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絶滅に向かう共和党? 非白人パワーと若者の「強い政府志向」でオバマ再選
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投稿者 MR 日時 2012 年 11 月 12 日 13:47:49: cT5Wxjlo3Xe3.
 

【肥田美佐子のNYリポート】絶滅に向かう共和党? 非白人パワーと若者の「強い政府志向」でオバマ再選
2012年 11月 12日 12:11 JST
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 「イエス・ウイ・キャン(そうだ、われわれにはできる)! イエス・ウイ・キャン!」

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「バラク・オバマ再選」の文字が躍るタイムズスクエアの電光掲示板(米東部時間11月6日深夜)
 大統領選投開票が行われた米東部時間11月6日の深夜(日本時間7日午後)、オバマ大統領再選の一報が全米を駆けめぐった直後、ニューヨーク・マンハッタンの中心部タイムズスクエアには、見覚えのある光景が広がっていた。

 テレビカメラを前にオバマ陣営の合言葉を連呼する若者たち。巨大広告スクリーンに流れるオバマ氏当選の報。興奮気味にシャッターを切る観光客。警戒に当たるニューヨーク市警(NYPD)――。

 もちろん、この夜の人出はせいぜい数百人と、歩くのもままならないほど群衆が広場を埋め尽くした4年前の熱狂とは比べるべくもない。だが、この日、集まった人たちを見るかぎり、ミレニアム世代(30歳未満)をはじめ、アフリカ系や中南米系、アジア系のマイノリティー、女性、労組関係者など、米国初の黒人大統領誕生を支持した主役たちは、ある程度健在のようだ。

 「ウォール街を占拠せよ」運動に代表される米反格差デモに参加した若年層は、ワシントンを「チェンジ」することができなかったオバマ大統領に失望し、棄権する人が急増するとみられていたが、さにあらず。ふたを開けてみると、投票所に足を運んだ若者は、前回より1ポイント上昇し、全有権者の19%を占めていた(米シンクタンク「米国進歩センター」11月8日付リポート)。

 タイムズスクエアでも、オバマ大統領の等身大のパネルを掲げて仲間と写真を撮ったり、抱き合って喜びを分かち合ったりする学生などの姿が目を引いた。

 故郷のノースカロライナ州で期日前投票をしたというエリザベス・アンダーソンさん(23)も、その一人だ。ニューヨークのペース大学で芸術を専攻する大学院生の彼女は、激戦州の1つであるノースカロライナがロムニー氏の手に落ちたのは残念だと言いつつも、「最高の気分。オバマ大統領にはもう少し時間が必要。雇用状況も、今にきっと良くなる」と期待する。

 2期目に臨むオバマ大統領には学生ローン問題にも力を入れてほしいと話すのは、ニューヨークのフォーダム大学ロースクールで学ぶクリス・ホランドさん(31)だ。「みんなが、高等教育を受けることでアメリカンドリームを追求できるように」と、彼は言う。

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オバマ大統領再選を祝う若者たち(タイムズスクエア)
 日本でも、若い世代の自民党離れが政権交代につながったように、米国でも、就職難や過剰な学生ローンの負担増、格差拡大で、よりどころを求める若年層の「大きな政府」志向がオバマ再選の追い風になった感もある。タイムズスクエアで取材した20代の女性は、08年の大学卒業後、2年たってようやく就職できたが、失業中は「恐怖感にさいなまれていた」と打ち明け、大統領は積極的に雇用問題に取り組んでほしいと話す。

 米国進歩センターのミレニアム世代に関するリポート(11月5日付)によれば、米国人気質の根幹を成してきた政府に対する不信感も、次代を担う若者の間では色あせつつあるという。ミレニアム世代の6割が「今日の複雑な経済問題に対処するためには強い政府が必要だ」とみなし、ホランドさんのように、政府は、大学教育へのアクセスを容易にすべく、もっと関与すべきだと考える人も73%に達する。

 ウォール街への公的資金注入は国民の強い反発を買い、反格差デモのきっかけにもなったが、オバマ大統領再選の決め手となったオハイオ州での勝利は、政府のGM(ゼネラルモーターズ)などの救済が、製造業のメッカである同州の有権者にアピールしたのだろう。対するロムニー氏は、自動車産業を救済すべきではなかったと、再三訴えていた。

 今回、マンハッタンの投票所などで話を聞いたオバマ派のなかには、同性婚支持や人工妊娠中絶賛成など、大統領のリベラルな社会的スタンスに共鳴するという人も多かった。特にミレニアム世代には同性愛者の権利を擁護する人が多いが、この点も共和党とは相いれない。

 伝統的な家族観を重視する共和党に対し、男女の賃金格差解消など、女性の権利拡大に熱心なオバマ大統領の姿勢を評価する有権者も目立つ。4年前にはオバマ大統領が勝利を収めたが、今回はロムニー氏が勝った中西部インディアナ州の代議員、タンミ・デービスさんが大統領を支持し続けるのも、オバマ政権が、さまざまな連邦政府部門に女性の問題を扱う部署を設けるべく尽力したためでもある。「これからも、、『最も国民に受ける決断』ではなく、『正しい決断』を下し続けてほしい」と、デービスさんは言う。

 また、人種のるつぼ化に拍車がかかる米国では、ミレニアム世代、X世代(30〜47歳)ともに非白人が約4割を占めるが、この層のオバマ支持には絶大なものがある。たとえば、アジア系米国人で民主党支持を自認する人は4割強だが、オバマ大統領に1票を投じた人は72%に達する。片やロムニー氏支持者は26%にすぎない。

 共和党の地盤でありながら前回の大統領選ではオバマ氏を選び、今回も激戦中の激戦といわれた東部バージニア州の民主党代議員、ハング・グエンさん(41)もアジア系米国人だが、マイノリティーにチャンスをくれるオバマ大統領のほうが、「アジア系米国人にとって、より良い選択だ」と確信している。アジア系の中には中小企業を営んでいる人も多く、オバマ政権の中小企業重視の政策が助けになる。グエンさん自身も、マイノリティーが経営するIT関係の小規模企業で働いている。

 今やマイノリティーの中で最大勢力になりつつある中南米系も、オバマ再選になくてはならない存在だった。不法移民の子供に寛大な立場を取るオバマ大統領に対し、ロムニー氏は、厳格な不法移民対策への支持を表明していた。米国の人種的勢力図や価値観が大きく変わろうとしている中、移民法改革と同性婚をめぐる共和党の保守的なスタンスは、「絶滅への処方箋」(ロイター通信)だ。

 08年の大統領選でオバマ氏に大敗したジョン・マケイン共和党候補の長女でジャーナリストのメーガン・マケイン氏(28)いわく、共和党保守派は、未来を「死ぬほど恐れている」。同氏は大胆な物言いと熱心な同性愛者の権利擁護で知られるが、前回の大統領選後、「あまりにも多くの共和党員が、過去の成功にしがみついている」と、若い世代の心をつかみあぐねる共和党を一喝した。問題は、共和党対民主党の対立ではなく、「過去と未来の対立」だという。

 次期大統領選には、反原発など、オバマ大統領以上に革新的なアンドリュールー・クオモ・ニューヨーク州知事(民主党)の出馬が早くも取りざたされている。米国進歩センターによれば、今年の大統領選で投票所に足を運んだ人は、08年にもましてマイノリティーが多く、若く、保守化傾向が薄れている。選挙権を持つミレニアム世代の4割以上が非白人だ。

 今回、08年をしのぐ約7割がオバマ大統領に投票した中南米系をはじめ、若い移民の増加などでダイバーシティ(多様性)が増し進み、白人有権者の影響力が低下しつつある米国。若い世代の社会通念もガラリと変化している。

 変わるか、さもなくば、さらなる衰退か――。民意の変化に鈍感で、チェンジを拒む党に未来がないのは、米国も日本も同じである。

*****************

肥田美佐子 (ひだ・みさこ) フリージャーナリスト


Ran Suzuki
  東京生まれ。『ニューズウィーク日本版』の編集などを経て、1997年渡米。ニューヨークの米系広告代理店やケーブルテレビネットワーク・制作会社などにエディター、シニアエディターとして勤務後、フリーに。2007年、国際労働機関国際研修所(ITC-ILO)の報道機関向け研修・コンペ(イタリア・トリノ)に参加。日本の過労死問題の英文報道記事で同機関第1回メディア賞を受賞。2008年6月、ジュネーブでの授賞式、およびILO年次総会に招聘される。現在、『週刊東洋経済』『週刊エコノミスト』『プレジデント』『ニューズウィーク日本版』などに寄稿。ラジオの時事番組への出演や英文記事の執筆、経済・社会関連書籍の翻訳も行う。翻訳書に『私たちは“99%”だ――ドキュメント、ウォール街を占拠せよ』、共訳書に 『プレニテュード――新しい<豊かさ>の経済学』『ワーキング・プア――アメリカの下層社会』(いずれも岩波書店刊)など。マンハッタン在住。http://www.misakohida.com

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