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※内閣府の防災マップをもとに、編集部が作成(○cmはその地域で予測される降灰量)
3年で富士山 は噴火する そのときに備えたほうがいい
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/33293
2012年09月01日(土)週刊現代 :現代ビジネス
●浜岡原発は止まっていても危ない
●飛行機、新幹線、高速道路は完全ストップ
●日本は中央で分断される
●3週間前に噴火は予知される
●半径100km圏内に黒い雨が降る
富士山大噴火、その現実的な危機から、日本人は目を背けてきた。震災以上の被害をもたらすこの大災害を直視することなくして、日本の明日はないということに、早く気づかねばならない。
■溶岩は誰も止められない
〈地震が起こって、雷鳴が聞こえた。家の外に出てみると、まるで雪が降っているようだったが、よく見るとそれは灰であった。西南の方を見てみると、黒い雲が発生して、雷が光っている。白い灰が大地を埋め尽くし、草木もみな白くなっている。昼なのにとても暗く、明かりをともさねばならないほどだ〉
1707年、後に「宝永の大噴火」と呼ばれる富士山の噴火を江戸から見ていた新井白石は、自叙伝『折りたく柴の記』にて、そのときの様子をこのように記している。
日本の象徴たる富士の山からマグマが吹き上がり、約100kmも離れた江戸が火山灰で覆い尽くされる。まさに悪夢のような光景だっただろう。
その悪夢が、再び現実となる日が近づいている。富士山はまもなく噴火する―。火山調査に携わる多くの研究者らが、口々にそう警告しはじめたのだ。
長年にわたって富士山の調査を続けてきた、琉球大学名誉教授の木村政昭氏は「3年以内には富士山が噴火する」と断言する。
「火山の噴火は、その周辺で小さな地震活動が頻発した時期から、35年プラスマイナス4年後に発生しています。富士山周辺の場合、噴火の兆候を示す地震が、1976年に頻繁に発生しました。そこから考えると、35年後の2011年からプラスマイナス4年のうちに富士山が噴火する可能性が高いと考えています。
さらに、東日本大震災の影響で、富士山や浅間山など、房総沖に近い火山は強い圧力を受けています。この圧力が富士山内のマグマを押し上げるおそれがあり、噴火の危険性はますます高まっている。つまり、いまがもっとも危険な時期。2015年までには噴火が起こるのではないかと予測しています」
できれば信じたくない話である。だが今年6月、静岡・山梨・神奈川の3県が、「富士山火山防災対策協議会」を発足させ、広域での避難計画作成に着手したように、富士山の噴火を「いまそこにある危機」と捉えなければならないのだ。
「西暦500年以降の歴史を見ると、過去2回、富士山の活動期があった。そして宝永の噴火から200年以上の噦沈黙期器を経て、いま富士山は第3の活動期に入っているのです」(木村氏)
では、富士山が噴火した場合、いったいどのぐらいの規模の被害が発生するのか。以下、最悪の事態を想定した上で、少しでも被害を軽減する方法を考えたい。
まず、溶岩による被害が考えられる。
900度を超える溶岩は、人間が歩く程度のスピードで噴火口からドロドロと流れ出す。1週間ほど流れ続けると、溶岩は富士宮市に達することになる。平安時代に起きた貞観大噴火では、数ヵ月ほど溶岩が流れ続けたと見られているが、もしこの規模の溶岩流が発生すれば、富士山の南に位置する東名高速道路、さらには東海道新幹線にまで溶岩流が達する可能性がある。日本の大動脈である東名高速・東海道新幹線が溶岩に呑み込まれれば、日本は文字通り東西に「分断」されてしまうことになるのだ。
千葉大学の津久井雅志教授は、溶岩だけでなく、最悪の場合噦山体崩壊器が起こるケースも想定しておく必要がある、と指摘する。
「山体崩壊とは、噴火にともなって山の3分の1から4分の1が崩れることです。約2900年前に富士山で起こった岩屑なだれのときには、今の御殿場の市街地あたりを呑み込み、三島周辺まで土砂や岩石が流れ込みました」
山体崩壊が起こった場合、土砂や岩石が流れるスピードは時速100kmにも達することがあるという。
「直径数百mもあるような岩塊が高速で落下してくる。崩れはじめてから逃げるのでは遅いのです。もし今、過去と同じ規模の山体崩壊が起これば、富士山周辺の自治体に10万人単位で被害がでるおそれがあります」(津久井教授)
悲惨な話だが、富士山周辺の自治体は溶岩流と山体崩壊によって壊滅的な被害を受けるのだ。
直接的な被害だけではない。浅間山や駒ヶ岳も噴火による山体崩壊で大きく姿を変えたが、もし富士山が、山体崩壊によって見るも無残な姿に変わったとしたら、日本人は「心の支え」を失ったような、絶望的な気分を味わうのではないだろうか。
■実はかなりヤバイ火山灰
溶岩流は、首都圏までは届かない。では、首都圏は安全かと言えばそうではない。噴火後にまき散らされる火山灰が、首都圏を大混乱に陥れる。立命館大学歴史都市防災研究センターの高橋学教授が説明する。
「噴火によるもっとも大きな被害は、火山灰によってもたらされます。『灰』といっても、ゴミを焼却したときにでるような灰ではなく、マグマが粉砕され微粒子となった、いわば薄いガラスの破片です。眼に入れば角膜を、鼻に入れば粘膜を傷つけるおそれがあるし、体内に入れば肺などに傷ができたりする。非常にやっかいなものです」
宝永大噴火では、約7億m3、東京ドーム560杯分の火山灰が放出され、偏西風に乗って東へ東へと流れ、数週間にわたって降り注いだ。
もし宝永と同じ規模の噴火が起こった場合、いったいどれほどの量の「ガラスの破片」が降ってくるのか。
内閣府は'04年に、富士山の火山灰がどこまで飛び、どれくらい降り積もるのかを想定した「ハザードマップ」を作成したが、そこでは静岡と山梨の県境周辺には30cm、東京から千葉一帯には2~10cm程度灰が降る可能性がある、と指摘されている。関東一帯は、火山灰に覆われてしまうのだ。
これだけの火山灰が降ると、外出は困難。独立行政法人・防災科学技術研究所は「火山灰が降り続くと、数時間から数日間、外出できなくなる可能性がある」と指摘している。
火山灰は空気中の水分を吸収して降ってくる。大量の火山灰が降り注ぐさまは、さながら「黒い雨」のように映るだろう。そんな黒い雨を窓越しに眺めながら、数日間も室内でじっと待機している状態を想像できるだろうか。
火山灰が社会インフラに与える被害も甚大だ。まず、首都圏の交通機能が完全に麻痺してしまう。
「火山灰は雪よりも重く、水に濡れて固まったり、スリップの原因になるので、道路に数cm積もるだけで車が走れなくなってしまいます。また、宝永大噴火の時には上空20km以上まで噴煙が吹きあがったとも言われていますから、その周辺は航空機が飛べなくなってしまう。航空機のエンジンが外の空気と一緒に火山灰を吸い込むと、灰が中で固まって、タービンが回らなくなり、エンジンが停止するなどの事故が生じてしまうためです」(津久井教授)
'10年にアイスランドの火山が大噴火した際には、欧州各国の空港が閉鎖され、全体で10万便以上が欠航する異常事態となり、欧州経済の停滞に拍車をかける要因となった。もし富士山が噴火した場合、火山灰の影響で、日本全土で一日500便以上が欠航を余儀なくされる、と予測するデータもある。
さらに、鉄道も動かなくなる。首都圏に張り巡らされた複雑な鉄道網は、火山灰によって大きな被害を受ける。鉄道ジャーナリストの梅原淳氏が説明する。
「降灰によって視界不良が続けば、列車の運行を見合わせなければならないこともあるでしょう。降灰量が多ければ、火山灰が線路に積もって固まり、電車を走らせることができなくなるかもしれません。
さらに心配なのが地下鉄です。地下鉄は吸排気口を通じて外部からの空気を取り込みますが、構内にも火山灰が入ってきた場合、電車が動かなくなることが考えられる。灰の除去も含めたその後の処置をどう行うのか、ほとんど対策が練られていない状態です」
交通インフラの麻痺に続いて、生活インフラの麻痺が起こる。多量の火山灰が水源地に降り注いだ場合、給水ができなくなる可能性があるのだ。内閣府は、最悪の場合、火山灰によって約190万~230万人が水道を利用できない状態が発生する、と想定している。
外出はできない。交通網は麻痺。そして水道は使えない―。降灰が始まれば、日常生活を送ることはほぼ不可能になる。首都圏のインフラは火山灰に対してあまりに脆弱なのだ。
では、火山灰によって具体的にどれぐらいの損害が生じるのか。内閣府は'04年に、富士山噴火の降灰による被害の総額を約2兆5000億円と推計している。これだけでも驚異的な数字だが、この推計はかなり甘いもの、と言わざるを得ない。東京大学名誉教授の荒牧重雄氏が話す。
「この推計値は'04年に作られたものですが、当時は時間的にも予算的にも制約が多く、精緻な予測ができたとは言いがたい。たとえば観光産業への風評被害がどの程度になるのかなど、手がつけられなかった課題も少なくないのです。さらに時間と予算をかけて、より詳しいシミュレーションを行う必要があります」
■大停電も起こる
荒牧氏は特に、電子機器への影響がどの程度及ぶのかがあまり検討されていないことを明かすが、火山灰によって電子機器はどのような影響を受けるのか。前出・津久井教授が説明する。
「まず、火山灰は小さいもので数(マイクロメートル)単位のものがありますから、窓や扉を閉めていても、室内に入ってくることを完全には防げません。そして、パソコンなどの電子機器は静電気を帯びているので、室内に入ってきた灰を吸い寄せてしまうのです」
灰を内部に取り込んだ電子機器は、故障や動作不良を起こしてしまう。家庭内や勤め先にある電子機器が一斉に故障することも考えられるのだ。
さらに、降灰によって通信網にも被害が及ぶ可能性を、前出の高橋教授が指摘する。
「火山灰が降っても、携帯電話は使えるんじゃないかと思っている人がいるかもしれませんが、それは間違いです。携帯電話の中継システムは、高層ビルなどに備え付けられていますが、この中継を行う機器に濡れた火山灰が付着すれば、システムが機能不全を起こして携帯電話も使用不能になってしまいます」
先述した'04年の損害推計は、まだネットや携帯が爆発的に普及する前に作成されたものだ。もしもいま、電子機器を含めて損害額を算出すれば、その数字は2兆4000億円の何倍、あるいは何十倍にも膨らむだろう。
ただ、それだけで済むならむしろ被害は少ないほうだ。降灰によって、首都圏が大停電に見舞われる可能性があるからだ。空気中の水を吸った火山灰は電気を通してしまい、電線に降れば高圧線が漏電・ショートして、停電を起こしてしまうのだ。実際、桜島の噴火ではたった1ʘの降灰で停電が起こった。この停電を未然に防ぐのは、ほぼ不可能とされている。
また、産業技術総合研究所の山元孝広主幹研究員は、高圧線のショートよりも、火山灰によってエネルギー供給源そのものが停止してしまう可能性を危惧している。
「もっとも恐ろしい事態が、東京湾周辺に位置する火力発電所が、降灰によって停止してしまうことです。ガスタービン式の火力発電は、外からの空気を取り込むことで燃料を燃やして発電するのですが、取り込んだ空気に火山灰が混じっていると、タービンの中に灰が入り込んで、タービンに故障が生じてしまう。ジェット機が飛べなくなるのと同じ原理です」
東日本大震災以降、東京電力管内の原発はすべて停止しており、電力供給のほとんどを火力発電が担っている。原発事故のリスクは格段に低下したが、反対に噴火による停電リスクが急激に高まった、と山元氏は指摘する。
「火力発電が停止すれば、それに代わってエネルギーを供給する手段がない。火山灰を前に為す術なし、となるのです」(山元氏)
首都圏で大停電が起これば、その被害は「甚大」の一言ではすまされない。未曾有のパニックが首都圏で発生することになるだろう。
「まず、金融機関のATMが使えなくなりますので、企業はもちろん、一般市民の経済活動も停滞してしまいます。停電によって証券取引も不可能になり、日本経済が大打撃を受けることになる。たったの一秒で大きく値が動く現在の証券市場において、何日も取引が不可能な状況が続けば、どれだけの損害となるかわからない」(前出・高橋教授)
停電に備えて各金融機関は非常用の電源を用意しているが、「非常用電源が持つのはせいぜい数時間。噴火による停電が起これば、その復旧には1ヵ月、少なくとも一週間はかかるため、ほとんど意味をなさない」と高橋教授は続ける。
「金融機関だけをとっても、これほどの被害が予測されるのです。防衛の問題も深刻ですし、身近な問題として病院などでは手術できなくなり、生命維持装置も停止する。信号も動かないので、交通も大混乱となります。降灰が予想される地域に首都機能が集中している日本は、驚くほど噴火や災害に弱いということを再度認識しなければ、本当の危機は見えてきません」
■原発事故の悪夢が再び
ここで、もうひとつの大きな懸念について論じておきたい。はたして原発は大丈夫なのか―。
富士山にもっとも近い原発は、御前崎市にある浜岡原発で、その距離は約90km。溶岩がここまで迫ってくることは考えられないが、「風向き次第では御前崎まで火山灰が降ることはあるかもしれない」(前出・津久井教授)という。
前述の通り、火山灰が積もればその地域に正常な送電ができなくなる。旧日本原子力研究所の出身で、技術評論家の桜井淳氏は「原発に外部からの電気を供給できなくなる、つまり原発が電源を喪失する恐れがある」と指摘する。
「現在、浜岡原発は停止中ですが、各号機の炉心には、まだ800体近い燃料棒が残っているし、原子炉建屋の最上階には使用済み核燃料の貯蔵プールがある。これらは運転を停止した後もポンプを動かし、冷却を続けなければなりません」
ポンプを動かすための電気は通常、外部から供給されている。停電によって外部電源の供給が止まれば、冷却も止まってしまうことになる。
「原発には内部電源として非常用ディーゼル発電機が用意されていますが、これが正常に作動しないような事態となれば、燃料を冷やせなくなる。最悪の場合メルトダウンを起こす恐れもあります」
さらに、もし浜岡原発周辺に火山灰が積もるような事態になると「交通障害によって浜岡原発の運転・管理をする要員が現場に向かえなくなる事態も考えられ、危機的な状況が続くことになる」と桜井氏は指摘する。
あくまでもこれは「悪い条件」が重なったときに起こる最悪の事態の話だ。しかし、想定外のことが起こることは、福島第一原発事故で証明されている。
「そもそも、原発は津波と地震の対策こそ取っていますが、火山の噴火による影響は想定していません。富士山だけでなく、日本には多くの火山があるにもかかわらず、です」(桜井氏)
未曾有の被害をもたらす富士山の噴火。何の備えもない状態で発生すれば、日本中がパニックに陥るのは間違いない。
被害を軽減するために、少しでも早く噴火の時期を予測することはできないのか。
噴火を正確に予測する技術は、十全とは言い難い。だが地震予知と比べれば、富士山噴火はまだ予知できる可能性がある。現在富士山はGPS、地震計、傾斜計、空振計などによって、24時間体制で監視されている。データに異常があればすぐに対応できる態勢で、「これだけの監視網があれば噴火の数日から数週間前には予測できるのではないか」(前出・津久井教授)と、予知に期待する声もある。
重要なことは、富士山噴火のリスクを受け止め、いますぐにでも備えを始めることだ。防災システム研究所の山村武彦氏は、「噴火がいつ起こる、と分かってから行動するのでは遅い」と指摘する。
■地震とは違う備えが必要
「水や食料、防塵マスクなどは必需品となりますが、東日本大震災が発生した直後、関東・東北だけでなく、関西圏でも『買い占め』が起きたのはご承知の通り。『3週間後に富士山が噴火する』と予告されれば、全国的に品不足になることが考えられます。
近い将来に噴火が起こると分かっている以上、現実から目をそらしてはいけない。降灰が予想される地域に住む人は、最悪の事態を考え、備えておく必要があるのです」(山村氏)
では、噴火に備えてどのようなものを用意しておくべきなのか。前出・防災科学技術研究所が、降灰によって数日間外出ができなくなることを前提として作成した『降灰への備え』などを参考にすると、やはり火山灰特有の対策が必要になることがわかる。
まず、降灰が続く中でどうしても外出しなければならない場合を考えて、目や口に火山灰が入らないようにするために、防塵マスクと防護めがねを用意しておかねばならない。コンタクトを付けている人は、眼に火山灰が入ると角膜剥離を起こすので、コンタクトをはずして生活することを想定しておく必要がある。
食料と水の備蓄も必須である。降灰によって水が汚染される可能性を指摘したが、それだけではなく火山灰の除去作業には大量の水が必要で、首都圏で水不足が続く可能性がある。一人一日4Lで、最低3日分を家族の人数分。できれば1週間分の飲用水は確保しておきたい。
火山灰を除去するための清掃用具、ショベルも必要だ。さらに、噴火が起これば、「ドアや窓を完全に閉め、隙間風が入る窓にはテープを張る」「火山灰に弱い電子機器を保護するために、室内のパソコンや電化製品にラップでカバーをする」などの処置を迅速に行わなければならない。
火山灰が積もれば道路は使用できなくなるが、灰の除去作業が終わったあとには、車についた火山灰を洗い流そうとガソリンスタンドに長蛇の列ができる。給油は困難になるので、備蓄型のガソリンも用意しておきたい。
噴火によって建物などが受ける被害は、地震保険によって補償の対象となる。「噴火の前後でも、地震保険には加入することは可能です」(ファイナンシャルプランナー・清水香氏)とのことだから、最悪の場合を想定して、富士山からの距離を考慮して、地震保険への加入も検討したほうがいいかもしれない。
日本に甚大な被害をもたらす富士山大噴火まで、残された時間はあまりにも少ない。少しでもその被害を軽減するためには、一人一人がこの現実を直視し、これに備えるよりほかないのだ。
「週刊現代」2012年8月18・25日号より
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