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[モスクワ 30日 ロイター] - ロシアではプーチン大統領に批判的な団体や個人に対する取り締まりが広がりをみせており、反体制派は「次に狙われるのは誰か」と不安を抱いている。
リベラル派の経済学者セルゲイ・グリエフ氏は、捜査当局から事情聴取を受けた後にロシアを出国。同氏の出国は、政府が異論を唱える者や抗議活動への締め付けを一層強化していることが背景にあると受け止められている。
反プーチン派からは、デモを制圧し、抗議活動のリーダーに犯罪容疑をかけ、NGO(非政府組織)に厳しい資金規制を課すといった現政権の手法は、1970年代に社会の停滞を伴ったブレジネフの抑圧的な時代に通ずるものがある、との声が聞こえる。
また反体制派は、大統領は2011年12月以降に相次いだ反プーチンデモで傷ついた自身の権威を取り戻すべく強権を振るっていると強調。かつては側近中の側近と呼ばれたスルコフ前副首相が8日に事実上解任されたように、ひとたび寵愛の対象でなくなれば、大統領に近い人物でさえもあっさり切り捨てられると現状を説明している。
一方、KGB(ソ連国家保安委員会)の元スパイでもあるプーチン大統領は、自らをソ連崩壊後の混乱から秩序を回復させたと自賛。また、反対派の弾圧を否定しながらも、大統領就任以来最大のデモが発生している事態を受け、再び秩序を回復しなくてはならないとの考えを明らかにしている。
これに対し反体制派は、もはやデモは政権にとってほとんど脅威とならないほどに縮小したにもかかわらず、さらなる圧力をかけて残党を一掃したいというのが大統領の本音だ、と指摘する。
<新法とシロビキの影響力拡大>
ロシア議会は新法を相次いで制定。反体制派は新法について、大統領が反プーチン派の締め付けに利用することが可能になり、今年7月に起訴された反体制派活動家アレクセイ・ナバルニー氏のように「でっち上げの罪」に問われる人が増えるのではと警戒する。
当局の締め付けの対象となっているのは反体制派だけではない。不正選挙の証拠を独自に集めている独立系選挙監視団体のゴロスや、大統領の支持率を調査する世論調査機関レバダセンターが新法の標的だ。
新法は外国から資金を受けて政治活動に携わるNGOを「外国の代理人」として登録し、取り締まるよう求めているが、両団体ともに登録を拒否するなどして反発を強めている。
反体制派は、リベラル派の影響力が弱まるにつれ「シロビキ」と呼ばれる、大統領のかつての同僚であった治安関係者の影響力が強まっているとみている。リベラル派の経済学者で政府のアドバイザーでもあったグリエフ氏は、大統領を批判した直後、ナバルニー氏に少額の寄付をした罪に問われ、厳しい監視下に置かれたものとみられる。
グリエフ氏は、ロシアの主力輸出品である石油への依存度を減らし、石油価格の下落に備えることや、まん延する汚職対策が急務だと訴え、これらに失敗すれば大統領は政権の座を追われることになるかもしれないと警告した。しかし、これがあだとなって、グリエフ氏は大統領の寵愛を失うこととなった。
<再びホドルコフスキー氏に矛先か>
グリエフ氏は出国前、服役中のミハイル・ホドルコフスキー氏がかつて経営していた元石油大手ユコスの事件をめぐり、捜査関係者による事情聴取を受けていた。
このことからホドルコフスキー氏らに対する新たな裁判が始まるのではないかとの憶測を呼んでいる。ユコス事件で収監されたホドルコフスキー氏らの刑期満了が近づいており、「彼らの釈放を快く思っていない人たちがいる」(ホドルコフスキー氏の母)という。
野党に接近したホドルコフスキー氏らは2003年に逮捕され、05年に詐欺と脱税の罪で有罪判決を受けた。来年には刑期満了の予定だ。
「外国の代理人」を指定する法律について30日、15人の経済学者と研究者が政府に対して公開質問状を送った。この中で、新法はNGOの資金運用と独立性を脅かすと指摘。さらに、国家が経済学や経済分析を管理したソビエト時代を引き合いに出し、「ソ連経済がどのような結果に至ったかはご存じのとおりだ」として、新法が求める国家統制は結果として経済の破綻をも招きかねないと警告している。
(Timothy Heritage記者;翻訳 新倉由久;編集 野村宏之)
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTYE95001420130601?sp=true
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