長続きしなかった。当初から脆弱性をはらんでいたということである。 昨年の大統領選の共和党候補だったミット・ロムニー氏は共和党の中では穏健派で、茶会党とは距離を置いた。単に反オバマ政権、反増税という名のもとでの結束では運動そのものが沈静化していくのが自然な流れとも受け取れる。それは2011年9月に始まった「ウォール街を占拠せよ」の抗議運動が数カ月で沈静化したことに似ている。 「保守派全体を危機に陥れる」 茶会党のもう1つのウィークポイントは、運動が過激だったという点だろう。1960年代から70年代にかけた米国の新左翼運動と同じような軌跡をたどるかに見える。運動が過激になればなるほど、一般市民は追随しなくなる。 大型景気対策を実施するための増税不安や国家債務増大への憂慮、さらに国民皆保険(オバマケア)への不満は多くの保守派の共通項ではある。だが保守派の中から、すでに茶会党という運動そのものへの反省が出るようになった。 レーガン、ブッシュ両政権で政策顧問を務めたブルース・バーレット氏はニューヨーク・タイムズに「茶会党の衰退」と題したコラムを寄稿し、「社会の振り子が茶会党によって右に振れすぎてしまったので、真ん中に戻り始めているように見える。富裕層や保守派のエリート層、財界の中に真ん中に戻そうとの意識が見える。(中略)茶会党は一時的な政治運動であって、決して長期にわたって政治力を維持できない。いまはむしろ、保守派全体を危機に陥れる可能性をはらんでさえいる」と述べている。 その一方で、今年10月に実施されたラスムッセン社の世論調査によると、全有権者の44%がいまだに茶会党の政治思想に共感を覚えると答えている。ただ、共感できないと答えた人は50%に達している。 2年前、ギャラップ調査の結果では、茶会党に賛成する人は25%で、反対派が28%という結果だった。質問の仕方が違うので数字にバラツキがあるが、賛成と反対の比率は今もそれほど変わらない。 これが何を示すかと言えば、米国社会はいまだに右派と左派によって明確に二分されているということだ。バージニア州知事に当選したマコーリフ氏は、勝ちはしたが僅差の勝利だった。依然として、ほぼ半分の有権者は保守派であり、「オバマ政権は1期で十分」と思っていたはずである。そうした有権者の憤懣はいまでも払拭されていない。 オバマ大統領の支持率も低下 同時にオバマ大統領の支持率の低下も見られる。最新のギャラップ調査によると、オバマ大統領を支持すると答えた人は41%で、1年前の52%と比較してもかなり低くなっている。 つまり、強硬右派の茶会党への同調者が減ると同時に、オバマ支持者も減っているということである。オバマ大統領を信用することはできないが茶会党も解決策を持たない、連邦議会の支持率にいたっては11%という有様で、政治への不信感だけが増大している。 首都ワシントンにあるシンタクタンク、ブルッキングズ研究所の上級研究員ビル・ガルストン氏は茶会党の政治的意味合いをこう分析する。 「茶会党というのは、米国社会に登場した新しいエリート(黒人大統領)に反発する形で出てきています。伝統的な保守派が抱いてきた政治理念を強固にすることで、運動を展開できると考えたのです。同時に、オバマ大統領がマイノリティーや移民などに関心を向けすぎていると考えます。共和党保守派の層には大統領は関心を払わないという不満を募らせているのです」 言ってみれば、善良な市民としてこれまで米国を支えてきた中高年の白人たちが、オバマ政権誕生によって軽視され始めてきたと感じたのだ。歴史的に抑圧者であった人たちが、被抑圧者に回された思い、オバマ大統領に反逆に出たというのが理解しやすい捉え方だろう。 茶会党の典型的な支持者は、地方都市に住む白人男性で、職業は中小企業の経営者といった人たちだ。米国の伝統的な良さがオバマ大統領の登場によって崩されたと感じてもいる。 極論を記せば、オバマ氏が大統領として米国のトップに君臨しているという事実が、ほとんど許せないという心持ちなのだ。だが、反対しているだけでは諸種の問題を解決できない。そのことを自覚し始め、茶会党の運動は減速せざるを得なくなっている。 このコラムについて アメリカのイマを読む 日中関係、北朝鮮問題、TPP、沖縄の基地問題…。アジア太平洋地域の関係が複雑になっていく中で、同盟国である米国は今、何を考えているのか。25年にわたって米国に滞在してきた著者が、米国の実情、本音に鋭く迫る。
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