http://www.asyura2.com/12/kokusai7/msg/557.html
Tweet |
[FT]エジプト政変は「クーデター」か 欧米の評価基準混乱
軍事クーデターのようにみえ、それと同じ効果もあるならば、やはり軍事クーデターだったのだろう。オバマ米大統領がエジプト政変を「クーデター」と呼べないのは実態を把握できていないからではない。エジプト政府がクーデターで転覆したとなれば、法律上、同国への援助を打ち切らねばならないからだ。
エジプト政変をクーデターと呼ぶか否かという問題の背景には欧米諸国の判断基準の混乱がある。自由を求める反体制派と独裁者、民主主義者と独裁主義者、善人と悪人など、欧米政府は道徳基準に基づく明確な線引きを好む。外交政策が理解しやすくなり、国民への説明も容易になるからだ。
この単純明快な基準では軍事クーデターは明らかに「悪」で選挙で選ばれた大統領は「善」となる。だが多くの欧米人が支持したのは、イスラム原理主義組織「ムスリム同胞団」ではなく、カイロ中心部のタハリール広場に集まった反大統領派だった。
少数派の権利など欧米流の価値観を支持しているのは、広場を占拠するリベラルな世俗派だ。ムスリム同胞団は憲法にイスラム法「シャリーア」の内容を反映させるべきだと主張している。厄介なことに大統領選で勝利を収め、議会第1党の地位にあるのはムスリム同胞団なのだ。
欧米の一部評論家からは、民主主義はエジプトにそぐわないのではないかという声も出始めている。だが欧米政府がこれを明言するわけにはいかない。
アフガニスタンからエジプトまで、欧米諸国は今後も選挙と民主的政府の実現を推進し続けるだろう。ほかに良い選択肢がないからだ。
今回のエジプト政変で、欧米が冷戦時代の価値基準の混乱に後戻りしてしまうのではないかとの懸念が高まっている。当時は米国や同盟国が軍事政権と手を結ぶのは当たり前だった。
ソ連崩壊でこうした汚らわしい選択をしなくてすむと考えられていた。だが今回のエジプト政変は、国際的な出来事には複雑さや混乱、モラルの妥協が避けられないことを我々に教えてくれている。(5日付)
=英フィナンシャル・タイムズ特約
[日経新聞7月6日朝刊P.8]
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。