01. 2013年11月06日 10:16:03
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JBpress>海外>The Economist [The Economist]諜報活動と米国:スパイのルール 2013年11月06日(Wed) The Economist (英エコノミスト誌 2013年11月2日号) 米国はスパイ行為をやめないし、やめるべきではない。だが、信頼を取り戻すためには、より明確な焦点とより厳しい監視が必要だ。 オバマ米大統領、ドイツ入り 再び中東和平訴える 米NSAがドイツのアンゲラ・メルケル首相(右)の携帯電話を盗聴していたことは特に大きな問題となっている〔AFPBB News〕 スパイ行為の第1のルールは、見つからないようにすることだ。外国の秘密を盗むことには、必然的に嘘をつくことや法律を破ることが含まれる。 米国は今、欧州で2種類のスパイ行為を行っていたことがばれたようで、ひどい有様に見える。 最初の容疑は、米国がドイツのアンゲラ・メルケル首相――米国が盗聴してきたとされる最大35人の世界の指導者の1人――の携帯電話を盗聴したことだ。2つ目の容疑は、米国が欧州市民の通信に関する膨大な量の情報を収集していることだ。あとで針を見つける必要が出てきた場合に備えて干し草を集めているというのだ。 どちらのニュースも、ロシアに亡命した米国国家安全保障局(NSA)の元契約職員、エドワード・スノーデン氏によってもたらされたものだ。 機密漏洩は、特にゲシュタポや旧東独のシュタージを連想するドイツ人の間で強い怒りを引き起こしている。フランスやスペインでも多くの人が、米国のような親密な同盟国が自分たちに対してあえてスパイ行為を行うことに憤慨している。 バラク・オバマ米大統領は、NSAの局員たちが自分の友人であるドイツ首相を盗聴していることを知らなかったと話している。早い段階のリークでは、NSAがスパイ行為を容易にするために商業暗号を弱めていたことが示唆されていた。今では、NSAはグーグルその他の大手米国企業が運営する「クラウド」にハッキングしたと見られている。 米議会における主なNSA支持者の1人、ダイアン・ファインスタイン議員は、スパイを制御できないことに不安を覚え、大統領自身の審査と並行して調査を実施すると約束している。 不信感が高まっているため、報いは不可欠になっている。NSAは自分自身のために、新たな指導者と適切な監視の下で再スタートを切る必要がある。だが、議会もホワイトハウスも、NSAが守らなければならない米国民のために、報復という危険なムードに屈してはならない。 孤独な要塞 まず、スノーデン氏の証拠の一部は根本的に間違って解釈されていることが分かっている。情報収集の多くは、実際には欧州のスパイによって欧州以外の人たちに対して行われたもので、その後、NSAに情報が渡された。 こうした連携は、しばしば米国人が調査するのに最も相応しい立場にあるイスラム過激派のテロから西側を守るためだった。 欧州の指導者たちがオバマ大統領に不満を訴える前にこのことを知らなかったという事実は、諜報活動を監視する彼らの能力の欠如が少なくともオバマ大統領と同じくらいひどいことを示している。 第2に、同盟国に対するスパイ行為は、本質的に間違っているわけではない。ドイツとフランスは、幅広い分野で米国と国益が重複しているが、時として利害が衝突することもある。イラク戦争の前、当時のフランス大統領のジャック・シラク氏とメルケル首相の前任者であるゲアハルト・シュレーダー氏は、国連安全保障理事会を味方に引き込む米国の試みを妨害しようとした。 マデレーン・オルブライト氏が米国務長官だった時に気付いたように、欧州諸国も米国人に対してスパイ行為を働いている。政治家は、友人と交渉している時でさえ、内部情報が自分を優位に立たせると思っているのだ。今の騒ぎが落ち着いた後も、その状況は変わらない。 諜報活動の利益とコスト だが、諜報活動から約束された利益は、コストと、捕まえられる可能性と天秤に掛けられる必要がある。かつて電子スパイ行為はありそうもないと考えられており、ほとんどリスクがなかった。 米NSA、外国指導者35人の電話を傍受か 米メリーランド州フォートミードにある国家安全保障局(NSA)本部〔AFPBB News〕 しかし、漏洩が当たり前になっている時代には、盗聴のリスクは高まっている。米国とその同盟国との関係は傷ついた。今回の一件は、大西洋をまたぐ自由貿易協定のような国際協定の障害になるかもしれない。 それがインターネットの断片化につながり、中国やロシアといった国々による政府の統制強化を可能にする恐れもある。 ドイツの首相ほど米国にとって重要な人物を盗聴することは、スパイ組織のリーダーに任せるには重要すぎる決定だ。それは政治的な選択であり、特定の目的が念頭になければ、通常はやってはいけないことだ。 米国は、機密情報収集の濫用を真剣に受け止めていることを明確にすべきだ。議会に嘘をついた職員は解雇しなければならない。NSAが「何百万人もの米国民」に関する情報を収集していることをきっぱりと否定したジェームズ・クラッパー国家情報長官は傷物だ。 法律を破ったNSAの職員は、(個人的な恋愛対象に対するスパイ行為で捕まった人たちの場合のように)単に処分を受けるのではなく、起訴されるべきだ。 米国はまた、NSAが商業的利益のために米国企業に秘密を漏らすことが違法であることも再確認しなければならない。国が後押しする中国の商業諜報活動を懸念する人たちは、自分たちが中国と同然だと思われているのなら、誰も文句は言えないだろう。 より幅広い国益のために見直しを 外国の政治家は、自国の安全保障(特にテロ対策での安全保障)がしばしば米国の支援から恩恵を受けていることを知っているかもしれない。だが、彼らはその支援が提供される条件に不満を抱いている。 外国勢は、NSAの業務に対する管理をもっと厳しくすることや、その結果に対する理解を深めることを望んでいる。米国は、あざ笑うのではなく、彼らの感情を和らげるべきだ。 米国は、機密情報の共有やデータ保護のルールを見直す必要がある。誰も米国がスパイ行為を放棄することは期待していない。だが、米国は、より幅広い国益のために、もっと厳しい目でスパイ行為の方法と結果を調査すべきだ。 JBpress>日本再生>国際激流と日本 [国際激流と日本] オバマ政権の「アジア重視」策に死亡宣告 信頼を失い「超大国」の座から転落する米国 2013年11月06日(Wed) 古森 義久 米国のオバマ政権は「アジアへの旋回(ピボット)」を大々的に謳い「アジア最重視」政策を打ち出してきたが、それは空疎な美辞麗句に過ぎなかった――。 こんな指摘が米国の専門家集団によって明らかにされた。米国のアジア重視を頼りにする日本にとっては不吉な暗雲をもたらす兆しだと言えよう。 唯一の希望の光だったアジア重視策 オバマ政権は米国の内外を問わず、このところその評価を全面的に落としている。米国内では、オバマ大統領が最大の精力を注いだ医療保険改革、通称「オバマケア」が野党の共和党のみならず国民の幅広い層からの反発を買って混乱を極めている。また、財政赤字の膨張はオバマ氏自身の信奉する「大きな政府」の支出増大によってとどまるところを知らず、共和党との対立では政府機関の一部閉鎖を招くに至った。政府の赤字膨張が止まらなければ米国債のデフォルト(債務不履行)の危機さえ迫ってくる。 一方、オバマ大統領は対外政策では「逃げ」に終始していると言っても過言ではない。シリア政府の化学兵器使用への制裁として軍事攻撃を明言したものの、それをすぐに引っ込め、ロシアに主導権を奪われた。こうした右往左往も、オバマ政権の対外リーダーシップの欠落を改めて印象づけた。中東においてはエジプトの激変を傍観するだけである。オバマ政権は北朝鮮やイランの核武装に対しても有効な策を講じることができず、ロシアや中国に国際情勢での主役の座を譲り渡すようにさえ見える。 そんななかでオバマ政権は第1期の頃からアジア最重視を謳ってきた。中国の軍事、政治、経済面での勢力拡大に対抗する安定策、抑止策だとされた。イラクやアフガニスタンから撤退する米軍兵力の余剰をアジアに回すという意味で「アジアへの旋回」とも称された。消極姿勢、内向き一方のオバマ対外政策のなかではほぼ唯一とも言える希望の光だった。 ところが、この「アジアへの旋回」という政策標語も空疎なジェスチャーだと言われるほどにまで評価が落ちてしまったのである。しかもその批判は、米国の内部にあって歴代政権の対外戦略や外交政策に実際に関わってきた専門家たちから出てきたのだ。 ワシントンを拠点とする国際安全保障の研究調査機関「リグネット」が10月中旬にまとめた報告は、「オバマ政権の『アジアへの旋回』は空疎なレトリック」だと断じていた。それどころか「米国の対外イメージへの大きな打撃」とまで批判するのだ。「リグネット」は米国中央情報局(CIA)の国際戦略やアジア政策の元専門官たちの集団である。 レトリック(Rhetoric)とは辞書によれば「修辞」「特別な効果を狙った言語表現」「誇張」「美辞麗句」などという意味である。この場合、「空疎なレトリック」とは「中身のない美辞麗句」とでも訳すのが最適だろう。要するに「口だけ」「実質を伴わない」というわけだ。 ここまで辛辣な批判が、受益側のアジア諸国からではなく、米側の外交や戦略の中枢のCIAにいた専門家たちから表明されたのである。事態は深刻だと言える。 オバマ大統領の本音はアジアではなく中東重視? リグネットのこの報告の骨子は以下のようなものであった。 ・オバマ政権の「アジアへの旋回」は、中国の軍拡を抑止するためにアジア・太平洋に米軍の新たな兵力を投入することだとされた。だが、実際にそうした兵力の新投入はされておらず、今後もそれを実行する意欲も能力もないと見てよい。 ・これまでの唯一の「旋回」措置は、オーストラリアのダーウィンへの米海兵隊の交代駐留だと発表された。しかし、わずか200人の将兵が2013年9月末に半年の駐留を終えて帰国した後、後継部隊の選択が決まらず、空白のままとなっている。当初の公式目標では2500人の海兵隊がダーウィンに駐留するはずだったが、どんなに早くても2017年まで実現しない。またそれが実現したとしても、中国軍の増強ぶりと比べると「再均衡」にはほど遠い。 ・中国は米国が生み出す空白を埋めるように海軍、空軍、ミサイル戦力、特に原子力潜水艦などを世界の他のどの国よりも速いペースで増強している。だがオバマ政権は中国のこうした軍拡に抑止措置を取らないだけでなく、米国の歴代政権が絶対に許容しないと宣言してきた北朝鮮の核兵器保有をも事実上すでに許してしまい、アジアの同盟国、友好国の信頼を急速に失った。 ・オバマ大統領は、アジア訪問をキャンセルする少し前の2013年9月下旬に国連で演説を行い、イスラエルやその他の中東の友好国への防衛誓約の継続を力説していた。この演説は、同大統領の本音がアジア最重視よりも中東重視なのではないかという疑問を広げた。 世界の超大国とは見なされなくなる米国 以上のように、オバマ政権の「アジア最重視」が口先だけに過ぎないことを示す多数の例証があるというのである。リグネットのこうした分析は、オバマ政権の「アジアへの旋回」策に事実上の死亡宣告を言い渡したとさえ言えるだろう。 こうしたオバマ政権の言葉と行動のギャップは、米国に安全保障を頼る日本などアジア諸国にとって、当然のことながら深刻な影を広げる。 この点、リグネット報告は、結論としてさらに不吉な見解を明記していた。 ・大々的に宣伝された「アジアへの旋回」が空疎なジェスチャーにすぎないと判明したことは、米国の対外イメージへのさらなる打撃となる。オバマ政権下の米国への関係諸国の信頼は最近の中東での動きによっても急速に低下しており、このアジアでの挫折によって、米国はもはや敵からも友からも世界の超大国とは見なされなくなるかもしれない。 オバマ政権下の米国は「世界の警察官」どころか、政治や経済でも、信頼され依存される対象から転落しつつあるというのである。 米国に依存してきた側としては、オバマ政権だけが米国ではないと思いたい。だがいまや米国が内政でも外交でも大きな曲がり角を迎え、世界唯一のスーパーパワーとしての勢いを失いつつあることは否定できまい。日本としても自助自立の努力という政策目標がどうしても浮上してくる時代が到来したと言えそうなのである。
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