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(件 名)地震衝撃波の危険性を理解した上で川内原発の廃炉を急ぐことを求める陳情 の追加資料
次の3点について先の陳情文書に追加します。
(1).通常の地震計では地震衝撃波が計測できていないことや、1994年に起こった三陸はるか沖地震で地震衝撃波による被害があったこと。海震という現象でも地震衝撃波があることが示されていること。そして、岩石の相変化により地震衝撃波が発生する可能性があること。
(2).地震活動期と静穏期について、西日本は既に地震活動期に入っていること。
(3).衝撃的な上下動についてその簡単な破壊メカニズムを説明した記事。
(1) 通常の地震計では地震衝撃波が計測できていないことや、1994年に起こった三陸はるか沖地震などで地震衝撃波による被害があったこと、更に海震という現象でも地震衝撃波があることが分かることを述べている学術論文が見つかりましたのでお知らせします。
まずインターネット上のhttp://ci.nii.ac.jp/els/110004623020.pdf?id=ART0007333866&type=pdf&lang=jp&host=cinii&order_no=&ppv_type=0&lang_sw=&no=1363795337&cp= にある次の論文です。
「地震波に含まれる衝撃波動の計測」
塩井幸武、滝田貢、境友昭
これは平成18年1月の論文で、塩井氏は八戸工業大学異分野融合科学研究所教授であり、滝田氏は同大学建築工学科教授、境氏は(株)アプライト・リサーチに所属されています。
最初に1994年12月発生の三陸はるか沖地震のことが述べられています。この地震は、マグニチュード7.5で、青森県八戸市東方沖200キロのごく浅いところを震源にした地震です。注目するべきは、震源がこのように遠隔地であっても地震衝撃波、つまり、高周波の縦波の被害が建造物に生じることが観察されていることです。「八戸市内における地震被害は第3紀または洪積時代の段丘大地に多く分布している。沖積時代の軟弱な堆積層の上では被害が少ないのが特徴である」と述べていて、従来の固い地盤の上では地震被害が少ないという常識とは被害形態が異なっていると指摘がされています。
「被災の形態の中には水平方向の地震動では説明しがたい破壊形状もしくは変状のものが少なくないので、いくつかの被災例を取り上げることとする」として八戸市庁舎、JR八戸線の柏崎高架橋など6例を挙げています。
次に、1988年6月の宮城県沖地震と1995年1月の兵庫県南部地震での被災例を挙げ、「水平動では説明し難く、上下動によるとすると納得のいくものである」としてい、「一般市民からも地震の時に空中に放り出されたとか、突き上げるような強い上下動を感じたという証言も数多く寄せられている」と指摘しています。
更に、地震計について、「従来の地震動の測定周波数範囲はほぼ30Hz以下に限られていた。その主たる理由は従来からの地震計はムービングコイル型もしくは振動子変位計のように比較的低周波数特性を持つセンサーが使用されてきたことによる」と述べています。そのため、実際に高周波数の揺れを測定できるような地震計を試作し、つくば市の(株)アプライドの社屋に取り付け、2004年3月11日に茨城県南部で発生した比較的小さな地震の波形を記録したところ、「極短周期すなわち高周波波動は上下方向だけだなく、水平方向にも存在することが分かった」ということです。
2005年2月16日の茨城県南部を震源とするマグニチュード5.4、震源深さ40キロの地震では、震度5弱を記録し、横揺れが卓越していたが、試作した広帯域地震計で「極短周期上下方向の波動が普通の地震波動の中に含まれていることは立証できた」としています。
更に、こういった極短周期の地震波が建築物を破壊するほどのエネルギーを持つかどうかを検討するために実験をし、「5kgや10kgの比較的軽い鋼製の落錘を15cm程度の高さから落とすだけで300gal程度の極短周期の上下方向加速度を観察できた。すなわち、大地震の際には震源の近傍や比較的良好な地盤上では大きな加速度を持つ、衝撃的な極短周期の波動が地震波動の中に含まれている可能性が高い。しかし、現在のSMAC型の強震計ではそのような極短周期波動を正確に捕捉することは困難であることも立証された」ということです。
以上のことが論文「地震波に含まれる衝撃波動の計測」では述べられています。しかし、このことは原発の危険性を考える上で非常に大きな意味を持っています。なぜなら、極短周期の波動が震源の直上だけでなく横方向へも伝播していることが述べられていて、原発直下で地震が起こらなくとも、近傍である程度大きな地震が起こるだけで原発の様々な建造物が衝撃的な上下動で破壊される可能性があるからです。
なお、SMAC型強震計が極短周期の揺れを正確に記録できない傾向があることは昭和の時代から指摘されてきたようです。ただし、この地震計にもさまざまな形式がある様子で、この論文の後、極短周期の波動を正確に捉えることができるように改良された可能性はあります。確認したわけではありませんが。
上に述べたものとは別の論文でも同様なことが指摘されています。近畿地方整備局のサイトの平成24年度近畿地方整備局研究発表会 論文集に「構造物の地震時衝撃破壊の代表例について」地球システム総合研究所上席研究員:前原博、建設工学研究所研究顧問:櫻井春輔 という論文があります。この論文でも地震衝撃波のことが述べれられています。(http://www.kkr.mlit.go.jp/plan/happyou/thesises/2012/pdf04/19.pdf で読むことができます)
この論文では、まず、海底で地震が起こり、その震源域の上を航行していた船舶が震源からの地震波で被害を受ける現象、つまり、海震のことについていくつもの事例を挙げ、まとめとして次のように述べています。
以下部分引用:
(4) 被害をおよぼす海震の特徴のまとめ
以上に述べた海底火山活動以外の,船舶に被害をおよぼす海震の特徴を纏めると以下の通りである.
1. 地震発生の初期に到達するP波と異なり,海震は船を損傷さす大きな破壊力を持っている.
2. 海震の衝撃波は粗密波(縦波)である事は船舶工学では常識で,余震毎に何度も発生している.
3. 海震の周波数は60〜70Hzや120〜140Hz程度が観測され,普通の地震計では測れない波である.
4. 破壊的な衝撃波は本震の後からも発生している.
以上引用終わり。
更に、阪神大震災などの事例を挙げて陸上の地震についてまとめ、次のように述べています。
以下部分引用:
(3) 地震時衝撃波の発生要因に関する考察
文献 21,22)によると地震の震源には 1.地殻のズレ破壊,2.地中の爆発,3.マグマの運動,4.突然の岩石相転移などが挙げてある.特に文献 22)では岩石の相変化による弾性波の放射は、特定の条件のもとに実験室で確認されており、その可能性を否定できないとしてある。
地殻内で臨界状態にある岩石塊が、特定の方向の節理を持ち、地殻のズレ破壊による地震活動で圧力環境が変化し相変化が励起されると考えると、地震の主揺動の後から特定の方向性を持った衝撃波が放射され、体積的に生じるので高周波で大きな破壊力を地表で発揮する現象が生じるという仮説も可能である。
岩石の相変化は地震現象の全体ではなく,限定的な現象として捉えても,構造物を破壊する威力を発揮すると考えられる.岩石相変化は震源断層近傍に限らず条件さえ整えば生じる.重要構造物の安全性を確保する観点から,構造物を破壊する衝撃波と地殻構成物質の相変化に関する研究は,今後必要になると思われる.
以上引用終わり。
ここで言う相変化とは、岩石の結晶構造の変化だということです。常圧では安定した物質も地下十数キロでは高温高圧になるため不安定になり、圧力などの変化で結晶構造が変化するということです。
そして、論文の最後にまとめとして次のように述べています。
以下部分引用:
5.まとめ
本論文ではまず海震に関する事柄を紹介し,兵庫県南部地震での衝撃破壊の代表例としてコンクリート橋脚の軸圧縮破壊と爆裂破壊の事例を少し詳しく紹介した.その要点と課題を以下に纏める.
(1) 海震の粗密波により船舶が壊される海の常識が陸の地震工学や耐震工学に活かされていない .
(2) 構造物を破壊する衝撃波は主地震動の後からも起きると考えると証言と破壊状況が整合する.
(3) 衝撃波による構造物の破壊現象について,既存の資料を再検証し,規準化を図る必要がある.
(4) 破壊的な衝撃波を正確に把握する観測態勢をつくる必要がある.
(5) 地震発生の一つの原因である地殻構成物質の相変化に関する研究を促進する必要がある.
以上引用終わり。
重要な点は、地震のP波、つまり、初期微動と言われる縦波とは別に地震衝撃波が存在するはずだということです。そして、それは、「地殻のズレ破壊による地震活動で圧力環境が変化し(岩石に)相変化」が起こった結果地震衝撃波が生じるという、2次的な地震波であるとしていることです。ここでも、原発からある程度離れた位置で起こった地震が原発へ地震衝撃波による被害を与える可能性があることが示されています。
なお、波の性質についてですが、振幅が波動のエネルギーを表すとされます。このことは海で高い波が来ると大きな圧力を受けるように感じることからもうなずけると思います。つまり、波の高さが波の強さであるわけです。ところで、高周波、つまり短波長とは、同じ振幅ならより大きな加速度を意味することになるはずです。なぜなら、それだけ短時間に波の最大幅の間を変化するからです。急激な変化を意味するわけですからそれだけ大きな加速度を持つことになるはずです。しかるに、日本の地震計は30Hz程度の低周波数の振動しか検知できないようになっていたということなのですから、原発の安全性は加速度、つまり、ガルであらわされる量で表現されるということは、地震計そのものによって原発の安全性が過大評価されてきたと言っていいのではないでしょうか。
(2)地震活動期と静穏期について、西日本は既に地震活動期に入っていることを述べている記事です。
地震の活動期と静穏期の関係について、総務省消防庁傘下の団体である消防研究センター(旧消防研究所)の刊行物「消研輯報」の第49号にある「地震及び地震動の特徴」座間信作(消防研究センター)には次のように述べられています。
以下引用:
3.2 地震活動
近畿地方に影響を及ぼす地震としては、駿河湾から四国の沖合までを震源域とする海溝型の巨大地震がまず挙げられる。特に南海地震は西南日本の内陸の地震活動と密接な関係があるとされている。南海地震で史料として残っているのは、1605年慶長の地震(M7.9)、1707年宝永地震(M8.4)、1854年安政南海地震(M8.4)、1946年南海地震(M8.1)などで100年から150年程度の間隔で発生している。このような南海トラフ沿いに起こる海溝型の巨大地震と西南日本の内陸の地震との関係を見ると、南海地震の50年程度前から内陸の地震活動が平均して2〜3倍活発になり、南海地震後約10年間は更にその3倍程度活発になっている。昭和の例で言えば、1927年北丹後地震(M7.3)、1943年鳥取地震(M7.2)が1946年の南海地震の前に発生しており、1948年福井地震(M7.2)等が地震後10年以内に起こった地震となる。次の南海地震が昭和のそれの100年後だとすると、西南日本内陸では現時点で活動期に入ることが想定され、そこに今回の地震が発生した。
茂木(1995)は、今回の震源域とその周辺では1965年頃からM4以上の地震が起こっていなかったことから、第2種空白域が出現したものとしている。一方、安藤・他(1995)は、震源域付近の最近の19年間の微小地震分布から、神戸側では地震前1〜2年、淡路島側では4〜6年間地震活動がほとんど認められず、第2種空白域が形成されたとしている。茂木(1995)と安藤・他では、第2種空白域出現に時間的な差異があるが、これは解析に用いた地震の規模の下限の取り方の違いによるものと思われる。
以上引用終わり。
ここで言う第1種空白域とはプレート境界型地震の震源域でまだ大きな地震が起こっていない地域を指すそうです。第2種空白域とは主に直下型地震が起こる地域でまだ地震が起こっていない地域を指すとされているようです。
なお、このことと関連し、川内原発の敷地には活断層がないから安全だとする主張がされている様子です。そのため、次の記事を引用しておきます。
http://www.zisin.jp/pdf/nf-vol6.pdf にある
日本地震学会広報誌 なゐふる(「ないふる」と発音するそうです) No.6 1998年Mar.から、
「活断層の定義や地震予知などで活発な論議!」というタイトルの記事。
以下部分引用:
地表に現れている過去に繰り返され、かつ今後も活動する可能性のある「活断層」は、地表部分では被害を起こすような大きな揺れ(地震動)を発生させず、物理的なずれによる被害が生じるだけだということ。深刻な被害は、圧力が集中する地下の断層で生じる揺れで起きること。話題を呼んだ米国の活断層法も、地表のずれへの対応策でしかないこと。地表部分は、地下で大きな揺れを起こした断層のしっぽである一方で、その地下への手掛かりでもあることなどでしょうか。
そこで、「活断層が地震を起こす」と一般的に思われていることは正しくなく、別の用語を用いるべきではないかとの議論が展開しました。議論をまとめますと、活きているのは地中で、「活断層=危険」という認識が広がっていることもあり、地表のずれに対して別の言葉が必要。地表部分の活断層と被害を起こす揺れを生じる「震源断層」がどうつながっているか、学問的に連続的に考えていいのか、解明はまだであり、従来通り活断層と震源断層(伏在断層)の使い分けでやむを得ない。地殻の構造探査などが進めば、地表に現れていないが今後も地震を起こす可能性がある断層も分かってくるし、地表部分から地下まですべて「活断層」と定義すればいい。
この背景には、地質学者と地震学者の認識手段の相違があることも指摘されました。さらに、現在の活断層情報を地震リスクの評価でどう生かすか、危険度だけでなくなぜ危険なのか、理由を分かってもらうことの重要性も議論になりました。断層で起きる強震動を予測することの重要性とその不確実性、リスク評価が不動産価格や固定資産税に反映されることで、より社会的理解が進む可能性も指摘されました。
以上引用終わり。
上の記述は、阪神大震災を起こした兵庫県南部地震で神戸側に震度7の帯、つまり、幅1キロから2キロ長さは地20キロから25キロにわたる壊滅的な被害を出した帯状の地域が出現したにもかかわらず、活断層が見つかっていないことにも符合します。現在、川内原発の立地地域には活断層がないとされていますが、海側には存在が確認されていて、ちょうど、淡路島の野島断層と神戸側の震度7の帯の関係が連想されます。
(3) 衝撃的な上下動についてその簡単な破壊メカニズムを説明した記事。
http://blog.goo.ne.jp/tnnt_1571/e/e3b55a16e5d855627470f73dc7ccaeb3
にある記事です。
手も足も出ない技術士「平ねぎ」の無為徒食日記
上下動による衝撃破壊事例(1)
以下引用:
画像は、「平成16年(2004年)新潟県中越地震」による上越新幹線魚野川橋梁橋脚の被害写真である。軸対称の特徴的な破壊形態を呈しており、上下動による衝撃破壊であると推測される。橋脚はつぎのような経過を辿って壊れたと思われる。
@ 基礎から上下方向の衝撃波が入力された。
A 段落し部(強度・剛性の不連続点)で、それより上のコンクリート塊が上方向に跳躍した。
B その結果、段落し部のコンクリートに水平破断面ができた。
C 鉄筋は跳躍分だけ伸びて長くなった。
D 跳躍したコンクリート塊が降下して元の位置に戻った。
E 伸びて長くなった鉄筋が外向きに座屈した。
F 段落し部の被りコンクリートが剥落した。
以上引用終わり。
上の文章中の「段落し」とは主鉄筋の量が減らされている部分のことを指すそうです。主鉄筋とは、コンクリートが圧縮力には強く引っ張り力には弱いため、引っ張り力に対しての補強のために入れられた鉄筋を指すということです。柱の場合は横方向に揺れたとき、揺れの反対側の側面は縦方向に伸びるので、柱に縦方向に入れられた鉄筋を主鉄筋とするそうです。 「段落し」をする意味は、横方向の揺れがあったとき、柱の上下端に主に力が加わりそこが変形するため、上下端に集中的に鉄筋を入れ柱の中間部には鉄筋をあまり入れないことで、中間部の鉄筋量を節約したり柱全体の軽量化を図るためだとされています。なお、別紙の写真では大変に観察ができにくいのですが、段落し部の下部は鉄筋が二重に組まれているのです。「く」の字に折れ曲がった鉄筋のすぐ内側にまた別の鉄筋があるのが下半分に見えます。
以上、地震衝撃波の危険性を理解した上で川内原発の廃炉を急ぐことを求める陳情をします。
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