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2012年12月21日(金)週刊現代 :現代ビジネス
人間は、特に日本人は、心配し続けるのが苦手のようだ。最近は大地震に対して油断している人も増えてきた。不気味な地震雲が、各地で観測されている。備えることが、あなたと家族の命を守る。
■阪神大震災とそっくり
10月9日の夕方、岐阜県で中空にまるで竜巻のような不気味な形状の雲が浮かんでいた。
大気イオン地震予測研究会(e-PISCO)理事長で神奈川工科大学准教授の矢田直之氏が語る。矢田氏は日本の「地震雲」研究の第一人者でもある。
「この写真はe-PISCOの会員から送られてきたものです。10月9日の17時30分頃、中央自動車道の土岐あたりを名古屋に向けて走行中に撮影された。
地震雲と呼ばれる雲の形状にはいくつも種類がありますが、これは『竜巻型』ですね。この型の地震雲が観測されることは稀で、ここまでハッキリしたものは久しぶりに見ました」
地震雲とは宏観異常現象(天災の前に発生する異常な自然現象)の一つとされている。なぜ地震雲が発生するかいくつかの仮説があるが、まだ科学的な合意は得られていない。むしろ注目すべきは、その「統計学的な有意性」だろう。
「今回の地震雲を見て、私はすぐにあの写真を思い出しました」
矢田氏が言う「あの写真」とは、1995年1月9日夕刻に撮影された、兵庫県の明石海峡大橋付近での写真だった。
2枚の写真を見比べると。巨大な寄生虫のようにも見える、竜巻状の雲の形状がソックリだ。
「言うまでもありませんが、その地震雲が観測された8日後、阪神淡路大震災が発生しました。あの時は野島断層が動いたと言われていますが、雲の位置は震源地の真上に相当する。まさに震源地からまっすぐ立ち昇るように伸びている。
濃尾地震で証明されているように、岐阜にも濃尾断層帯があります。確実なことは言えませんが、私の経験に照らすと、岐阜、愛知付近でM(マグニチュード)7クラスの直下型地震が発生する危険性があります。
震源が深ければ震度5ですみますが、万が一浅ければ、M7でも震度6強の地震が愛知・岐阜エリアを襲う可能性があるのです」
濃尾地震と言われても、いまの日本人はピンとこないかもしれない。だが明治24年(1891年)に発生したM8の震災の被害は凄まじかった。全壊家屋14万2177棟、死者7273名。震央近くでは揺れによって山の木がなぎ倒され、ハゲ山になった。
新聞記者が「ギフ、ナクナル」と第一報を打った濃尾地震は、日本史上最大の直下型地震だ。それから120年が経ち、いまや岐阜県は「地震の少ない県」と言われる。だが、その認識がそもそも間違っていると指摘するのは、立命館大学歴史都市防災研究センター教授の高橋学氏だ。
「直下型にせよプレート型にせよ、地震とは溜まったストレスが爆発することで起きるのです。長年地震が起きていないことは、危険の根拠になりこそすれ、安全の根拠にはまったくなりません。
ましてや東日本大震災という巨大な地震が起きた後ですから、日本列島全体に様々な歪みが生じている。マスコミも行政も『次は復興だ』と言いますが、私に言わせれば、列島の地震活動はまだ始まったばかり。
地震は自然現象であり、人間の勝手なタイムスケジュールで計ると、また痛い目に遭います」
■アメリカでも注目されている
地震予知が徒に不安を煽るものであってはならないのは言うまでもない。だが本誌が今回、矢田准教授の唱える「愛知・岐阜直下型地震」への警告を広く伝えるべきだと考えるのは、二つの理由がある。
一つは10月17日、日本地震学会が「確度の高い予知は現状では困難」と事実上の「白旗宣言」をしたことにある。
東日本大震災を予見できなかったことで批判され、地震学会は「予知可能派」と「不可能派」の真っ二つに分裂した。最近は東大のロバート・ゲラー教授らの「予知は研究費獲得の単なるスローガン。いまこそ清算せよ」という声に押され、不可能派が優勢になりつつあり、その結果としての白旗宣言だった。
「地震雲」に科学的根拠がないと否定していたのは、他ならぬ地震学会だ。だが矢田氏ら地震雲を研究する学者たちは「統計学的実績」を強調している。予知科学を進める学会が敗北を認めた以上、人類の「経験知の蓄積」とも言える地震雲研究が見直されてしかるべきだろう。
そしてもう一つ、本誌が地震雲に注目する理由は、その発生メカニズムが少しずつ明らかになってきたからである。
千葉大学理学部地球科学科の服部克巳教授が言う。
「'98年から'10年まで、日本上空の電離層の荒れ方と地震の起こり方の相関関係を調べたところ、M6を超える大地震の直前5日間で、電離層の電子数が有意に増加していることがわかりました」
電離層とは、簡単に言うと地球と宇宙の境目。太陽の紫外線を受け、分子や原子から電子が分離して漂っている場所だ。
ではなぜ、大地震の前に電離層が乱れるのか。
「まだ仮説段階ですが、地震の前には地面に小さなクラック(裂け目)ができ、そこからラドンガスなどの放射性物質が出る。それによって地表付近がプラスに帯電し、一方の電離層にマイナスの電子が集まると考えられます」
服部教授はそう分析し、地震雲との相関性も否定はできないと指摘する。
「ラドンなどが空気分子を電離すると、電離した物質に塵が付着してエアロゾル(煙霧体)ができ、それが雲の核になる。
震源上にそうした核が集まると、雲が形成される可能性は否定できない。それこそが地震雲ということになるでしょう」
昨年アメリカでは、ワシントン州に住む地震学者のゾンガオ・ショー氏が、地震雲に関する特許を取得して話題となった。
「私はこれまで地震雲によって50以上の大地震を予測している。日本の研究者と同じく、クラックから放出されるガスが雲形成の要因だと見ています。それは地震が起きる数時間前の場合もあれば、何ヵ月も前のこともある。私は雲が形成される過程を感知するコンピュータのモデルを考案し、それで特許を取ったんだ」(ショー氏)
■首都圏の地盤がズレている
では、話を冒頭の写真に戻そう。矢田氏が語る。
「地震雲の形状についてはまさに諸説入り乱れていますが、私は竜巻型こそが信憑性のある地震雲だと考えています。
飛行機雲だと反論する人がいますが、絶対に違う。飛行機雲が高度1万mくらいのはるか上空につくられるのに対し、地震雲は5000mくらいの高度から伸びていくのです。
通常、地震雲が観測されてから数週間以内に地震が発生する可能性が高い。実際、10月16日にも岐阜では珍しい地震が起きた。M2・9の小さな地震でしたが。愛知・岐阜エリアでは10月いっぱい、十分な注意が必要です」
もちろん、注意をしなければならないのは、愛知・岐阜エリアだけではない。「地震雲掲示板」という民間サイトには様々な画像がアップされている。
日本全国から「地震雲を見た」という人がアクセスする、まさに草の根のサイトで、もちろん取るに足らない情報やトンデモ写真も散見される。
だが精査すると気になる写真もある。関西方面から10月9日に投稿されたもので、矢田氏の持つ写真と日付が同じなもの。
10月13日には首都圏全域で見られた「帯状の地震雲」があった。秋の風物詩である「鱗雲」のようにも見えるが、密度が異常に高いと話題になった。これを地震雲の一種と言う学者もいる。
前出の高橋教授が指摘した通り、3・11で巨大なエネルギーが放出され、日本列島のあちこちにいま、ひずみが生じている。
そして、そのひずみがいつまた再び爆発するか、予想がつかない。
「稀に見るほど」クリアな地震雲が予知する愛知・岐阜直下型地震。それが、東海地震、さらに首都直下型地震の呼び水になっていく可能性は誰にも否定できないのだ。
武蔵野学院大学特任教授の島村英紀氏が言う。
「大きな内陸型(直下型)の地震が他の大地震に連動することは、大いにありうることです。地震はある場所で断層が滑って起きますが、その滑った影響は他の断層へと連鎖的に伝わっていくからです。
東日本大震災で日本列島全体、特に東半分が大きく歪んだり、捩れたりしてしまいました。具体的には、牡鹿半島の先端では5・3mも地盤がズレたし、東京近辺でも20~30・はズレたままになっている。歪みが残ったままですので、非常に地震が起こりやすい状態になっている。
ですから、どこかで大きな地震が起きると、それがトリガーとなって列島全体に連動する可能性は非常に高いと思っています。首都圏に住む人々も、M7クラスの直下型地震に備えなければなりません」
■「不意打ち」にどう備えるか
大地震の連動、それは歴史が証明していることでもある。
1891年の濃尾地震の5年後、有名な明治三陸地震(M8・5級)が起きた。その5年後に青森県東方沖地震(M7級)、さらに10年後にM8級の喜界島地震へとつながる。
では、その地震連動カタストロフの終着駅はどこだったか。もはや言うまでもない。大正12年(1923年)の相模湾を震源とした地震、つまり関東大震災(M7・9)だったのである。
今年1月、東京大学地震研究所が「M7クラスの首都直下型地震が4年以内に70%の確率で発生する」と発表したのは記憶に新しい。それまで政府が発表していた「30年以内に70%」をはるかに上回る、衝撃的な予測だった。
だが日本地震学会と東大地震研の関係の深さを考えれば、日本地震学会が予知に白旗を掲げてしまったいま、東大地震研が頼りになるかといえば、とてもそうは考えられない。
大地震予知の新たな道について、前出の服部教授はこう語る。
「これは後からわかったことですが、3・11の直前30時間ほど、電離層の電子数が高い状態が続いていました。電子数は紫外線の影響を受けるので、夜間は少なくなるのが普通ですが、あの時は夜間も減らなかったということ。これはかなり特異な現象です。
電離層による予測は太陽活動の影響が大きく、数値がマスクされている可能性が否定できない。とはいえ、10月2日に宮城県沖でM6クラスの地震があった時も、その前にやはり断続的に十数時間電子密度が増加していました。
地震と電離層異常の因果関係は未解明ですが、統計解析から相関関係があることはほぼ確実です。電離層の電子数が増えたら必ず地震が起きる、とは言えないけれど、『M6クラスの地震が起きる可能性が上がっている』という警告はできると思います」
電離層の荒れと地震雲にも相関関係が認められることは、先ほど述べた。東大を中心とした地震学者たちが慎重な姿勢に転じたいまだからこそ、この新たな知見に注目するべきではないのか。
前出の島村氏が、最後にこう警告する。
「首都圏を含め、日本列島どこでも『不意打ち』がありうる。不意打ちに普段から備えているかどうかで、結果はまるで違います。お上は『東海地震は予知できる』と言っていたが、それも白紙になった。地震対策は、『いつ起きてもおかしくない』と一人一人が認識することから始まるのです」
「週刊現代」2012年11月3日号より
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