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3D(3次元)の設計データを入力すれば、印刷するような感覚で立体物がつくれる3Dプリンター。オリジナルの小物から実物大の家まで、作り手の夢は広がるが、物議を醸している「ものづくり」もある。米テキサス州の非営利団体ディフェンス・ディストリビューテッドが進める「3Dプリンター銃」の普及プロジェクトだ。
同団体は、ライフル銃などの主要部品の設計図を開発してインターネット上で公開。コンピューターと3Dプリンターがあれば、誰でも自由に設計図をダウンロードして部品を複製できるようにした。
3Dプリンター製の部品を使った銃も、本物と同じように発砲することができるため、憲法で武器を携帯する権利が認められている米国でも波紋が広がっている。
米ワイヤード誌が「世界で最も危険な15人」の1人に選んだ開発責任者、コーディー・ウィルソン氏にプロジェクトの狙いや国内外の反応などを聞いた。
■設計データ、世界100カ国から80万ダウンロード
――「ウィキ・ウエポン」と名付けたプロジェクトを始めた理由は。
「1年ほど前、友人と長電話しているときに思いついた。3Dプリンターについても、銃についても特に詳しかったわけではない。3Dプリンターで作れる銃を設計し、それをネットで公開したら、どうなるか。技術が進歩し、誰でもオンデマンドで銃を手に入れられるようになったら、社会はどう変わるか。それを確かめるために立ち上げた」
――進捗状況は。
「ほぼ100%の部品を3Dプリンターで作れるメドがついた。設計データは自分のコンピューターに入っている。テストでうまく動作すれば、近く公開する予定だ。唯一、作れないのが撃針。プラスチックでは十分な強度が得られない」
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――反響は。
「あらゆる方面から反響があるが、特に若者には評判がいい。これまでに我々が運営するファイル共有サイト経由だけで世界100カ国以上、合計80万件近くの設計データがダウンロードされた。米国、カナダ、英国、ドイツ、フランス、オーストラリアが中心だが、日本からのダウンロードも6万件を超えている。プロジェクトに興味を持った日本人からメールをもらったこともある。彼らがダウンロードした設計データを使って、実際に銃の部品を作ったかどうかはわからないが、ほかのファイル共有サイトに我々の設計データをアップロードするなどして、普及に一役買ってくれている」
■若者から評判、国内外での懸念は「もっとも」
――日本のように銃の所持を法律で禁止している国はもちろん、米国でもプロジェクトへの風当たりは強い。
「オーストラリア政府がカンカンに怒っているのは知っている。米国でも(金属探知機に引っかからないプラスチック製銃を規制する)新たな法案が下院に提出された。我々のプロジェクトが注目されている証拠だが、それ以上のコメントはない」
――米国の反対派は自宅で簡単に作れる「3Dプリンター銃」が普及すれば、これまでなら銃を持てなかった危険人物の手に銃が渡り、昨年12月にコネティカット州で起きた銃乱射事件のような悲劇が増えると懸念している。
「その懸念はもっともだ。3Dプリンターがより手ごろな価格で買えるようになれば、これまで銃を持てなかった人や自分で作ろうと思わなかった人でも、容易に銃を手に入れられるようになるだろう」
「だが、そういう議論をする人々は、権利(武装権)を乱用して人に危害を加える可能性は、誰にでもあるという事実と向き合いたくないだけだ。危害を及ぼす可能性の有無にかかわらず、与えられている権利は守られるべきだというのが、我々の立場だ。さらに言えば、危害を受ける可能性があるからこそ、権利は保障されるべきだと思う」
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■3Dデータ共有のサイト運営へ移行
――今後の計画は。
「実は月内にもプロジェクトをたたむつもりだ。3Dプリンター銃のプロトタイプがよほど好評で、より多くの資金が集まるなら、もうしばらく続ける可能性もある。ただ、個人的にはこれ以上できることは多くないと考えている。構造やデザインが異なる銃はいくらでもあるが、それは他の人に任せたい」
「今後は3Dプリンター銃の設計データを含め、あらゆる3Dデータを共有するために立ち上げたサイトの運営に力を入れる。専用の検索エンジンの開発も進めており、多少のお金にはなるかもしれない。ただ、これはあくまで政治的な信条に基づくプロジェクトで、金もうけが目的ではない」
《銃乱射事件で逆風、「世界で最も危険な15人」》
テキサス大学法学部の学生であるウィルソン氏が率いるディフェンス・ディストリビューテッドへの逆風が強まったのは、昨年12月にコネティカット州の小学校で多くの児童が犠牲になった銃乱射事件以降だ。
事件後すぐに、3Dプリンターを製造するメイカーボットは運営する3Dデータの共有サイトから、銃関連の設計データを削除。ニューヨーク州選出の下院議員は3Dプリンター銃を規制する法案の成立を精力的に働き掛ける。
もっとも、ウィルソン氏にひるむ様子は全く見られない。むしろ、メイカーボットの行為を「検閲だ」と批判。自ら3D設計データの共有サイトを立ち上げて対抗した。
シリアのアサド大統領らとともに「世界で最も危険な15人」に選ばれたことについて、ウィルソン氏は不敵な笑みを浮かべながらこう答えた。「買いかぶりすぎだと思うが、ほめ言葉として素直に受け止めたい」。
(ニューヨーク=小川義也)
http://www.nikkei.com/article/DGXBZO54574920R00C13A5000000/?n_cid=DSTPCS003
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