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我が道を歩み始めた米国と欧州
2013年10月21日（Mon） Financial Times
（2013年10月18日付 英フィナンシャル・タイムズ紙）
ワシントンでの債務のドラマは、欧州で雑多な感情を呼び覚ました。米国のデフォルト（債務不履行）が世界を再び不況に陥れるという寒々しい不安が他人の不幸を喜ぶ気持ちと入り混じっていた。欧州の人々は、ユーロ危機への対応について米国から受けた厳しい説教を思い出していたからだ。
ユーロ圏は機能不全かもしれないが、米国も同じだ。ただし、ここで謙虚さが求められる。ユーロ圏は経済の絶壁の端で3年間踊ったが、財政を巡る米国の悲喜劇の最新エピソードは3週間続いただけだ。
最後には、期限ぎりぎりでの合意成立は、単一通貨を保証するというドイツの土壇場での決断と同じくらい必然的に見えた。もし米国経済が崖から落ちていれば、共和党も一緒に落ちていただろう。ティーパーティー（茶会）系の議員の一部は飛び降りる用意ができていたが、十分な数の共和党議員は集団自殺という考えから退却した。
欧州の無数の対策と同じように、米国の債務上限を巡る合意は一時的で条件付きだ。ユーロ圏はもはや実存の危機に直面していないが、最近のくすぶるような経済成長は回復とは見なせない。ユーロ圏にはまだ、国家の責任と相互連帯を融合させる構想がない。ワシントンでも同様に、惨事は回避されたが、バラク・オバマ大統領と共和党議員は近く戦いに戻ることになる。
崖っぷちに突っ走る共和党
筆者はかつて、共和党はイデオロギーに目がくらんでいると思っていた。今では、狂気の中に一定の理屈があることが分かる。「オバマケア」を頓挫させようとする異常なまでの努力は、分かりやすい不安を表しているのだ。彼らは、ひとたび根付けば、皆保険の提供は好評で撤回不能になると判断した。だから、今しかないわけだ。
彼らの考えは正しい。どこかの国の政府が最後に有権者から医療へのアクセスを取り上げたのはいつだったか、考えてみるといい。
債務を巡る戦いは、個々人にとって合理的な判断が集団の惨事を誘い得る例でもある。「ゲリマンダリング（恣意的な区割り）」の結果、共和党の現職議員は、有権者全般よりも保守派の活動家を恐れる。だが、財政問題での議事妨害がもたらした総合的な影響は、共和党の支持率の破滅的急落だった。民主党は今、来年の中間選挙で勝つ見込みがある。
移民制度改革を台無しにしたことは、共和党にさらに大きな代償をもたらす。2012年の大統領選挙の大きな話題は、人口動態と社会の潮流が決定的に共和党に不利な方向に変わったということだった。何百万人もいるヒスパニック系移民に市民権を得る手段を認めるのを拒む姿勢のせいで、共和党はまだ最も急拡大する有権者層を軽蔑している。
1つの結論は、ティーパーティーの過激派はホワイトハウスを勝ち取ることをあきらめたということだ。むしろ彼らの政治は、連邦政府の機能を無効にし、権限を各州に戻そうとする必死の決意に動かされている。
互いに共通する逆境が欧州と米国を近づけることはなさそうだ。米国政府と欧州連合（EU）が大西洋をまたぐ貿易・投資協定について交渉しているにもかかわらず、広く蔓延する感覚は、古くからの友好国、同盟国の話がかみ合わないというものだ。
欧州の人々は、米国がもはや慣れ親しんだ東海岸のエリートたちによって運営されていないことを受け入れられない。一方の米国人は、アジアの台頭を管理するうえで、内向きな欧州に一体何が提供できるのかと問う。
筆者は先週、欧州の「エリート」の見解に関する対話に参加した。この対話は、シンクタンクの英王立国際問題研究所（チャタムハウス）のプロジェクトの一環で、欧米関係の基調を定める欧州の政策立案者と世論形成者の間で認識を打ち出すことを目的としていた。
その場の空気は、オバマ政権への賞賛に満ちているとはとても言えない状況だった。だが、不平不満は米国と同じくらい欧州の状況についても多くを物語っていた。
短かったオバマ大統領の欧州ハネムーン
オバマ大統領の欧州でのハネムーンは長続きしなかった。大統領は前任者に恵まれていたが、単にジョージ・W・ブッシュではないという事実は限られた信望しか与えてくれない。その後の躓きと失敗は、あまりに高すぎた期待感を破裂させた。
それでも、現在の悲観論のレベルは著しい。米国政府がシリア空爆を撤回した時、フランスは見捨てられたと感じた。フランソワ・オランド大統領はあと数時間でフランス軍に行動を命じるところだった。米国の方針転換が迫っていることを示す手がかりは何もなかった。フランスは英国に代わり米国に服従する立場となり、ある英国高官の皮肉な言葉を借りれば、「彼ら（フランス人）も今、この仕組みが分かった」。
実のところ、オバマ大統領自身の側近の一部でさえ、シリア空爆に関する方針転換には面食らった。だが、オバマ政権の筋金入りの擁護者でさえ、ワシントンは多くの場合、相談は、そう、相談を意味すべきだという欧州の見解を共有していると主張するのは難しいだろう。
だが、欧州の人々は決して満足しない。イラクとアフガニスタンでの戦争は威圧的な超大国を裏付けた。オバマ大統領は、共通の価値観や心地よい多国間主義について正しいことを述べてきた。だが、世界的な勢力の再分配を受け、大統領は米国の国益について狭い見解を取るようになった。米国は、自国に都合がいい時にだけ世界の警官の役割を果たすのだ。
その結果、どうなったか？
かつて権力を振り回したと言って米国政府を非難していた欧州の人々は今、国際公共財を守ることに消極的な米国の態度を嘆いている。欧州は米国に振り回されたくないが、米国が欧州のために他国を言いなりにさせることを望んでいる。一体どちらが望ましいのか――よく考えずに行動する米国か、それとも、後ろから先導する米国か？
利己的な米国と不安な欧州
欧米関係に潜む多くの矛盾は、利己的な米国について物語るのと同じくらい、不安な欧州についても物語っている。経済問題に打ちのめされ、自分たちの大陸の未来に全く確信を持てない欧州の人々は、米国が関心を失ったように自信を失った。
欧州の人々は、世界がどこかへ行ってくれればいいと思っている。そうはならない以上、米国人について不満を述べるしかないのだ。
By Philip Stephens
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/38972
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通貨切り下げの決断に直面するベネズエラ政府
2013年10月21日（Mon） Financial Times
（2013年10月18日付 英フィナンシャル・タイムズ紙）
ミス・ベネズエラ2013が決定、優勝の喜びに美貌も輝く
ベネズエラにとって美人コンテストは、日々の苦悩を忘れさせてくれる娯楽〔AFPBB News〕
ベネズエラにとって美人コンテストは、アルゼンチンにとってのサッカー、キューバにとっての野球のようなものだ。つまり、人々に日々の苦悩を忘れさせてくれる光景である。
ところが、10月上旬に行われたミス・ベネズエラ大会では、首都カラカス出身の出場者でさえ、自分の国が「逆境の中で戦う」ことを望んでいると述べ、観客に向けた勇気あるメッセージを携えていた。
ダークブラウンの髪をしたそのモデルの女性はライトの下でも、ベネズエラ国民が今、経済危機と戦っているという現実を逃れることはできなかった。この危機はウゴ・チャベス前大統領とその「ボリバル革命」の遺産を脅かしており、割高な為替レートが外貨準備を枯渇させる中でいよいよ切迫しつつある。
「ベネズエラにとって大きな危険信号は、同国の外貨準備が急激に減少していることだ」とロンドンのM＆Gインベストメンツの債券ファンドマネジャー、マイケル・リデル氏は言う。
急減する外貨準備、ドル資金の不足に不安
石油輸出機構（OPEC）加盟国であるベネズエラの950億ドルに上る年間石油収入は、450億ドル余りの同国の対外債務のデフォルト（債務不履行）が依然ありそうもないことを意味している。
それでも、アナリストらは、外貨準備のごく一部しか流動性を持たないため、ベネズエラが資金繰りの面で問題に直面する可能性があると言う。外貨準備は、年初の300億ドルから210億ドルに減少している。さらに、多額の金を保有しているため、十分な流動性を持っているのは、そのうちわずか20億ドル程度だ。
それでも、一部を中国が資金を拠出する開発基金や国営石油会社PDVSAの外貨勘定などの予算外の資金を含めると、利用可能な準備高は合計で約480億ドルになるとアナリストらは試算する。
「ベネズエラは無一文なわけではない」。政府系の監視機関、国民経済委員会（NEC）のエフレイン・ベラスケス委員長はこう言い、ベネズエラはむしろ「不適切な外貨準備管理を行ってきた」と指摘する。
そうした誤った管理が今、12月8日の地方議会選挙――ニコラス・マドゥロ大統領の人気を測る国民投票として広く受け止められている選挙――を前にして、急に勢いを増している。マドゥロ大統領が直面する問題の中心にあるのは、公式には米ドルに対して6.3ボリバルに固定されているが、闇市場では50ボリバル近くで取引されている為替レートだ。
そうした乖離の広がりが、公式レートでドルにアクセスでき、市中レートでそのドルを売りさばける内部者が盛んにサヤ取りを行うことにつながっている。通貨規制は生活必需品の不足も悪化させており、年率50％近い水準までインフレを煽っている。
トヨタ自動車は今月、原材料購入に必要なドルの調達に遅れが出ていることを理由に、ベネズエラの工場を2週間閉鎖すると発表した。
国外の投資家は懸念している。指標となる2027年償還のドル建てベネズエラ国債の利回りは、年初の9％から12％を超える水準まで上昇している。デフォルトに備えてベネズエラの1000万ドルの債務に5年間保険を掛けるクレジット・デフォルト・スワップ（CDS）の年間コストも、1月の60万ドルから98万3000ドルに上昇している。
それでも、バンクオブアメリカ・メリルリンチのベネズエラ担当エコノミスト、フランシスコ・ロドリゲス氏は、480億ドルの外貨準備で約10カ月分の輸入と4年間の債務元利払いが賄えると言い、市場の懸念を一笑に付す。
「ベネズエラの短期流動性の状況に過度に焦点を当てることは、木を見て森を見ない危険を冒すことになる」と同氏は投資家向けメモの中で書いていた。20億ドルの現金準備は少ないように見えるかもしれないが、「これはベネズエラの基準からすれば異常な数値ではなく――実際、過去4年間の平均に近い――、流動性の水準に関する最近の懸念は理解し難い」
通貨切り下げはほぼ不可避だが・・・
そうした懸念の1つの理由は、問題に果敢に立ち向かうマドゥロ政権の行動が欠けていることだ。舞台裏では、マドゥロ氏率いる与党・統一社会党が、急進的な理想主義者と現実主義者の間の内輪もめに直面している。この綱引きは、経済状況を悪化させるだけの膠着状態を招いた。
例えば、通貨切り下げを実施すれば、ベネズエラが石油によって受け取るドルの現地通貨建ての価値が増加し――財政赤字を解消するためのベネズエラの伝統的な解決策――、通貨規制の必要性もなくなるだろう。
だが、リスクコンサルティング会社のストラトフォーが言うように、12月8日の選挙の前に通貨切り下げを行うことは、自らの政権が「政治的に人気を得ることを望んでいるのか、経済的に持続可能であることを望んでいるのか」を決めなければならないマドゥロ大統領にダメージを与えることになる。
米政府、ベネズエラ大統領機の領空通過を許可 申請遅れが原因
12月に地方議会選挙を控えたニコラス・マドゥロ大統領〔AFPBB News〕
「マドゥロ大統領がベネズエラ経済のための新たな道を設計し直す余地はほとんど見当たらない」とモルガン・スタンレーのソブリン戦略部門責任者、パオロ・バトリ氏は言う。
それでも、アナリストらは、どこかの時点で大幅な切り下げを行うことはほとんど避けられないとの見方で一致している。
実際、ホルヘ・ヒオルダニ企画相は最近、マドゥロ大統領は「しかるべき時期」にマクロ経済政策の変更について概要を説明するだろうと述べた。
ベネズエラの問題は妨害行為や汚職、投機のせい？
その間、あるいは少なくとも選挙が終わるまでは、マドゥロ大統領は、ベネズエラの問題を汚職、妨害行為、投機、買いだめのせいにすることに専念し、汚職と戦い、「経済戦争」を行うための法令権限を国会議員に要請している。
偶然にも、マドゥロ大統領の庇護者だったチャベス氏が2002年と2010年に大幅な切り下げを行った時も、政府は、ベネズエラの為替と幅広い経済の問題が経済的な妨害行為によるものだと主張していた。
By Andres Schipani and Robin Wigglesworth
http://jbpress.ismedia.jp/articles/print/38971
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