http://www.asyura2.com/12/kokusai7/msg/281.html
Tweet |
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/36931
・・・これが普通の国であれば、ベンヤミン・ネタニヤフ氏は大物政治家なのだろう。首相としての在職期間は既にイスラエル史上2番目の長さに及んでいる。来週行われる総選挙でも勝利を収め、政権は通算で3期目に突入する公算が大きい。
イスラエルがハイテク国家の代名詞になった経済再生も取り仕切っている。世界経済が混乱に陥っているこの時期にも、イスラエルは力強い経済成長を遂げている。
・在任中の多くの功績
2000年代の初頭には年平均で100人を超えるイスラエル人が自爆テロで命を落としていたが、第2次ネタニヤフ政権時代(2009〜2012年)には1人の犠牲者も出ていない。イスラエルは大規模な武力衝突も回避している。先日のガザ地区の爆撃は(イスラエルの基準に照らせば)比較的限定された戦いだった。
また、ネタニヤフ氏はかなり巧みな戦術を用いて非常に厳しい国際情勢を乗り切ってきたと言えるだろう。アラブ世界で反乱が生じた時には、パレスチナ人の暴動も触発されるとの予測が数多くなされた。今のところは、そうした事態には至っていない。
確かに、イスラエルはシリアやエジプトの状況を固唾を呑んで見守っているが、今のところ自国の安全保障に影響は及んでいない。さらに、イランに対する制裁をさらに強化するよう国際社会に促すに当たっても、ネタニヤフ氏は重要な役割を果たしてきた。
ネタニヤフ氏は米国の大統領にさえ逆らい、これといった対価を払わずに済んでいるようだ。バラク・オバマ氏は2009年に大統領に就任した時、占領されたパレスチナの領土への入植をやめるようイスラエルに求めた。しかしネタニヤフ政権は入植地の建設を続けた。最終的に折れたのはオバマ氏の方だった。
こうしたことから、1月22日の総選挙がネタニヤフ氏の首相再選という結果をもたらす公算が大きい理由は容易に理解できる。
・将来世代はネタニヤフ氏に厳しい?
普通であれば、国の指導者を3期も務めれば称えられ、その国の歴史に名が残ることは確実だろう。
しかし、未来の世代はネタニヤフ氏を、このユダヤ人国家を致命的なほど衰えさせた人物として振り返ることになる可能性が高い。ネタニヤフ氏は、この国の将来を巡るいくつかの大きな問題に答えていないからだ。
そうした大問題の中で最も重大なのは、パレスチナ人の未来である。
ショッキングなことに、イスラエルは1967年の第3次中東戦争(6日戦争)以来、ヨルダン川西岸をもう50年近く占領している。イスラエル人にしてみれば、この状況は永遠に続くと思いたいところだろうが、そんなことはあり得ない。
イスラエルの人々は現在、比較的平穏な日々を過ごしているが、この国を取り巻く国際情勢は急激に悪化している。イスラエルはかつて、この地域で最も重要な2国の政府――エジプトとトルコ――とまずまずの関係を維持していた。
だが今では両国ともイスラム主義者が政権を握っており、イスラエルによるパレスチナ支配の継続を受け入れることには以前よりもかなり後ろ向きになっている。
・失われていく国際的な支持
イスラエルは西側の支持も失いつつある。国連総会で先日、パレスチナを「国家」に格上げするか否かを問う投票が行われた際、これに反対するイスラエルは欧州諸国からほとんど支持を得られなかった。これを見たイスラエル人たちが愕然としたのも無理はない。イスラエルを常に支持してきたドイツでさえ、この投票では支持を拒んで棄権に回った。
米国は反対票を投じたため、米国の支持はまだ揺らいでいないとイスラエル人たちは胸をなで下ろしている。しかし、本当に揺らいでいないのだろうか?
オバマ大統領が次期国防長官にチャック・ヘーゲル氏を指名したことは、強烈なシグナルを発している。ヘーゲル氏はイスラエルと米国の利益は全く同一ではないという自明のことを述べ、イスラエル・ロビー(米国のユダヤ系圧力団体)の怒りを買っている。
ネタニヤフ氏はオバマ政権に対し、イスラエルとパレスチナの2国共存案に理解を示すというリップサービスも行っている。だが実際の行動からは、同氏がこの構想を真剣に考えていないことがうかがえる。入植地の建設は続いているし、イスラエル政府はヨルダン川西岸のパレスチナ穏健派指導部に恥をかかせたり間接的な手段で攻撃したりしているのだ。
実は、ネタニヤフ氏は占領地に関する長期戦略を持っていない。少なくとも、公式に認められるような戦略はない。そのためネタニヤフ氏には、極右に出し抜かれる隙が生じている。イスラエルの選挙で勢力を増しているのは極右政党「ユダヤの家」で、同党はイスラエル入植地の大部分を含むヨルダン川西岸の60%を正式に併合することを求めている。
この計画では、併合された地域に住む5万〜10万人のパレスチナ人にイスラエルの市民権を与えることになる。一方、まだ数百万人いるパレスチナ人を残る地域に封じ込め、彼らはそこで国家の地位も政治的権利もない状態で生きていくことになる。
・勢い増す右派勢力
このような提案は、国家の地位を得ようとするパレスチナ人の望みを絶ち、ヨルダン川西岸の残存地域を哀れなバンツースタンに変えてしまう。違法な併合は、まだ残っているイスラエルの国際的正当性を完全に損ない、恐らくは第3のパレスチナ民衆蜂起を誘発するだろう。
だが、併合の幻想を抱いているのはユダヤの家だけではない。併合論はネタニヤフ氏が率いる与党リクード内でも勢いを増している。欧州外交評議会(ECFR)のダニエル・レビー氏が言うように、「今回のイスラエルの選挙で最も著しい特徴は、公然たる併合論者である右派勢力の勢力拡大だ」。
ネタニヤフ氏は公然と併合論を唱えているわけではない。しかし、継続的な移植に対する支持とパレスチナの穏健派と向き合わない態度は暗に、同じ目標を目指しているように見える。その一方、2国共存の解決策に対する口先だけのコミットメントを継続することで、諸外国とのあからさまな対立を避けたいと考えているようだ。
そうした政策は戦術的には巧妙だが、戦略的なビジョンは一切示していない。ネタニヤフ氏は来週、勝ち誇って首相の職務に戻ることになるかもしれない。だが、同氏はイスラエルを大惨事に導く恐れがある。
この記事を読んだ人はこんな記事も読んでいます(表示まで20秒程度時間がかかります。)
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。