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[情勢ファイル]民間軍事会社、広がる戦線
テロや海賊対策、企業の発注急増 18兆円規模の市場に
世界の安全保障の中で民間の軍事・警備会社(PMSC)の存在感が増している。アルジェリアで起きたイスラム武装勢力による日本人らの人質事件が示したようにテロや海賊被害のリスクが拡散し、資源などを求めて海外に進出する企業からの需要が高まっている。財政難から欧米諸国は軍事予算の削減を迫られており、武装した軍事・警備会社がすき間を埋める構図だ。
昨年11月、ある男性が香港に降り立った。米海軍特殊部隊出身のエリク・プリンス氏。米国の代表的なPMSCブラックウオーター(現アカデミ)の創設者だ。
アフリカに特化
プリンス氏は昨年、アラブ首長国連邦(UAE)を拠点にアフリカ大陸に特化した新会社を設立。資源を狙い大陸への進出を加速する中国に目を付けた。地元紙の取材に同氏は「アフリカ進出は大きなリスクを伴う。我々には危険を抑え込むスキルとノウハウがある」などと語るとともに、中国企業から巨額の資金を集めていると明かした。
中国では海外展開する企業や自国民の安全確保を巡る議論が白熱する。エジプトとスーダンで昨年、中国人労働者約50人以上が誘拐されるなど、世界各地で被害が増えているためだ。アルジェリアを拠点とするイスラム武装勢力(AQIM)も中国を標的にすると公言している。
こうした脅威に対応するため、中国のアフリカ進出企業ではすでに雇い兵を活用する動きがある。海運大手が海賊対策として英国のPMSCと1千万ドル規模の契約を結んだとの情報もある。
「アフリカ諸国の平和維持部隊(AMISOM)に匹敵する規模の民間軍事基地がソマリアにある」。国連は昨年まとめた報告書でこんな事実を明らかにした。UAEが資金を出し、PMSCが運営する同基地は滑走路などを整備、武装要員を訓練し、海賊対策に乗り出していた。
オーストラリアのローウィー研究所によると、インド洋では大小140のPMSCが活動し、海運会社の4分の1が武装要員の乗船を公式に認めている。海運関係者の話では、アデン湾やアラビア海などの危険水域を航行する際に4人の武装要員を雇うコストは4万〜5万ドル。PMSCの相次ぐ参入により、周辺海域での海賊の攻撃は昨年、前年比で6割減ったという。
調査会社などの推計によると、世界のPMSCの売り上げ規模は1千億〜2千億ドル(9兆〜18兆円)に達し、年7%のペースで拡大している。2000年代はイラクとアフガニスタンでの対テロ戦争の後方支援などで注目を集めたが、両国からの米軍撤退に伴い政府の委託は減少傾向にある。いま需要を押し上げているのは民間企業からの発注だ。
その背景について米国家戦略研究所のトーマス・ハメス上席研究員は「新たな資源を求めて中東やアフリカの奥地への企業進出が拡大し、軍は個別のテロリスクを管理しきれない」と解説する。アルジェリアの事件を受け、エネルギー施設などの武装警備の強化を求める企業はもっと増えると予測する。その構図は広範囲に及ぶ海賊対策とも共通する。
中国企業も参入
欧米政府も企業が直面するリスクを軽減するためにPMSCを活用しようとしている。11年末から現在までに主要海運国の大半の政府が武装要員の乗船を承認した。日本船主協会は政府に対し、日本船籍の商船への武装要員の乗船を認めるよう要請。今国会での審議を目指して法案の作成作業が進んでいる。
「我が国の政治的、商業的な利益がかかっている」。フランス議会ではPMSCを法的に認め、育成すべきだとの議論が浮上している。PMSCの7割は英米勢が占めるとされ、これに対抗する動きだ。中国では北京を拠点とする山東華威保安集団が海外展開を準備中。ロシアのプーチン大統領も政府に自国のPMSCのてこ入れを指示した。
各国間の競争も相まってPMSCの活動が過熱する可能性がある。
(国際部 古川英治)
[日経新聞2月11日朝刊P.6]
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