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アルゼンチン大統領:今回は同情票なし
2013年10月18日(Fri) The Economist
(英エコノミスト誌 2013年10月5日号)
アルゼンチン国民は突然、大統領の将来、そして国の将来について心配する理由ができた。
アルゼンチン大統領の血腫除去手術が成功、政府発表
クリスティナ・フェルナンデス大統領の突然の入院にアルゼンチン国民は驚いた〔AFPBB News〕
大統領が突然入院したというニュースは、どんな国でも疑問を呼ぶだろう。本当のところ、病状はどれくらい深刻なのか? 回復までどのくらい時間がかかるのか? そして何より、もし指導者の健康状態が悪化したらどうするのか?
アルゼンチンでは特にこうした懸念が強い。クリスティナ・フェルナンデス大統領は就任後6年間で、極めて個人色が強く、多くの場合あくどい統治スタイルを確立しているうえ、10月8日には大統領が脳の近くにできた血の塊を除去する緊急手術を受けたからだ。
物語が始まったのは10月5日、フェルナンデス大統領が不整脈と頭痛を訴えて入院した時のことだ。検査の結果、以前負ったと見られる怪我が原因で出血していることが明らかになった。
国民に知らされていなかった大統領の入院
過去の事故は何も公表されていなかったことから、大統領報道官のアルフレード・スコッチマルロ氏が平然と、大統領が8月にも入院していたと述べると、アルゼンチン国民は驚いた。大統領はどうやら、出身母体である「勝利のための戦線(FPV)」が全国予備選挙(間近に迫った議会中間選挙の前に行われる予備選挙)で惨敗を喫した翌日、転んで頭を打ったらしい。
10月7日、フェルナンデス大統領は再び、病院に呼び戻された。先に休養を勧めていた医師団が手術することにしたからだ。10月8日に手術が行われ、大統領は現在、快方に向かっていると言われている。
しかし、大統領が検査結果をすべて公表しないよう医師団に指示したことから、正確な健康状態は不明だ。そして、大統領の将来を巡る疑問は今なお深刻だ。
まず、フェルナンデス大統領がどのくらい職務から離れることになるか分からない。少なくとも10月27日の中間選挙は逃す公算が大きい。大統領は手術の前までは、自党の候補者を応援するために、ローマ法王フランシスコとの写真撮影の機会を設けるなど、いつも通り熱心に選挙運動を行っていた。
だが、8月の予備選挙の結果と最近の世論調査を見る限り、FPVは政党として存続してきた10年間で最悪の結果に終わりそうだ。何しろ、同党は高いインフレとその他の経済問題で信用を失っている。
10月半ばの出来事が選挙結果にどのような影響を与えるかも定かではない。これまでフェルナンデス大統領は、自身の弱みを利用して政治的な優位性を得てきた。前任者であり夫のネストル・キルチネル氏が2010年に死亡すると、彼女の支持率は急上昇した。翌年には、そうした溢れんばかりの同情を大量の票に変え、再選をかけた選挙で54%という前代未聞の得票率を獲得した。
今回はそれほどの幸運には恵まれそうもない。調査会社ポールデータの調査によれば、大統領の脆い健康状態がFPVにより多くの票をもたらすと考える人は回答者の15%に過ぎなかった。政治リスク専門のコンサルティング会社セフェイダスのフアン・クルス・ディアズ氏は、「同情効果」が強くなるのは、すでに大統領を支持している人だけだと言う。
相次ぐ健康問題と、大統領不在では存続し得ない政権
ほかにもフェルナンデス大統領に不利に働いている要因が2つある。1つ目は、今回の入院・手術が大統領の健康問題の最新例に過ぎないことだ。2012年1月には誤って甲状腺ガンと診断された後、数週間にわたって職務を休んだ。10月半ばの出来事は、大統領が国を統治するには肉体的に健康でないという疑念を膨らますだろう。
2つ目のマイナス点は、フェルナンデス大統領が築き上げた政府の中央集権システムだ。大統領が内閣に追従的な操り人形――アルゼンチン人が言うところの「ソック・リカー(ごますり)」――ばかりを揃え、その結果、彼女抜きでは存在し得ない政権を作ってしまった。
大統領不在でやっていかねばならない可能性に直面し、アルゼンチンでは緊張が高まっている。そして、フェルナンデス氏が回復するまで大統領代行を務める人物の評判は、フェルナンデス氏とFPVにとって特に大きな痛手となるかもしれない。
ボサボサ頭のアマド・ボウドウ副大統領は、ギターを弾きながら全国を飛び回り、2011年のフェルナンデス大統領再選に貢献した。だが現在、同氏の評判は政権内の誰よりも悪い。
昨年は違法に私腹を肥やし、斡旋収賄を行った疑惑が持ち上がった。検察は疑惑を立証する説得力のある証拠を出せず、本人もすべての不正行為を否認しているが、同氏が一時的に大統領職を代行すれば、アルゼンチン国民は当時を思い出すだろう。ボウドウ氏はボスの健康問題に端を発した不安を払拭するどころか、悪化させる可能性が高い。
これらすべては長引く影響を与えかねない。手術の前、もし議会で憲法改正に必要な3分の2の賛成を得られれば、フェルナンデス大統領は2015年に3期目をかけて大統領選に出馬できるよう憲法を改正しようとするかもしれないとの憶測が飛び交った。
そうした構想も今では非現実的に思える。それどころか、残り2年の任期中のフェルナンデス氏の権力は彼女の健康と同じくらい弱々しいものとなるかもしれない。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/print/38949
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