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米経営者の株保有、批判の矢面に
インサイダー 相次ぎ調査 増税前に駆け込み配当
【ニューヨーク=川上穣】米企業の経営者が自社株の保有を巡って、批判の矢面に立たされている。業績を下方修正する直前に持ち株を売り抜けたインサイダー疑惑で、米証券取引委員会(SEC)が一部企業への調査を開始。来年の実質増税をにらみ、年内の特別配当で巨額の資金を懐に入れるオーナー系企業にも非難の矛先が向かう。巨額の富を手にする経営者に対し、一般株主の不満が募っている。
経営者のインサイダー疑惑は、米ウォール・ストリート・ジャーナル紙の11月末の報道が火付け役になった。経営者が保有する自社株をどう処理していたかの公的資料を2004年以降から調べ上げ、疑わしい複数の取引を指摘した。
名指しされた1社である女性向け衣料品ショップのボディー・セントラル。今年5月1〜3日に、創業者と娘の経営幹部が合計で290万ドル(約2億4000万円)相当の自社株を売却した。3日の取引終了後の決算発表で、同社は12年通期の業績見通しを下方修正。市場では失望感が広がり、翌4日だけで株価は49%安と急落した。
同社は「(創業者らは)3月の段階で(5月時点の売却を)予定していた」といい、業績の下方修正は想定外だったとの立場だ。
米国では経営者が自らの保有株を売却する計画を事前に策定していれば、その後、重要な内部情報を入手しても問題はないとの規定がある。経営者サイドはこれを盾に正当性を主張している。
ただ、株価急落で損失を被った一般の株主と比べ、創業者らが有利な取引をした事実は残る。
ニューヨークの検察当局はこのほど、ボディー・セントラルやディスカウント店ビッグロッツなど7社について、経営者の株売買の実態調査を始めた。SECもインサイダー取引に抵触する取引がなかったかに神経をとがらせている。
08年の金融危機で失われた市場の信認を取り戻そうと、金融当局は市場で不正を働いた当事者への制裁を強化。主にインサイダー情報を入手して収益を上げたヘッジファンドが標的になってきたが、ここにきて企業の経営者に調査の範囲が広がりつつある。
経営者への不信感の高まりは、最近の配当政策で助長されている面もある。年明けにかけて配当課税などの減税措置が失効する「財政の崖」問題。米企業は来年以降の実質増税をにらみ、年内の配当前倒しや特別配当の対応を急いできた。
その根底に「株主への配慮」があるのは確かだ。だが、経営者自身が筆頭株主のオーナー系企業ほど年内配当に前向きなことが明らかになるにつれ、市場には冷めたムードも広がりつつある。
IT(情報技術)大手オラクルは来年の3半期分の配当を、今年12月に一気に支払うことを決めた。最高経営責任者(CEO)のラリー・エリソン氏は、同社の発行済み株式の2割超を握る筆頭株主だ。
会員制卸売大手の米コストコ・ホールセールも12月中に特別配当を実施。共同創業者のジム・シネガル氏が約400万ドルを手にするという。同氏はオバマ大統領の支持者として知られ、大統領選でも増税路線を支持してきた。にもかかわらず同社が特別配当を決めたことから、「主義主張と実際の行動が一致していない」といった厳しい声も出ている。
株不正取引、米当局が摘発強化 ヘッジファンド中心に
【ニューヨーク=川上穣】米証券取引委員会(SEC)や検察当局は、株式市場での不正取引の摘発を強化している。特に標的になっているのがヘッジファンド。一般の株主が知り得ない内部情報をもとに利益を上げる一部ファンドの取引の実態が明らかになり、ファンド業界の信認を揺るがす事態に発展している。
米検察当局は先月、米大手ヘッジファンドSACキャピタル・アドバイザーズの元社員をインサイダー容疑で連邦地裁に訴追した。過去に臨床試験に関する内部情報を入手し、医薬品株の売買で不正な利益を上げた疑いが持たれている。
著名投資家コーエン氏が創業した同ファンドは、運用資産が140億ドルと世界有数の規模を誇る。コーエン氏自身に捜査の手が及ぶとの観測もあり、一大スキャンダルに発展する恐れもある。
昨年には米ヘッジファンド大手ガリオン・グループの創設者が、ゴールドマン・サックスなど有力企業の株式売買を巡るインサイダーの罪に問われ、懲役11年の実刑が確定した。年金基金などは投資先のファンドを慎重に選ぶ姿勢を強める。ファンド業界も従来以上に「情報の透明化」が問われるようになっている。
[日経新聞12月29日朝刊P.6]
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