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米、緩和頼みでインフレも 高失業、成長下振れに主因
モルガン・スタンレー チーフ米国エコノミスト ビンセント・ラインハート氏
米国では減税打ち切りと強制的な歳出削減による「財政の崖」が懸念されるなか、金融政策に景気下支えを期待する声が根強い。金融緩和を強めることの効果はどうか。米連邦準備理事会(FRB)元金融政策局長で、米モルガン・スタンレーのチーフ米国エコノミストのビンセント・ラインハート氏に聞いた。
――FRBが金融緩和を続ける際にメドとしているのは何でしょう。
「景気の持続的な回復を確認できる転換点を過ぎるまで、FRBは緩和を続けるだろう。今の米国で懸念されているのは(与野党対立による)財政の崖。だがこの崖を乗り切ったとしても、金融緩和の姿勢には変化がないということだ」
――景気持ち直しの具合をどう判断するのですか。
「今のFRBは、物価の安定と並ぶ使命である雇用の最大化に力点を置いている。FRBは景気回復についても、この観点から判断するだろう。問題は、今の米国がかつてのようなV字型の回復を達成できなくなっていることだ」
――景気回復が鈍いのはなぜでしょう。
「重度の金融危機に見舞われた結果、経済の潜在成長率が低下しているからだ。20世紀後半の半世紀に、深刻な金融危機は15回起きている。それらの金融危機後の平均でみて、危機発生から10年後の1人当たり国内総生産(GDP)の水準は、危機が起きる前のトレンドが続いたとした場合に比べて10%低い」
「これは総需要の不振というよりも、設備や雇用の落ち込みに伴って総供給が下振れしてしまったためだ。モルガン・スタンレーの試算によれば、今の米国の潜在成長率は2%程度が精いっぱいだ」
――だからこそ、金融緩和を求める声が強まっているのでは。
「潜在成長率が低下した結果、自然失業率は上昇したとみられる。今の失業率(10月は7.9%)を金融政策だけで押し下げようとすると、知らず知らずのうちに物価上昇を招く転換点を越してしまいかねない」
「1973年の石油ショック後の米国も潜在成長率の低下を認識するのが遅れ、FRBも含め総需要刺激策をとり続けた。結果として、70年代末に深刻なインフレが引き起こされた。今回も同じ失敗を繰り返してはならない」
(聞き手は編集委員 滝田洋一)
FRB時代はエコノミストとしてグリーンスパン、バーナンキ両議長の知恵袋だった。2011年より現職。ロゴフ・ハーバード大教授との共著「国家は破綻する」を持つ妻カーメン・ラインハート氏とは、金融・財政危機の問題意識を共有している。
[日経新聞11月7日朝刊P.7]
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