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南海トラフ巨大地震を上回る「最悪の地震」とは何か
建築&住宅ジャーナリスト 細野透
2012年 10月3日
国の存亡にかかわる巨大地震
「国の存亡にかかわる巨大地震」として、強く警戒されているのが、南海トラフの3連動地震である。
中央防災会議は2012年7月19日、「南海トラフ巨大地震対策」に関する中間報告を公表。駿河湾から九州沖に延びる海底溝を震源域とする南海トラフ地震は、東海・東南海・南海の3連動になった場合、30メートルを超える巨大津波と、震度7という壊滅的な強震動をもたらすとした。
その想定「震源域」を示す。2003年の想定震源域だった黄色エリアは、今回、黒色エリアへと、一気に拡大した。
http://www.nikkeibp.co.jp/article/sj/20120928/324929/chart1.jpg
次に想定「波源域」を示す。2003年の想定波源域だった黄色エリアは、今回、黒色エリアおよび赤色エリアに拡大した。波源域とは、津波の発生につながる地殻の動きが起きる領域のことだ。
続いて、中央防災会議は8月29日、「南海トラフ巨大地震の被害想定」に関する第1次報告を公表。最悪のケースでは死者約32万人、倒壊・焼失建物が約239万棟、約1000平方キロが浸水するとした。
東京大学地震研究所・纐纈一起教授の指摘
東京大学地震研究所・纐纈一起教授の指摘
この震源モデルを、中央防災会議は、「あらゆる可能性を考慮した最大クラスの地震・津波」とした。また、新聞・テレビなどは、「科学的に考えられる最大のモデル」と報じた。
しかし、日本建築学会構造委員会が、2012年7月31日に開催したシンポジウム、「増大する地震動レベルと今後の耐震設計」において、東京大学地震研究所の纐纈一起(こうけつ・かずき)教授は、意外な発言をした。
「南海トラフ巨大地震の震源モデルを、完璧に科学的な最大モデルとするのは明らかに間違い」と指摘したのである。
纐纈教授が、科学的でないとした根拠は何だろう。話は、東日本大震災の反省から始まる。
「地震動や津波の予測は、震源モデルの構築と、地震動および津波の計算という、ふたつの部分に分けられる。前者は主に地震学などいわゆる科学が担当する部分であり、後者は主に、地震工学や津波工学などの工学が担当する」
「後者(地震工学、津波工学)は精度が向上したが、前者(地震学)は依然として、大きな曖昧さを伴うのが現状である」
琉球海溝まで断層破壊が及ぶとの説
琉球海溝まで断層破壊が及ぶとの説
「東日本大震災では、地震そのものが想定外であったので、震源モデルを構築するという作業自体が行われなかった。つまり、震源モデルの精度がゼロだったので、地震動および津波予測の精度もゼロであった」
続いて、南海トラフ巨大地震に言及する。
「モデル西端の九州・パラオ海嶺付近でプレートが厚くなっているのは科学的な事実だが、そこで超巨大地震の断層破壊が止まるということに関しては、何らかの科学的根拠が挙げられているわけではない」
「それどころか、九州・パラオ海嶺を突き抜けて、琉球海溝まで断層破壊が及ぶとの説まで現れている。この最大モデルを考慮すれば、中央防災会議の説で100%大丈夫と考えるのは適切ではない」
科学的な「最悪の地震」とは何か?
科学的な「最悪の地震」とは何か?
琉球海溝まで断層破壊が及ぶという説を提唱したのは、名古屋大学大学院環境学研究科の古本宗充教授(固体地球物理学)である。
東日本大震災が発生する4年前、「地震予知連絡会会報第78巻(2007年8月)」に、古本教授は、「東海から琉球にかけての超巨大地震の可能性」と題する論文を発表している。
以下の図は、同論文から抽出した。想定震源域は九州や沖縄を越え、台湾にまで迫ろうとしている。
http://www.nikkeibp.co.jp/article/sj/20120928/324929/chart3.jpg
古本教授は、「少なくとも御前崎から喜界島にかけての、距離1000kmを越える領域を大きく変位させるような、M9クラスの西日本超巨大地震が、平均して約1700年の間隔で発生した可能性がある」と推測する。
同論文を重視しなければならないのは、2007年時点において、「地震予知連絡会会報」という権威のあるメディアで、「日本付近で言えば、ここで取り上げる西南日本から琉球にかけての地域はもちろん、東北日本弧や千島弧、場合によっては伊豆─小笠原弧ですら対象とすべき」としていた事実である。すなわち、東日本大震災の発生可能性を指摘していた、とも受け取れる。
このように、纐纈教授と古本教授によれば、中央防災会議の南海トラフ巨大地震でさえ、「科学的な最悪の地震」ではない。「最悪の地震」が発生した場合には、断層破壊は宮崎県東南沖の九州・パラオ海嶺を突き抜けて、奄美大島東側の喜界島に及び、さらには台湾近くにまで達するかもしれないのである。
地震動と津波は、どこまで増大するのか。まだ、その上限は見えない。
【参考資料】
1. 中央防災会議「南海トラフ巨大地震の被害想定について─第1次報告(平成24年8月29日)」
2.中央防災会議「南海トラフ巨大地震対策について─中間報告(平成24年7月19日)」
3.中央防災会議「南海トラフの巨大地震モデル検討会─中間とりまとめ(平成23年12月27日)」
4.日本建築学会構造委員会振動運営委員会地震荷重小委員会編「シンポジウム─増大する地震動レベルと今後の耐震設計(3.11を踏まえた意識調査を基に)─2012年7月31日」─「地震動評価の今後の方向性に関する私の意見(東京大学地震研究所教授、纐纈一起)」
5.「地震予知連絡会会報第78巻(2007年8月)」─「東海から琉球にかけての超巨大地震の可能性(名古屋大学大学院環境学研究科、古本宗充)」
細野透(ほそのとおる)
建築&住宅ジャーナリスト。建築専門誌「日経アーキテクチュア」編集長などを経て、2006年からフリージャーナリストとして活動。東京大学大学院博士課程(建築学専攻)修了、工学博士、一級建築士。細野透編集事務所代表。大学と大学院で建築の構造を学んだ。師である構造家の坪井善勝・東大名誉教授(故人)は、建築家の丹下健三氏(故人)と組んで、代々木オリンピックスタジアム、東京カテドラル聖マリア大聖堂を設計した。ジャーナリストになってからは、方向音痴にめげずに、1000作品以上の建築&住宅を現地取材。インタビューした建築&住宅専門家は3500人を超える。日本建築学会学会賞選考委員会、建築計画委員会、現代建築評価小委員会、リスクコミュニケーション手法に関するWG委員。住宅Webマガジン「日経ネット・リビングスタイル」編集アドバイザー。ブログ「建築雑誌オールレビュー」主宰。
皆様からお寄せいただいたご意見
ミクロ地震学では、地震の仕組みを断面図で紙面方向の上を地表、左右方向の力で説明しているが、マクロ地震学では、紙面方向に直交する力を追加考慮して連鎖地震を説明できると思う。
例えば「日本海溝で沈み込む太平洋プレートに引きずられて北米プレートの宮城県沖、未確認&福島県沖地震域(アスペリティー)が歪んで臨界状態に達しても南北方向からの加圧力で動けず、何らかの原因で紙面方向と直交する一方の加圧力が減じた時に、地震は発生する。」と説明すべきである。即ち東日本大震災では、ハイチ地震の影響?が約1年後に、岩手県沖から南方向に地震域群を押し続けていた力が減少した時に、宮城県沖地震域が東若干北方向に動き、北からの加圧力が減じた日本海溝側の巨大な未確認地震域も東若干北方向に動き、続いて北に隙間ができた福島県沖地震域が動いたと思う。大震災当時の岩手県が北方向に動いたGPSがあれば、これが証明される。(笠井高文)(2012年10月03日 21:30)
次は政治家の仕事ですよね。
「これをすれば絶対に安全だ」という安全神話を振りまいては困る。そうではなくて「絶対に安全な、はない。これが現状の最善だからこれで行く」と正直に言った上で国民を説得することが政治家の仕事。根拠のない安心を安売りすのではなく不可避な真実を受入れるよう演説をすべきだろう。
国民も過保護消費者のように無い物ねだりをすることは慎んで、大人の態度をとりましょう。(UTP)(2012年10月03日 14:54)
http://www.nikkeibp.co.jp/article/sj/20120928/324929/?bpnet
#地震予測インフレ
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