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http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/37094
*** 第1次世界大戦を髣髴させる日米中の緊張
1次世界大戦で男たちが「塹壕から攻撃」に出る姿を映したチラチラする白黒映画は、あり得ないほど遠い昔のように思える。
だが、今の大国はもう2度と、1914年の大国のように戦争に巻き込まれることはないという考えは、あまりに慢心が過ぎる。中国と日本、米国の間で高まる緊張には、ほぼ1世紀前に勃発した恐ろしい衝突に似た響きがある。
火付け役になりかねない最も明白な問題は、中国では釣魚島、日本では尖閣諸島として知られる島嶼を巡る日中間の未解決の領有権争いだ。ここ数カ月、日中両国の航空機と船が島の近くでシャドーボクシングを繰り広げている。
事態を懸念した米国は10月下旬、米国の外交政策機関の大物4人から成るトップレベルの派遣団を日中に送り込んだ。ジョージ・ブッシュ前大統領の下で国家安全保障会議(NSC)を率いたスティーブン・ハドリー氏や、ヒラリー・クリントン氏の下で米国務副長官を務めたジェームズ・スタインバーグ氏らだ。
**** 小さな事件が大戦に発展する恐れ
この超党派の米国派遣団は、中国による島の攻撃は、日米安全保障条約を発動させることになると明言した。明らかなリスクは、1914年と同じように、小さな事件が同盟国の負う義務を発動させ、大きな戦争に発展する事態だ。
米国の派遣団はリスクを重々承知していた。4人の派遣団に参加したハーバード大学教授のジョセフ・ナイ氏は「我々は内々に1914年との類似点を議論した。どの国も戦争を望んでいないと思うが、誤解と事故のリスクについて双方に忠告した。合理的行為者の間では通常抑止力が働くが、1914年の重要な関係国も皆、合理的行為者だった」と言う。
ナイ氏のハーバード大学の同僚で、キューバ・ミサイル危機の古典的な研究を書いたグレアム・アリソン氏も、誤算による戦争の危険があると考えており、次のように話している。
「1914年のメカニズムは教訓に富んでいる。セルビアのテロリストらが誰も聞いたことのない大公を殺して大戦の引き金を引き、その終わりにはすべての参戦国が壊滅状態に陥っているなんて一体誰が想像できたか。私の見るところ、中国の指導部はまだ、軍事的に米国に挑戦するつもりはない。だが、中国や日本の短気な国家主義者たちはどうか?」
そうした「短気」な人々は、指揮命令系統のかなり下に位置していたりする。2010年9月に島を巡る危機を引き起こしたのは、中国のトロール漁船の船長が日本の監視船とぶつかったことだった。後に、船長は酒に酔っていたことが明らかになった。
当時、日本政府はかなり融和的な対応を取った。しかし米国は今、日本の新内閣が中国と対峙したいと考える傾向の強い強硬な国家主義者だらけなことを懸念している。
新首相の安倍晋三氏は、戦時内閣の大臣の孫で、日本が戦争の償いをしようとした「謝罪外交」を拒否している。
米国による安全保障は本来、日本を安心させるものだが、日本の政治家に不要なリスクを取る気にさせてしまう恐れもある。一部の歴史学者は、ドイツ政府は1914年に、できるだけ早く戦争する必要があると結論付けたと主張している。より強力な敵国に包囲される前に戦った方がいいと考えたわけだ。
同じように一部の日本ウオッチャーは、政府内の国家主義者たちが中国と今対峙した方がいいと考えるのではないかと心配している。日中両国の力の差が大きくなり過ぎる前、米国がまだ太平洋の支配的な軍事大国であるうちに、だ。
**** 今の中国と100年前のドイツの類似点
米国人は日本の政治が国家主義に傾くことを懸念している。その懸念をさらに膨らませるのは、中国にも同じ傾向が見て取れることだ。中国は今、100年前のドイツのように、既存の大国が自国の台頭を断固阻止することを恐れる新興大国だ。
近代中国の父であるケ小平は、「能力を隠して時機を待て」という格言に基づく外交政策を追求した。しかし、ケ小平の世代に取って代わったのは、自信を深め、自己主張を強める新たな指導部だった。また、中国の軍も外交政策を形作るうえで次第に大きな影響力を振るうようになっている。
第1次世界大戦前のドイツとの類似点は顕著だ。当時はオットー・フォン・ビスマルクの巧みなリーダーシップに代わり、戦争勃発前の数年間は、はるかに不器用な政治的・軍事的指導者が権力を握った。
ドイツを支配するエリート層も同じように、下からの民主的圧力に脅かされていると感じ、国民感情の別の捌け口として国家主義を奨励した。中国の指導部もまた、共産党の正当性を強化するために国家主義を利用してきた。
少なくとも、中国の指導部が歴史上の大国の台頭について徹底的に研究したこと、そしてドイツと日本の過ちを避ける決意を固めていることは心強い。我々が核の時代に生きているという事実も、1914年の危機が再現される可能性をかなり低くしてくれるはずだ。
**** 日米安保条約には解釈の余地も
また、本当に危険な状況になったら、日米安保条約にはある程度の解釈の余裕がある。条約の第5条は一般に、軍事的手段で同盟国を守ることを米国に義務付けていると考えられているが、実際は、日本が攻撃された場合には「共通の危険に対処するように行動する」ことを両国に義務付けているだけだ。
この曖昧な文言は、それで中国が米国に「やれるものならやってみろ」と挑む気になるようなら危険だ。しかし、危機時には役立つ可能性もある。
1914年7月、すべての関係国の指導者は、大半の人が望んでいない戦争へと押し流され、無力感を覚えていた。その歴史の研究は、中国人、米国人、日本人が2014年に同じ運命を回避する助けになるかもしれない。
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