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http://japanese.ruvr.ru/2012_10_26/92567424/
米国の国際政治学者サミュエル・ハンティントン教授は、1990年代初め世界に対し「人類は、文明衝突の脅威にさらされている」と警告した。
ハンティントン教授によれば、冷戦終了後、人類は8つの文明圏に分裂する事になった。その8つとは、米国を筆頭とした西側、中国(儒教)、日本、イスラム、インド、ラテンアメリカ、アフリカ、そしてロシアを筆頭とした東スラブ及び正教の文明圏だ。教授は「これらの文明圏が『日の当たる場所』を求めて戦いに入り、互いが接触する地点は、血が流れる運命にある。中東やバルカン半島、カフカス、中央アジアやヒンドスタンでは、すでに血が流されている」と指摘した。
博士の「文明の衝突」という考え方は、世界中で有名になった。しかし、すべては現実にそのようになっているだろうか? 例えば、もし文明圏に目を向けるなら、そこに入る民族が、すべて同一の利害関係を持っているわけでは決してない。そして文明というものは、利益を調整し実現する制度やメカニズムを持っていない。文明には、統一された政府や議会、軍、特務機関などがない。ハンティントン博士の理論の正しさを認めるとするなら、例えば、中東や近東では、トルコやイラン、サウジアラビア、エジプトさらにはアフガニスタンなどといった実に様々な国を一つにまとめた一枚岩のスーパー・イスラム国家が誕生するはずだが、当然ながら、近い将来、そうしたものが生まれる可能性はない。
一方国民国家は、文明と違って、利益をしっかりと集める事ができ、そうした利益を絶えず形成し、後でそれらを実際に現実化し擁護する制度やメカニズムを持っている。つまりそうした国家には、一つの政府と議会、そして軍と特務機関がある。また国家は常に、極めて多面的で、決していつも文明的その他の方向性とは一致するわけではない自分達の利益に従って行動している。それゆえ国家はしばしば、人種的、宗教的などの特徴から言えば近しい隣人達と競ったり紛争を起こしたりするのだ。
もしハンティントン教授の「文明の衝突」理論に立脚するならば、ロシアは中国と対決状態になるはずだ。中国は、ロシアと違う文明を持ち、強大で野心に満ち、おまけに地政学的にロシアと国境を接している。それにもかかわらず、ソ連邦崩壊後これまでの間、すでに20年の年月が流れたが、ロ中関係は上向きであり、両国は密接に協力し合っている。それはなぜか? その極めて簡単な理由は、両国の国益が基本的に一致しているからである。
一方、ロシアとウクライナの関係は、複雑であり、どうしても上手く行かない。ロシア人とウクライナ人は一つの文化圏に属し、共通の歴史的民族的根っこを持ち、近い文化的価値観を分かち合い、何世紀もの間、一つの国家に住み、親族関係で密接に固く絡み合っているにもかかわらず、関係がうまく調整できないでいる。その原因は明らかだ。一連の重要な問題において、ロシアとウクライナの国益がぶつかっているからだ。また国益という点では、ロシアはグルジアとも衝突しており、その結果、両国関係は波乱に満ちたものとなっている。
しかしだからと言って、これは、ロシア政府がウクライナやグルジア政府と未来永劫争う運命にあるという事を意味するものではない。国益は、時と共に変化する可能性があるからだ。
もちろん、文明間の衝突を基盤として暴力の炎が燃え上がる事はある。それは、大金持ちと恵まれない人々の間に、また民族・種族間や宗派間で摩擦が起きるのと全く同じようにだ。 人々はそもそも、互いに競争し衝突する特性を有している。これまでもそうだったし、これからもそうだろう。しかし我々が、世界の今後の発展の傾向を理解したいのならば、やはり21世紀も主要な登場人物は国民国家であるという点に立脚すべきである。 まさにそうした国々の行動が、歴史の今後を決めて行くだろう。
◆「アラブの春」、市民革命か仕組まれた政変か?
http://japanese.ruvr.ru/2012_10_26/arabu-no-haru-shikumareta-seihen/
「「アラブの春」は、「大中東」構想を推進したジョージ・ブッシュ前大統領に播かれた種の芽吹き、そして地域全体の民主化の芽生えである」。
ロシアのセルゲイ・ラヴロフ外相は、「ロシースカヤ・ガゼータ」紙のインタビューの中で、中東の現状についてこう述べた。
この発言が、現在中東および北アフリカで起こっていることについて多くの専門家が行ってきた、そして行っている評価と重要な点で異なっていることは、注目に値する。
専門家らは「アラブの春」を極めて自然な民衆運動と見なしているのだ。ラヴロフ外相はその職掌柄、「アラブの春」の性格について、政治学者・情勢ウォッチャーらより遥かに多くの情報を持っている。さらに、外交言語からの明らかな逸脱という点も多くを物語っている。
どのような事実、また出来事が、ロシアの外相にこのような発言をなさしめるのであろうか?東洋学者のヴャチェスラフ・マトゥーゾフ氏が自説を語った。
多くのアラブ国家で起こった指導層の交代は、外国勢力に用意されたプログラムに沿って実現された」。現在このテーゼを補強する書類の数々を用意に探し出すことが出来る。
米国は自国のイメージを変えることを決意した。つまり、「民主的な」仮面をまとい、表面上、イスラム世界との公然たる対決姿勢から脱却する、という決意を。しかしその実、仮面の下には、従来どおりの「アンチ・イスラム」の顔が隠れていたのだ。
ともかく、イメージ・チェンジのために、特別に設立された米国の多国籍企業連合体である「Business for Diplomatic Action」が様々なキャンペーンを行った。この連合体にはマクドナルド、ロスチャイルド・コーポレーション、アメリカン・エアラインズ、ボーイングなど、有名な大企業が名を連ねた。
これら企業が米国の最上位を占める大学に出資し、中東諸国の市民に、政権転覆の方法論を教えさせたのだ。米国の同盟相手であるかどうかとは無関係に。
明らかに、事は人々の教育のみにとどまらない。インターネット上では、たとえば、どうやって抗議運動を組織しかつ実行するか、デモを行うにはどうすればよいか、政治との対決の仕方、またミーティングにはどのような衣服を着てくればよいかなど、反抗のやり方についてアラビア語で書かれたパンフレットを見つけることが出来る。
これは、多かれ少なかれ平和的な政治転換の場合の話である。シリアにおけると同様の場合については、WikiLeaksのウェブサイトで公開された米国大使の電報が光を投げかけてくれる。そこには、反体制派とはどんな人たちで、その中のどのような流れが政府と対抗できるか、どのような流れにはそれが無理か、記されている。
しかしなぜ、米国は、アラブおよびイスラム世界における政治転換に関するこれらすべての行動を遂行するのだろう?「分割して、統治せよ」という有名なフレーズにこそ、その答えがひそんでいる。
チュニジア、エジプト、リビア、イエメンで起こったことのプロセス、現在シリアで起きていることのプロセスが、長らく、これら諸国の世界の政治に対する影響力を最小限に制限している。さらに、米国の戦略に沿って、多くの国々を同様の運命が待ち受けている。これこそセルゲイ・ラヴロフ外相が指摘した「大中東」構想である。ヴャチェスラフ・マトゥーゾフ氏はそう指摘する。
―2006年、イスラエル空軍がリヴァンを攻撃した際、米国のコンドリーサ・ライス前国務相はまったく公然と、新しい「大中東」構想について宣言した。当時の発言は次のようなものだ。「我々が今日(リヴァンで)目にしていることは、その本質において民族紛争であり、その結果として「新しい中東」が生まれるようなものである」。
これはつまり、米国のプランには、武力介入を通じての国境線と地域の政治構造の書き換えということも含まれる、ということである。目のあたりにしているように、チュニジア、エジプト、リビア、イエメン、シリアも既に俎上の鯉である。しかしこのプロセスはとどまることがないであろう。
プランにはサウジアラビアも入るかも知れない。3代の大統領に連続して登用されている米国のラリフ・ピータース陸軍中佐の描いた新しい「大中東」の地図には、サウジアラビアも載っている。ルブ・アル・ハリ砂漠の広がるこのスンニ派国家は、一種の「イスラムのバチカン」であり、メッカとメディナという聖地を有し、サウジ東部と現在のイラク北部イランのシーア派地域と隣接している巨大な国家である。
現在宗教間対立はバーレーンにおける衝突に波及している。イランを非難する一方で、西側諸国がこれら出来事に手を貸している、と言う可能性も私は排除しない。しかし事はペルシャ湾に限った話ではない。同様の運命が中東全体、また北アフリカをも待ち受けているのだ。
「大中東」構想の組み換えプロジェクトはハリウッド映画の「悪の組織」の類を連想させる。しかし真実のところ、このアイデアは既に具現化の途上にあるのだ。これが我々が2年間観察し続けている「アラブの春」だ。
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