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http://www.asahi.com/tech_science/articles/TKY201303170072.html
2013年3月18日9時59分 朝日新聞
【瀬川茂子】地形の隆起と沈降を繰り返す、地殻変動のサイクルは大地震の発生頻度を予測するモデルとして使われてきた。しかし、東日本大震災が起き、地震学の常識が覆された。実際はかなり複雑なことが地下で起きているようだ。近く首都圏で起きるとされる大震災はいつ起きるのか。発生予測モデルの見直しが始まった。
東日本大震災後、研究者のこれまでの予想と違う現象が起きている。巨大地震後に海岸が隆起すると予想されていたが、なかなか隆起しないのだ。
大震災が起きる前は、陸側のプレートの下に海側の太平洋プレートが沈み込むことで年1センチごとにゆっくりと地盤が沈降。ひずみがたまって巨大地震が起こると、陸側のプレートが跳ね上がって隆起すると考えられていた。
しかし、隆起は起こらなかった。それどころか牡鹿半島は1・1メートルも沈んだ。震災から2年がたち25センチ戻ったが、回復は遅い。このままだと何億年かかっても元に戻らないと国土地理院は試算する。
■データ「直近60年」の限界
いつ隆起するのか。いくつかの仮説が立てられた。一つは、東日本大震災よりもさらに大きな地震が起き、その時に隆起するという説だ。もう一つは、プレートの境界部分が跳ね上がることで隆起するのではなく、陸側のプレートの内部の断層がずれて地震が起こり、その時に隆起する可能性だ。
東京大の池田安隆准教授は、別の説を唱える。東日本大震災ですべったプレート境界域よりもさらに深い場所が今後ゆっくりずれて地殻がたわみ、沿岸部がだんだん隆起するという考え方だ。17世紀に北海道東部の太平洋沖で発生した地震でそうした現象が起きた証拠が残っているという。
そもそも、震災前の考え方自体を見直す必要があるかもしれない。海岸の沈降がはっきり観測できているのは、直近の約60年間ほどだ。巨大地震が起こるサイクルの数百年、千年単位に比べれば、ほんの一時期の現象を観測しているに過ぎない。海岸部はずっと沈降していなかったのかもしれない。
名古屋大の鷺谷威教授は「海岸の沈降は大地震が起きる前の異常現象にすぎず、それを見ていただけなのかもしれないと疑ってみることすら必要だ」と話す。
■様々な可能性を探る
マグニチュード(M)8級の巨大地震が繰り返し発生してきた関東地域。フィリピン海プレートの沈み込みに伴う大地震の発生頻度を探ろうと、これまで研究が進められてきた。最近になって、これまでの思い込みを排除して様々な可能性を探り、発生予測の精度を高めるための研究が始まっている。
これまでは、地震のタイプが2種類あり、それぞれが一定の頻度で起きるとされてきた。一つは1923年に関東大震災を起こした関東地震(大正型)で、房総半島の内房側から三浦半島にかけてプレートがずれる地震。もう一つが、1703年の元禄地震で、三浦半島から房総半島の外房側にかけて広い範囲でずれる地震だ。
これまでの研究で、房総半島では大正型が約2メートル、元禄型では約6メートル隆起するとされてきた。この繰り返しによってつくられる段丘地形から、大正型は200〜400年ごとに、元禄型は2300年ごとに地震が発生すると頻度を推定してきた。
しかし、千葉大の宮内崇裕教授らが段丘を詳しく調べたところ、内房と外房とでは大きく隆起した段丘の数や年代が異なっていた。二つのタイプに加えて、外房側だけがずれて隆起する第三のタイプの地震があると、宮内教授は推定する。
また、産業技術総合研究所の宍倉正展研究チーム長らは、房総半島の津波による堆積(たいせき)物を調査。その結果から、元禄地震の震源域は従来の想定よりも外房の沖合に延びていたと発表した。東京都はこの推定をもとに津波を想定した。
状況はさらに複雑かもしれない。宮内教授は、プレートの境界部分で起きる地震に加えて、陸側の断層がずれることによって起きる地震に着目する。二つのタイプの地震が同時に起こると、地殻変動のパターンが変わる可能性を指摘する。様々なタイプの地震が起きれば、発生頻度の予測も難しくなる。
こうした断層の中にはプレートの境界部分まで延びてつながっているものもあるらしいことがわかってきた。神奈川県の神縄・国府津―松田断層帯がそうだ。三浦半島や東京湾周辺にもこのような断層が存在する可能性もある。
限られたデータで単純化した仮説をたてるのではなく、地形に加えて津波による堆積物、地震を記した古文書などを総合して解明することが必要だ。宮内教授は「多様な地震の起こり方を考えないといけない」と話す。
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