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南海トラフ地震、被害220兆円想定 3.11の10倍
http://www.asahi.com/national/update/0318/TKY201303180271.html
2013年3月18日18時26分 朝日新聞
太平洋沖に延びる南海トラフでの巨大地震対策を検討する国の有識者会議は18日、マグニチュード(M)9・1の地震が起きると、最悪クラスで220兆3千億円の経済被害が出るとの想定を発表した。国内総生産(GDP)の42%、東日本大震災の10倍を超える規模。日本経済を支える太平洋沿岸部で壊滅的な被害が生じる可能性があり、国は防災対策の基本方針を盛り込む大綱の策定を急ぐ。
想定の公表にあたり、同会議は「巨大地震の発生は1千年に一度、あるいはもっと低い頻度」と指摘。そのうえで「東日本大震災の教訓を踏まえ、想定外をなくすという観点からとりまとめた。耐震化や防火対策を進めれば被害は確実に減らせる」とし、118兆円に半減できるとした試算も出した。
同会議は「南海トラフ巨大地震対策検討ワーキンググループ(WG)」(主査=河田恵昭・関西大教授)で、安倍晋三首相が会長の中央防災会議のもとで昨春から議論を進めてきた。
WGの想定によると、太平洋沿岸が最悪クラスの揺れと津波に襲われた場合、建物や工場内の設備が被災する「直接被害」が40都府県で169兆5千億円に達すると推計。大都市部の愛知県で30兆7千億円、大阪府で24兆円に達し、30メートル超の津波が押し寄せるとされる静岡県と高知県でそれぞれ19兆9千億円、10兆6千億円の被害が出るとした。沿岸部の平野に観光施設などが立ち並ぶ宮崎県も4兆8千億円になるという。
さらに、製品やサービスの提供が不可能になることで生じる損失は被災後1年間で44兆7千億円、交通網の寸断で6兆1千億円分の影響が出るとしている。
WGはインフラやライフラインの被災規模も発表。上水道は3440万人、下水道は3210万人が断水で使えず、停電も2710万軒に拡大する。中部、関西、高知、大分、宮崎の5空港が津波で浸水し、このうち高知と宮崎は半分以上水浸しになるとみている。
地震発生から1週間で、食料が9600万食、飲料水が1億4500万リットル不足し、500万人が避難所で暮らすことになると想定。震災で生じる廃棄物は東日本大震災の約12倍にあたる2億5千万トンに達するとみている。
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《解説》1千年に一度以下の発生確率だが、明日起きるかもしれない。南海トラフ巨大地震の経済被害想定を出した国の有識者会議は、こうした考えに立って最悪の数字を導き出した。最大でマグニチュード(M)8程度とされた宮城県沖でM9が起きた東日本大震災を踏まえた対応だ。
有識者会議は昨夏、先に死者32万3千人、全壊・焼失建物238万2千棟とする想定を公表した。この被害を前提に太平洋沿岸のライフラインや交通網、生産力、サービスの提供など主要な産業基盤が甚大な打撃を受けたケースを考慮。その結果、経済被害の想定は2003年に公表した81兆円の3倍近くに膨らんだ。
一方で、巨大地震で懸念される火山の噴火や原発事故の影響は盛り込まれていない。南海トラフ沿いで巨大地震が起きれば、「未知の災害」になるだろう。
「『被害ゼロ』を目指すのは現実的ではない」。有識者会議は想定公表に合わせ、巨大地震への備えのあり方を示した。対策大綱と防災戦略の策定に動き出す国には、市民や企業があきらめず、減災に取り組める環境の整備が求められる。(赤井陽介)
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〈南海トラフ〉 静岡県の駿河湾から九州東方沖まで続く深さ約4千メートルの海底のくぼみ(トラフ)。海側の岩板が陸側の岩板の下に沈み込む境界にあり、1600年代以降だけでもマグニチュード(M)7〜8級の地震が繰り返し起きている。東日本大震災後、国は巨大地震発生時の被害想定の見直しに着手。最悪クラスでM9・1、20メートル以上の津波が8都県(都は島しょ部)に押し寄せ、32万3千人の死者が出るとした想定を昨年8月にまとめた。
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朝日新聞デジタルでは、記事に加え、お住まいの地域で予想される被害を検索機能で確かめられます。各地の津波高がわかる地図や動画も。http://www.asahi.com/special/nankai_trough/
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南海トラフ地震 被害は220兆円余
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20130318/t10013282651000.html
3月18日 18時54分 NHK
東海から西の太平洋沿岸の「南海トラフ」で巨大地震と津波が起きた場合、暮らしや経済活動にどのような影響が出るのか、国は経済的な被害の想定を新たに公表しました。
最悪の場合、避難する人は40の都府県で1000万人近くに上り、被害額は国の年間予算の2倍以上に当たる220兆円余りに上るおそれがあると想定しています。
おととしの東日本大震災を受けて国は去年、南海トラフで科学的に考えられる最大の地震と津波により、最悪の場合、死者は32万3000人に上るという被害想定を公表しました。
18日は新たに経済的な被害の想定を公表し、この中でライフラインや交通機関などがどのように被災するのかや、建物や施設などの復旧にかかる費用など被害額を明らかにしました。
それによりますと、最悪の場合、断水の影響を受ける人数は、地震発生直後で39の都府県の3440万人に達し、1か月後でも30の都府県の460万人に上るとしています。
停電は、地震発生直後で31の都府県の2710万世帯に達し、1週間後で27都府県の88万世帯に上るとしています。
ライフラインが途絶えるなどして、避難所や親戚などの家に避難する人の数は地震から1週間後が最大で40の都府県の950万人、1か月後で39の都府県の880万人と避難が長期化すると想定しました。
経済的な被害のうち、施設などの復旧にかかる直接的な被害額は、住宅や工場などが148兆円余り、道路や鉄道などが20兆円余りで、40の都府県で合わせて169兆5000億円としました。
さらに、従業員や企業が被災して生産力が低下したり、物流が止まったりして、全国に波及する影響も加えると、総額で国の年間予算の2倍以上に当たる220兆円3000億円と想定しました。
国は、建物の耐震化など事前の対策を進めることで被害を減らすことができるとして、平成25年度中に新たな対策をまとめることにしています。
■被害額の内訳は
今回、国が最悪の場合の被害額として明らかにした220兆3000億円は、被災地の建物や施設などの復旧にかかる費用と、企業が被災するなどして全国に波及する経済的な損失を合わせたものです。
このうち、被災地の建物や施設などの復旧にかかる直接的な被害は、40の都府県で合わせて169兆5000億円となりました。
これは、おととしの東日本大震災の被害額のおよそ10倍、阪神・淡路大震災の17倍以上に当たります。
内訳は▽木造住宅の復旧費用が54兆5000億円、▽工場や事務所などが39兆7000億円、▽家庭用品や工場の在庫などが29兆3000億円、▽港湾や道路、鉄道施設が4兆7000億円などとなっています。
また、企業が被災するなどして全国に波及する経済的な損失額は、1年間に国内で生産された金額やサービスを示すGDP=国内総生産などから推計し、50兆8000億円となりました。
内訳は▽従業員が被災して働けなくなったり、工場などが壊れて生産できなくなったりする経済的な損失額が44兆7000億円、▽道路や鉄道の物流が、半年間止まる場合の損失額が6兆1000億円となっています。
総額で、国の年間予算の2倍以上に当たる220兆円3000億円に上るおそれがあるとしています。
■防災対策で被害減らせるという試算も
今回の被害想定には、被災地の外に住民や企業が流出する影響や、企業の財務状況が悪化することによる影響などは考慮されておらず、今回示された最悪のケースより、被害はさらに大きくなる可能性があります。
一方で防災対策で被害額を減らすことができるという試算結果も公表されました。
建物や施設の被害は耐震化率を100%にするなど対策を取れば、例えば建物などの復旧にかかる直接的な被害額の169兆5000億円が80兆円になり、半分以下に減らすことができるとしています。
さらに津波から迅速に避難して被災する従業員が少なくなれば企業の生産能力の低下による被害額を3割程度減少できるとしています。
内閣府では「今後の必要な対策を抑えるために、まずは最悪のケースで試算を公表をした。この数字にあきらめることなく、行政や企業、個人が適切な目標を設定して対策を着実に進めてほしい」と話しています。
■「備える仕組み考え直す必要」
今回の想定について、関西学院大学の室崎益輝教授は、「大変、大きな数字で、無力感や諦めの気持ちを持つ方もいるかもしれないが、そうではなく、どうすれば被害を減らせるかを考えてほしいというメッセージだと受け止めてほしい。避難所を開設し、食料を提供するといった今までの対策の延長ではうまくいかない。日頃の食糧の備蓄だけでなく、自立型の食料供給システムを作るなど、備える仕組みそのものを考え直す必要がある」と話しています。
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