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欧州で「静かな独立運動」
スコットランド・カタルーニャ… EUの求心力、国家への帰属薄める
【ロンドン=上杉素直】英スコットランドやスペインのカタルーニャ州、ベルギーのフランドル地域――。欧州で国家からの独立を目指す動きが勢いづいている。歴史や民族、言語の違いに加え、深刻な債務危機で中央政府への不満が高まったためだ。欧州連合(EU)の地域安定の取り組みで国家への帰属意識が薄れたことも、地域の自立を促している。
「この300年で最も重要な決断だ」(スコットランド自治政府のサモンド首相)。スコットランドの独立の是非を問う住民投票を2014年に実施することで、キャメロン英首相と合意したのは今月中旬。スコットランド・イングランド両王国が合同した1707年以来の節目と強調する。
債務危機で不満
サッカーの国際試合に独自の代表チームを派遣するように、スコットランドは英国からの自立心が旺盛な地域。もともと教育や裁判などは自前の制度を備えていたが、昨年の地方選挙で独立派が躍進。英中央政府も住民投票を受け入れざるを得なくなった。14年の住民投票で独立賛成が過半数になれば、独立に向けた手続きが始まる。
9月11日、スペインのバルセロナで独立を求める人のデモが150万人に膨らんだ。バルセロナは独自の文化や言語圏を形作るカタルーニャ州の中核都市。9月11日は18世紀のスペイン継承戦争でカタルーニャが国家の地位を失ったと語り継がれる日で、デモ参加者らは中央政府が禁じる住民投票の実施を訴えた。
フランスと国境を接するカタルーニャ州は、スペインの国内総生産(GDP)の約2割を占める豊かな地域だ。州財政の悪化から支援を求めていることは棚に上げ、債務危機で失態を重ねる中央政府に対して強い不満を抱く。州政府のマス首相は「権利を行使するときが来た」と語り、11月25日の州議会選挙の争点に独立問題を据えた。
スペイン・バスク州では、今月21日投票の州議会選で独立急進派の躍進が見込まれている。
住民投票で地域の独立を問う「静かな革命」が欧州で広がっているのはなぜか。少数民族の独立運動を専門にする英アベリストウィス大学のエリアス教授はEUに着目する。欧州各国から主権を引き継ぎ、国家を超える存在となったEUが「新たな独立国家を迎え入れる国際的な枠組みになった」。ノーベル平和賞で評価されたように、EUは半世紀以上も地域安定に取り組んできた。その求心力が武力に訴えない独立運動を誘い、存在感が揺らぐ国家への遠心力をもたらした。
本音は駆け引き
エリアス教授は「欧州での独立運動はおのずと親EUになる」と分析する。確かにスコットランドでもカタルーニャでも独立後はEUに加盟するという主張が目立つ。
そのEU機関が数多く集まるベルギーでは、南北の地域対立が激しさを増している。
14日投開票されたベルギー統一地方選。北部フランドル地域の分離独立を訴える政党が大躍進を遂げた。ベルギー人口の約6割を占める北部のフランドル地域はオランダ語圏、3割強を占める南部ワロン地域はフランス語圏。南北の地域政党の確執から組閣が行き詰まり、暫定内閣が長く続いた時期もある。
欧州各地で広がる独立運動だが、すんなりと実現するかは微妙だ。世論調査では独立賛成派が多いとは限らず、独立に伴う経済的な恩恵も見えない。独立をちらつかせて、中央政府からカネと権限をさらに引き出す。本音はそんな駆け引きにあるのかもしれない。
<MEMO>住民投票で独立否決も
国連が2011年7月、193番目の加盟国として認定した北アフリカの南スーダン共和国。内戦後、自治政府の統治を経てスーダンから独立した。11年初めに行われた住民投票では有効投票の98.8%という圧倒的多数が独立を支持し、流れを決定づけた。
独立運動では、民意を問う住民投票が最終的な手続きになることが多い。ただ、すでに一定の生活水準に達した先進国では住民が独立という変化を望まない例もある。カナダにあってフランス語を公用語とするケベック州は1980年、95年の2度にわたる住民投票で独立を否決した。
英国のスコットランドも独立した場合の通貨や安全保障などに不安要素があり、現時点では独立に賛成する住民の数は反対のほぼ半数にとどまる。独立の賛否を問えば否決になる公算が大きいからこそ、英政府が住民投票を容認したともいえる。
[日経新聞10月22日朝刊P.8]
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