01. 2013年7月09日 07:51:11
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社説:フランスの政治、割れる中道右派の危機 2013年07月09日(Tue) Financial Times (2013年7月8日付 英フィナンシャル・タイムズ紙) フランスの中道右派政党・国民運動連合(UMP)が危機に陥っている。フランスの憲法評議会が先週、ニコラ・サルコジ前大統領が再選をかけて戦い、敗れた選挙で支出上限を破ったとの判決を支持したため、UMPは7月末までに選挙補助金1100万ユーロ分を返済しなければならなくなった。 評議会の決定は、債務を抱え、党の存在に関する疑念に苦しんでいるUMPに影響を及ぼす。折しも来年の地方議会選挙と欧州議会選挙に向けて準備し始める時に、UMPの資金力を減じることになるのだ。 ニコラ・サルコジ氏は政界に復帰するのか〔AFPBB News〕
皮肉なことに、直近の問題の原因は失敗に終わったサルコジ氏の選挙運動だったが、今回の決定が同氏の政界復帰を早める可能性がある。 サルコジ氏は抗議の意思表明として、大統領経験者に与えられる憲法評議会の議席を返上、党員にUMP救済の旗印の下に結集するよう呼びかけ、UMPの擁護者の装いをまとった。 サルコジ氏は社会党のフランソワ・オランド氏に敗れた後に政治から手を引いたと主張したかもしれないが、それでもサルコジ氏の影はUMPを覆ってきた。この1年というもの、UMPはジャンフランソワ・コペ氏と、サルコジ政権で首相を務めたフランソワ・フィヨン氏という重鎮同士の主導権争いで分裂してきた。 主導権争いで分裂、UMPの魂をかけた戦い これは単なるエゴの戦いではない。UMPの魂を巡る戦いだ。コペ氏は、国家的アイデンティティーと移民への不安という伝統的なテーマに訴えることにより、支持率を伸ばしている極右政党・国民戦線と戦いたいと考える人たちを代表している。対照的に、フィヨン氏は父親像のような人物で、政治的争点となる文化問題より経済に焦点を合わせている。 サルコジ氏は、彼自身の強烈な個性の下でこれらの陣営を団結させることで2007年の選挙に勝った。今、同じ資質を備えた指導者を見つけられず、右派は次第にサルコジ氏のことを唯一の解決策と見なすようになっている。 だが、右派に平和をもたらすためには、サルコジ氏は自己改革を行わねばならない。初期の支持者の多くを遠ざけた、対立を招く権威主義的な振る舞いをやめなければならない。これは容易ではない。 憲法評議会の決定がもたらすもう1つの影響は、もっと不安を招くものだ。有権者が政府と政界エリートにひどく幻滅している時に、フランスの主流派野党をさらに弱体化させてしまったのだ。 ギリシャとイタリアは、信用を失った政治階級がもたらす危険をはっきり示した。有権者が別の選択肢を探し、ベッペ・グリッロ氏の5つ星運動やギリシャの急進左派連合(SYRIZA)などの少数派政党に投票先を見いだす。これがもたらす結果は麻痺状態だ。 極右政党が躍進する恐れ 力強く、団結した野党が存在しなければ、危ないのは、極右政党の国民戦線が来年の選挙で大躍進する見通しが立ってしまう恐れだ。選挙の規則からして、国民戦線が国政レベルで勢力を高める可能性はまだわずかだが、市議会や欧州議会で新たな議席を獲得するたびに国民戦線の正統性が高まる。 だが、同党の政策は経済的にも政治的にも合理性がない。国民戦線が訴えるのは、内向きなフランスだ。カリスマ的な党首のマリーヌ・ル・ペン氏は、欧州連合(EU)を脱退し、保護貿易主義の障壁を設けたいと考えている。そんなことをすれば悲惨なことになる。 フランスは既に競争力の低下と過大な国家に苦しめられている。フランスが必要としているのは、グローバル化を拒むことではなく、受け入れることだ。フランス企業が革新して価値連鎖の上方にシフトするためにも、労働市場が適応するためにも、このインセンティブが必要だ。 フランスの主流派政党がこの課題の大きさと必要な改善策を公に認められずにいることは、主流派政党のリーダーシップがこれほど信頼されていない理由の1つだ。 右派が望んでいるのは、新たな息吹を吹き込んでくれるカリスマ的人物だけではない。皆が共有するフランスのビジョンとその実現に向けたロードマップが必要だ。そうでなければ、右派の深い亀裂は決して克服できない。 フランスには、政権与党の責任を問う確かな野党がなければならない。それが、政治に対する信頼を再び築き、また、少数政党の実体のない誘惑と戦う最善の方法だ。 |