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2013年10月17日 [国際事務局発表ニュース]
10月4日は、人権そして正義において、悲しい日となった。
ルイジアナ刑務所の独房で41年以上を過ごしたハーマン・ウォレスさん(71歳)が、肝臓ガンとの闘いに敗れ、ついに息を引き取った。
唯一の慰めは、彼が自由の身で旅立ったことだ。先週、連邦判事が、ウォレスさんに無罪判決を下したからだ。
当初ルイジアナ州は、この期に及んでも判決に不服申し立てを行い、裁判所の即時釈放命令を拒否した。しかし幸いなことに数時間後、同じ連邦判事が申し立てを却下し、法廷侮辱罪に問うと警告したため、ようやく州はウォレスさんを釈放した。
衰弱がひどく、刑務所から病院へ直接救急車で搬送された。
ウォレスさんは1974年に、問題だらけの不当な裁判で有罪判決を受けて以来、41年間にわたり、残酷で非人道的な刑務所の独房に閉じ込められてきた。州当局がウォレスさんを長年、侮辱的な環境に置いてきた背景には、基本的に人権を無視する同州の姿勢がある。
別の罪で収監されていたアフリカ系アメリカ人のウォレスさんは、刑務所の看守を殺害したかどで有罪とされた。陪審員は全員白人であった。
DNA検査では犯行を立証できず、犯行現場にはナイフや血痕すら見つからなかった。しかも、目撃者の証言は、後に、ルイジアナ州が減刑と引き換えに得たことがわかった。
憲法に違反する、検察の職権乱用を重く見た同州の司法委員は、2006年にウォレスさんの有罪判決を覆したが、州最高裁判所はこの決定を却下した。
2009年、ウォレスさんは連邦裁判所に再審理を求めた。有罪判決を棄却した先週の連邦裁判所の判決は、殺人罪での起訴を問う1973年の大陪審で意図的に女性が排除されていたことを根拠としている。この強制排除も、一連の裁判で行われた多くの不正のひとつにすぎない。
看守の殺人事件後、ウォレスさんは4畳にも満たない独房に移された。外部との通信、作業、更生プログラムの参加などを禁止され、1日23時間は独房に入れられたままだった。独房の外に出られるのは、週に7時間のシャワーと単独のリクリエーション時間のみだった。
1972年以来、刑務所審査委員会はこの独房措置について160回以上も審議し、その度に独房への収監は妥当だとしてきた。しかし、明確な根拠は明らかではない。
刑務所当局が、囚人の素行や態度に基づいて独房措置を取ったとは考えられない。刑務所の記録によれば、ウォレスさんは重大な規則違反はいっさい起こさず、精神衛生面の記録にも、自身や他者に害を及ぼす兆候は記載されていない。ウォレスさんを独房に長期間監禁する正当な理由はなかった。
当局の扱いは、いかなる罪状であれすべての囚人に与えられるべき、人道的な基本原則に違反している。国際法でも、この状況は残酷で非人道的、侮辱的な扱いと見なしている。
ウォレスさんは一貫して無罪を主張しており、自分の刑務所内での活動のせいで犯人に仕立て上げられたと考えていた。ウォレスさんは70年代に、同じ看守事件で有罪となったウッドフォックスさんとともに、ブラックパンサー・パーティ(BPP)という人権運動のグループを立ち上げた。囚人全員を団結させ、当時、刑務所内にまん延していた性的虐待や暴力に立ち向かうためだった。
今年6月に肝臓ガンと診断されたが、あまりにも長く過酷な環境で過ごしたせいで、すでにウォレスさんの健康は、肉体的にも精神的にも蝕まれていた。その診断も、体重が23キロ以上も落ちたために施されものだった。診断後、ウォレスさんは独房から警備の緩い刑務所病院に移された。
2007年、連邦判事は、長期監禁は、人間の基本的生活の剥奪であり、心身ともに著しく蝕んでいたことに、刑務所当局は気づくべきであったとの判断を示している。
アムネスティは何年にも渡り、ウォレスさんの釈放運動を展開してきた。特に、肝臓ガン発覚後は、最後の日々を愛する人たちと過ごせるよう働きかけてきた。ルイジアナ知事のもとには、同氏の釈放を求める11万人以上の嘆願書が集まっていた。
ウォレス氏が、もっと早く釈放され、家族の看護のもとで最期を迎えることができなかったのは、非常に残念である。
同じ事件の殺人罪で同じく有罪となったアルバート・ウッドフォックスさんも、ウォレスさんと同様に無実を訴え続けきたが、いまだ過酷な独房環境に置かれている。連邦裁判所は、最近3回目の無罪判決を言い渡したが、三度、州が上訴し独房にとどめおいている。
アムネスティは引き続き、ウッドフォックスさんを独房から直ちに移動するよう訴えていく。これが法の正義ではなく報復ならば、州は即刻上訴を取り下げ、ウッドフォックスさんを釈放すべきである。手遅れになる前に。
アムネスティ国際ニュース
2013年10月4日
http://www.amnesty.or.jp/news/2013/1017_4238.html
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