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巨大地震 ひずみや水分引き金か 地球最大はM10の恐れ
http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/130408/dst13040807510001-n1.htm
2013.4.8 07:49 産経新聞
マグニチュード(M)9級の巨大地震は、なぜ起きるのか。東日本大震災を予見できなかった反省から、その仕組みを探る研究が本格的に始まった。地殻変動や断層モデルの分析で新たなメカニズムが提唱され、地球最大の地震はM10との試算も。謎に包まれた巨大地震の実像に迫る多角的な取り組みが続いている。(黒田悠希)
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米地質調査所によると、M9地震は20世紀以降、東日本大震災を含め世界で5回発生した。場所はチリやアラスカなど環太平洋に集中しており、いずれも海のプレート(岩板)が陸のプレートの下に沈み込む海溝付近で起きている。チリでは津波堆積物の調査で、M9地震が平均300年間隔で繰り返し発生してきたことも明らかになった。
海底には海嶺という巨大山脈があり、海のプレートはここで生まれる。地球深部からマントルが上昇してマグマができ、海水で冷やされプレートを形成。マントル対流に乗ってベルトコンベヤーのように年間数センチの速度でゆっくりと移動し、海溝で陸の下に沈み込む。海と陸のプレートがくっついて滑らかに沈み込めない場所(固着域)では、地殻にひずみが蓄積して大地震が起きる。
M9地震は従来、チリなど海のプレート年代が若い場所で起きる特別な現象と考えられてきた。若いプレートはまだ熱くて軽いので沈みにくく、陸側に固着しやすいとされたからだ。しかし、東日本大震災は約1億3千万年前にできた古い太平洋プレートによって発生。巨大地震の定説は根底から崩壊し、地震学者は再構築を迫られている。
■海溝沿いに集中
では巨大地震はどこで発生するのか。京都大防災研究所の西村卓也准教授(測地学)によると、大震災前の衛星利用測位システム(GPS)のデータからプレートの沈み込み帯に蓄積されるひずみの量を解析することで、巨大地震のすみかが分かってきた。
ひずみが特に多いのは千島海溝、日本海溝、南海トラフ、カムチャツカ、アラスカ、チリなどと判明。いずれもM9地震の発生地域と一致した。津波堆積物と日本の古文書の分析から、1700年にM9が起きたことが分かった北米西海岸のカスケード地方も、ひずみが多かった。
ただ、次の巨大地震がいつ、どこで起きるかは分からない。
■大震災の予兆
東日本大震災の約10年前のGPSデータでは、宮城県沖から茨城県沖にかけて強い固着域があった。しかし従来の地震学は、同じ場所では過去と同規模の地震が起きるのが常識だったため、東北太平洋岸でM9は想定されなかった。
この固着は大震災の数年前から福島県沖などで弱くなっており、西村准教授は「今から考えると大震災の予兆だった」と悔やむ。04年のスマトラ島沖地震(M9・1)もM7〜8級の場所で発生していた。
大震災はなぜ巨大化したのか。東京大地震研究所の佐竹健治教授(地震学)は、M7級の宮城県沖地震で解消しきれなかったひずみが数百年かけて蓄積され、繰り越し分の累計が限界に達すると断層が大きく滑る「スーパーサイクル説」を提唱している。
一方、水が巨大地震を引き起こす可能性も指摘されている。プレート境界の比較的浅い場所には、断層の隙間に地殻から放出された水分がある。境界深部の固着域が滑り始めると、断層運動に伴う摩擦熱が浅部に伝わり水が膨張。水圧が高まることで、断層が上下に押し広げられて摩擦が弱まり、海溝付近まで一気に動くという仕組みだ。
■全容解明に数十年
最大規模の巨大地震を探る研究も進んでいる。国は南海トラフでM9・1の被害想定を公表したが、東北大の松沢暢教授(地震学)は地球で起こり得る最大の地震をM10と試算し、震源断層を推定した。
例えば日本海溝から千島・カムチャツカ海溝にかけての約3千キロの断層が一気に60メートル滑ると、大震災の約30倍のエネルギーを持つM10が起きる。可能性は非常に低いが、松沢教授は「起きないとは言い切れない。M10の揺れや津波の規模を把握することも必要ではないか」と問題提起する。
巨大地震の研究が本格化したのは最近のことで、その正体はまだ不明瞭だ。専門家は「全容解明に数十年はかかる」と話す。防災上、どこまで想定すべきかという課題もあるが、幅広いデータを収集し、定説にとらわれず多様な観点から検証を重ねなければならない。
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