http://www.asyura2.com/12/jisin18/msg/770.html
Tweet |
フランスでは取り入れられている免震構造が日本の原発には使われていない。東京都庁ビルも免震構造ではない。
福島第一原発事故で「免震重要棟」という言葉が使われた。放射線防護が整った建物と言うイメージだが、実際には免震装置が付いた建物と言う意味だ。では、原子炉自体に免震装置は付いているかというと答えはノーだ。原子炉建屋の免震構造は採用されていない。現在建設途中の大間原発でさえも原子炉建屋の免震構造の採用を全く検討していない。
現状は、高度情報科学技術研究機構(以前の原子力データセンター)によると「最近の免震構造の施工例と有効性の確認事例の主なものを挙げる。原子力分野では、南アフリカ連邦のKoeberg軽水炉(1984年)やフランスのCruas軽水炉(1984年)の原子炉建屋に免震工法が適用された。国内では、軽水炉原子炉建屋に対する試設計や原子力発電所の電気計装盤への検討が行われた。更に、FBR原子炉建屋に対する設計や安全上重要な原子力機器を免震構造化した場合の有効性評価法の開発が行われた。原子力分野以外では、海外において、建屋、光学機械、コンピュータ施設及び文化財等への実用化例が、国内では、建屋及びコンピュータ施設等への実用化例がある。変電施設を対象とした機器免震の研究例もある」( http://www.rist.or.jp/atomica/data/dat_detail.php?Title_Key=02-02-05-06 )ということで、フランスなどで免震構造を取り入れた原発もあるということだ。
ここで、日本の超高層ビルの免震構造採用の状況を見てみよう。平成21年12月に行われた(財) 溶接接合工学振興会・特別講演会での講演「原子力発電所・超高層建築の耐震問題」 首都大学東京 名誉教授 西川孝夫 氏 によると現状は次のようになっている。
「近代社会を支えてきた超高層建築は、1963 年にホテルニュータニができたのが最初で、1982〜1991 が最も建設数が多く、1992 年以降には免震設計のビルも登場している。日本に100m 以上の超高層建物が 400 棟程度、60m 以上の高層建築物は 2,000 棟以上あり、60m 以上の超高層建築物では動的設計を行い国土交通大臣の認定が必要である。年度別の高層建築物の高さ分類、用途別(ホテル・病院、住居系等)の変遷が BCL((財)日本建築センター)評定・性能評価件数として報告されており、近年、住宅系が増加している。BCL 設立以前(1965 年以前)の超高層建築物として、ホテルニューオータニ、霞ヶ関ビル、1970 年代の 200m 級高層建築物では新宿住友ビル(210m)、新宿三井ビル(225m)、サンシャイン 60(226m)、1990 年代の超高層建築物では東京都庁(240m)、横浜ランドマークタワー(296m)等の例が示された。建造方式が技術の変遷で替わり、RC 造(鉄筋コンクリート造)のザ・シーン城北、CFT(コンクリートを充填した鋼管)構造の川口エルザタワー、超高層免震第 1 号の仙台MTビル、積層ゴム、鉛ダンパー、鋼棒ダンパーを設備した六本木ヒルズレジデンス D 棟、中間層免震の汐留め住友ビル、低降伏点鋼ダンパーによる王子製紙本社ビル、低降伏点鋼ダンパーによる鴨川グランドタワー、低降伏点鋼と座屈補剛材、補剛ブレースの東京宝塚ビル、オイルダンパーの六本木森タワー、粘性体ダンパー(壁体)による PCP丸の内 1 丁目計画等各種の免震方式の開発が進められた」( http://www.jipa-japan.or.jp/h21.12.8nishikawa.pdf より一部引用 )
つまり、1991年以前のものは免震構造を取っていないということになる。東京都庁ビルはどれも竣工が1990年だから免震構造はとっていない。
この講演「原子力発電所・超高層建築の耐震問題」では原子力発電所について「新耐震指針では、鉛直地震動による動的設計が採用され、水平・鉛直の両方向で動的設計が行われ、動的設計が全面的に採用されることになった。平成 18 年以降、新指針では、大間原子力発電所が建設中である」と述べられていて、今現在日本に存在する原子炉は免震構造どころか、鉛直方向の揺れに対して耐震設計がされてきていないことを示唆している。実と言うと、日本のほとんどの建築物について、鉛直方向の揺れについては耐震設計が検討されていない。単に、水平方向の揺れに対しての耐震性能の半分の耐震性能が鉛直方向にもあるはずだと規定されているだけなのだ。
日本の高層ビルのほとんどは地面を掘り下げて硬い岩盤、もっとも硬い岩盤と言っても砂岩とか泥岩の岩盤か、またはそういった岩盤ではなくて砂と小石のようなものが入り混じった砂礫層の固い部分まで地面を掘り下げて、その上に5mとか8m程度の厚さのコンクリートの板を基礎として造って、その上に建設されている。ところが、こういった構造の時は、地震衝撃波、つまり、従来言われている地震波のP波とかS波ではなくて、もっと高周波のほとんど揺れを伴わない衝撃波を広範囲から集めてビル本体へ入力することになる。
問題は、免震構造を取っているビルでも、こういった地震衝撃波に対応ができるかどうかだ。積層ゴムによって地震衝撃波の吸収ができるのではと言う話もあるが、実験で確認されてはいない様子だ。
更に、免震構造の問題点として、そもそも、長時間、つまり、5分とか10分間も続く大揺れに対して対応できるのかと言うことがある。
「原子力施設の耐震設計 建物・構築物への影響評価」( http://www.aesj.or.jp/information/0527-1550nishikawa.pdf) では次のような項目を挙げて耐震設計が機能しない可能性を示している。
以下部分引用:
極限挙動に関する検討項目
積層ゴムの引張力・座屈の発生
擁壁との衝突
免震部材の特性劣化
鋼材ダンパー・鉛プラグ入り積層ゴム・高減衰積層ゴム・すべり支承
免震層下部構造剛性が低い場合
<極限状態モードに影響を与える事象>
・免震層での浮上り
・擁壁との衝突
・免震部材のハードニング・座屈
・免震部材の復元力劣化・破断
・上部構造の降伏
以上部分引用終わり。
上の指摘には地震衝撃波についての検討は含まれていない様子だ。しかし、地震衝撃波の効果は震源からかなり離れていても地震自体のマグニチュードが大きければかなり強く表れる。100キロ程度離れていてもマグニチュード7程度の地震であれば鉄筋コンクリートの建物が座屈する事例が数多く観察されている。困ったことに日本の土木工学学会とか地震学会は衝撃的な地震波の存在について、現在の地震計にその記録が取られていないから存在そのものがないとしてしまっている。しかし、既に何名かの専門家が現行の地震計の特性が高周波の地震波を捉えられないものになっていることを実験を持って示している。
最も大きな問題は、原子炉建屋について、地震衝撃波の影響や直下型地震による鉛直方向の強い揺れがどんな影響を与えるか一切分かっていないことだ。実験をすることができないためであり、全ての対策は想定でしかない。この意味でも、少なくとも原発は至急廃炉にして乾式キャスクで使用済み核燃料を保管するべきだ。
*6月8日の記事「近づく戦争・テロ社会、これらの動きを止めるべきでは?」から一連番号を付しています<<1403>>TC:38687, BC:22433
この記事を読んだ人はこんな記事も読んでいます(表示まで20秒程度時間がかかります。)
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。