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2012 年 10 月 5 日
第120回「シェール・ガスC‐米国に見る著しい環境破壊の実体」
米国ではシェール・ガス開発のおかげで、ハリブルトン社とかフラックテクサービス社などといった特殊な高度掘削技術をもつベンチャー企業が相次いで、大成長をとげるなど、新たな市場でのベンチャー企業が相次いで設立された。
これに加え様々な周辺企業での雇用が創出され、また、ガス生産会社に土地を貸す地主は、これまでの単なる牧草地が平均して年2万ドルを生む金の卵と化した。あくせく働く必要がなくとも月数千ドルになる地主も少なくない。ここで注意したいのは米国での土地の法的権利で、米国では地表から地球中心までの立体部分に所有権が及ぶ。したがって自分の土地地下にパイプが通っただけでも貸地権が発生する。
この土地をガス会社に貸す際の契約書の内容が問題。ガス掘削に関してはいかなることも口外しないという厳しい守秘義務が課せられている。環境破壊問題もこのため外部に語られることはなかったが、ここにきて一部でその凄まじさが露呈され世間の注目を浴びることになった。
ワイオミング州では、地下水を採る水道水が真っ黒になった。ガス会社は逆浸透膜を用いた濾過浄化装置を設置したが余り役に立たず、住民は他所から水を買っている。
体調不調者が続出しており、症状は耳鳴り、頭痛、めまい、ぜんそくなどで体中が痛いとか末梢神経の症状が目立つという。水道水からはグリコールやエーテルが検出された。水が溶剤のような匂いがして飲めない所もあり、牧牛への影響も懸念されている。
同州サブレット郡のジョナ・ガス田では坑井から上がってくる廃水を池に溜め自然蒸発させているが、周辺空気中のオゾンが極めて増大しているのが問題となっている。
ペンシルベニア州のサスケハンナ河流域では、大規模なシェール・ガス開発が進められているが、開発が進むにつれて一部地域に河の水が赤色に変色した。
この河は大都市ニューヨークの上水の水源として期待されている水資源であるが、同様な現象で住民が悩まされているコロラド州ガーフィールドでは住民の血液中からベンゼンやトルエンが検出されたといい、問題となっている。ここでは、ここ10年間で5千本以上のシェール・ガス坑井が掘られた。
川底からガスが噴出してきたデバイド川という小川では、川水を飲んでいた近くに棲む鳥、カエルさらには野ウサギまで死んだという。
ガス掘削の際に使用される界面活性剤は、ガスと頁岩の泥粒子との分離をよくするために流入流体に0.04%加えられているというが、圧入するハイドローリック流体の量が莫大なだけに界面活性剤の絶対量もバカにならない。掘削時には1坑井当たり8万㎥もの水が使用されるからだ。
代表的なものとしては、トリクロロベンゼン、トリエチレングリコールが使われているというが、いずれも地下水に混入して上昇、井戸水など飲料水が汚染されると健康上重大な問題を引き起こす。
米国には、バーネットの他、ハイネスビル、マルセラ、ファベッチビルというビッグ4と呼ばれる大頁岩(シェール)層が存在しており、今後これらの開発で環境破壊問題は一段と深刻化、社会問題化するものと懸念されている。
(多摩大学名誉教授 那野比古)
http://www.vec.or.jp/2012/10/05/column_120/
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