http://www.asyura2.com/12/jisin18/msg/467.html
Tweet |
それにしても最近、暑すぎやしないか?
猛暑を科学し、「日本熱帯化説」の真贋を見極める
それにしても暑い――。最近、「日本の夏が暑すぎる」と感じている人は多いのではないだろうか。オフィス街ではビジネスマンやOLが、滝のような汗を拭いながら炎天下を歩く姿が目に付く。熱中症で倒れる高齢者も急増中だ。なぜ日本の夏は、かくも暑くなってしまったのだろうか。「日本が熱帯化しているのでは」という声もあるが、だとしたらそれは温暖化だけが原因なのか。そして、猛暑は社会にどんな変化をもたらしているのか。気象データや専門家の声を踏まえながら、徹底検証してみよう。(取材・文/岡 徳之、協力/プレスラボ)
熱中症患者が1週間で9000人
もはや生活に支障が出るレベル
拭いても拭いても滝のように流れ落ちる汗、頭の芯をえぐる容赦ない直射日光。暑い。とにかく暑い――。
最近、「夏が暑すぎる」と感じている人は多いのではないだろうか。オフィス街ではビジネスマンやOLが、苦々しい顔をして炎天下を歩く姿が目に付く。「夏バテでどうも調子が上がらない」という人も少なくなかろう。
今年も日本の夏は暑い。先月末には、気象庁から全国に熱中症対策を促す「高温注意情報」が出され、全国約930の観測点のうち、今季最多の123観測点で35℃以上の猛暑日、全観測点の8割にあたる744地点で30℃以上の真夏日を観測した。
とりわけ「猛暑の常襲地域」を見ると、岐阜県多治見市で38.5℃、群馬県館林市で37.9℃、埼玉県熊谷市では37.8℃を記録。東京都心も34.2℃となり、少し外に出ただけで何もしなくても汗が噴き出してくるほど。そこにはもはや、古きよき日本の夏の風情はない。ここまでくると、ビジネスや日常生活に支障をきたすレベルだ。米国を襲っている大干ばつも心配だが、何より自分の身が心配になる。
連日続く猛暑のなか、熱中症による搬送者数は急増している。総務省消防庁の発表によると、7月23日〜7月29日までに救急搬送された熱中症患者は9055人。7月30日〜8月5日は6891人となり、そのうち10人が死亡したという。
特に気をつけなければいけないのは高齢者で、搬送者の半数以上を占める。もちろん、成人も2454人(7月30日〜8月5日)と多いため、若くて体力に自信があるからと言って油断するのは禁物だ。
次のページ>> なぜ体感温度とズレる? 8月の平均気温はわずか+0.9℃
それにしても、なぜ日本の夏はかくも暑くなってしまったのだろうか。筆者がまだ子どもだった20年ほど前は、今と比べてもっと過ごしやすかった気もする。確かに、晴天の日に直接日光を受けると汗はかくが、今ほど体感気温は高くなく、何よりこれほど体力を消耗することは少なかったように思う。
日本における猛暑は、ここ数年の間に常態化している感がある。世間には、「地球温暖化のせいで、日本の気候が熱帯に近づいているのでは」といった声もあるが、俗説の信憑性はいまいちよくわからない。そして、原因がよくわからないまま、我々は次の年の夏も、そのまた次の年の夏も猛暑に苦しめられることを覚悟しながら生きている。いい加減、このへんでその「正体」を突き止めてみたいものだ。
以前と比べて、日本の夏は本当に変わってしまったのだろうか。だとすれば、それは何が原因なのか。そして、猛暑は社会にどんな影響をもたらしているのか。気象データや専門家の声を踏まえながら、徹底検証してみたい。
8月の平均気温の変化は0.9℃
なぜ体感する暑さとズレるのか?
まず、実際のところ日本の夏はどれだけ暑くなっているのだろうか。公のデータを見てみよう。
気象庁が発表した『ヒートアイランド監視報告(平成23年)』によると、この100年において年平均気温は全国主要都市で1.5℃、東京で3.2℃高くなったという。夏本番の8月に限ると、これは全国で0.9℃、東京で1.7℃の上昇となる。同じく、8月の日最高気温は全国で0.4℃、東京で0.8℃、日最低気温は全国で1.4℃、東京で2.5℃上昇している。
こうしたデータを見ると、日本の夏季の気温はやはりゆるやかな上昇トレンドを辿っていると言えよう。8月の平均気温変化が全国主要都市でわずか+0.9℃に過ぎないという事実には少し違和感を覚えるが、平均気温が1℃近く上がっただけでも猛暑日が格段に増えると言われるため、そのインパクトは大きい。
しかし、我々が体感している暑さはこんなものではない。日本の夏の暑さには、実際の気温だけが原因とは言えない「過ごしにくさ」のようなものを感じないだろうか。
これについて、「都市化の影響により、1990年代から都市部の気候が変化しています」と語るのは、民間の気象会社「ウェザーマップ」の森朗気象予報士。
次のページ>> 高層ビル乱立で都市化が加速 風を失った東京の過ごしにくさ
「都市化が進むと、当然、アスファルトが増えてきます。土で覆われた地面は、水蒸気で空気を冷やし気温上昇を抑えてくれますが、都市部の地面はアスファルトに覆われているため、水蒸気がすぐに乾いてしまい、ずっと暑いまま。だから熱が逃げにくいんです。また、真っ平らな地面ではなく、アスファルトの地面は起伏が大きいので、昼間の照り返しの光やビルから発せられる熱が放射し合って、熱が空に逃げていきません。その上、高いビルに遮られて風通しが悪い。さらに、エアコンの室外機などにより、人工的に熱気が出ていることも一因だと言えます」(森氏)
高層ビルの乱立で都市化が加速
風を失った東京の「過ごしにくさ」
確かに、取材で外出している信号待ちなどでも、上からの光だけでなく、下からのまぶしさ、じりじりくる暑さを筆者は感じる。さらに、森氏はこうも指摘する。
「夏の過ごしにくさには、風も関係しているんじゃないかと見ています」
都市化が進んだ最たる地域と言えば、東京23区をはじめとする首都圏。高度経済成長期が始まった1960年代から、バブルがはじけた1990年代頃までにかけ、新宿の中心部のみならず湾岸部にも次々と高層ビルが建設されていった。東京の昼間の熱い空気は、以前は海風に冷やされ、気温もある程度抑えられていたが、今では高層ビルに遮られ、湾岸からの海風が吹き込まなくなってきているのだ。
「1ヵ月平均の風速を見ると、1960年代〜80年代まで東京の8月は3〜4m程度だったのが、1992年〜93年ぐらいから2m台になっています」(森氏)
これはちょっとした気象に関するトリビアだが、2007年に東京管区気象台の露場が大手町から皇居外苑北の丸公園に移された。その背景には、大手町付近の市街地は高層の建物が密集して立ち並び、気象観測に必要な環境が確保できないという理由があったという。
北の丸公園は森林公園として使用する目的から、建物などの整備が制限されていて、気象観測に必要な環境を将来長く維持できる適切な場所であると判断されたのである。まさにこのこと自体が、東京に風が吹かなくなったことを表している。
次のページ>> ボーナスは減っても需要は旺盛 「巣ごもり消費」にならない理由
前出のデータから類推するに、地方都市の状況も似たようなものだろう。日本の夏が異常に暑くなっているのは、気候変動よりもむしろ都市構造の変化によるところが大きそうだ。「ヒートアイランド」は目新しい現象ではなく、以前から指摘されてきたものだが、足もとではそれが想像以上に深刻化しているということなのだろう。
つまり、温暖化の影響だけで日本が熱帯化しているとは、必ずしも言い切れない。だとすれば、人の取り組みによって猛暑を軽減できる可能性もあるはずだ。
ボーナスは減っても需要は旺盛
「巣ごもり消費」にならない理由
いずれにせよ、人々を疲弊させる猛暑はネガティブなイメージが強い。でも、日本人にとって本当にデメリットばかりかと言われれば、そんなこともない。猛暑が大きな経済効果を生み出し、社会にポジティブな影響をもたらすことは、よく知られている。
2010年7月30日に発表された三井住友アセットマネジメントのマーケットレポートでは、「マーケット関係者の間では、『7月〜9月の夏場に、東京・大阪の気温が1℃上昇しただけで、国内の個人消費を4000〜5000億円程度押し上げる(0.3〜0.5%程度のGDP押上げ効果)』といった見方もある」と紹介されている。
しかし、足もとでその経済効果は期待できるのだろうか。長引く不況や欧州危機に端を発する円高、株安などで、日本経済の行方はかつてなく不透明だ。大規模なリストラを発表する企業も増え、消費者のサイフのヒモはきつくなっている印象がある。
事実、今夏のボーナスは低調だ。経団連が5月31日に行なった発表によると、大手企業80社の今夏のボーナスは、平均で前年同期より3.54%少ない77万2780円となり、3年ぶりに減少したという。減少幅としては、過去3番目の大きさだ。東日本大震災やタイの洪水被害などで、企業業績が低迷したことによる影響が響いている。
だが一方で、MM総研が行なった、今夏のボーナスによる購買意欲についての調査によると、「昨夏と比べ上がった」という回答が14.0%と、昨冬の13.0%からやや増加している。また、「下がった」という回答は28.4%と、昨冬の31.7%に比べてやや減少する結果になった。
次のページ>> 暑いのに電気が使えない! 節電商品が経済効果の顔に
この2つの調査からわかるのは、ボーナスの減少とは裏腹に、人々の消費意欲には改善傾向がはっきり現れているということだ。震災後の自粛ムードが解きほぐされてきたこともあるのかもしれないが、猛暑効果はやはり小さくないと言えるだろう。
こうも暑いと冷房の効いた部屋でずっと巣ごもりたくなるが、今夏の消費者の動向はどうなっているのだろうか。内訳を詳しく見てみよう。
MM総研の調査では、夏のボーナスの使い途で目立って増加したのは、「国内旅行」「ITデジタル家電」「遊園地・娯楽施設」「健康・美容家電」。特に「国内旅行」は昨夏の36.0%から今夏は42.6%と、6.6ポイント上昇している。
昨夏は東日本大震災の発生から日が浅く、国内旅行の需要が一時的に落ち込んだが、今夏はそうした影響がほぼなくなったことが、購入意向の増加につながったと見られる。また、「遊園地・娯楽施設」も3.2ポイント増加の11.6%となっているため、「巣ごもり消費」の傾向は少ないようだ。外出ニーズが増えると、猛暑グッズの定番である日傘やUVケア商品も堅調な売り上げを続けそうだ。
さらに「ITデジタル家電」では、特にデジタルカメラの購入意向の増加率が大きくなっているが、「国内旅行の需要が回復し、カメラを持ち歩くニーズが増えたことがその一因になっているのでは」と同社は分析する。
暑いのに思う存分電気が使えない!
経済効果の顔になった節電商品
これに対して、「衣類・服飾品」は昨夏比0.1ポイント減の38.0%、「キッチン家電・生活家電」は昨夏比1.4ポイント減の13.0%と低調だ。特に意外なのは「生活家電」。これまで猛暑による経済効果の恩恵を受けてきた花形商品が伸び悩んでいる背景には、エコポイント終了により、買い替え需要が一巡した影響がありそうだ。
その代わりに、猛暑効果の「新たな顔」となったのが、昨年に引き続き好調な「節電商品」である。「この夏、節電商品を購入する予定がある」という人に購入予定の商品を質問したところ、「クールビズ衣類」が48.7%と最も高く、次いで「扇風機」が38.3%、「LED電球」が26.6%となった。
次のページ>> 暑がりの人には朗報か? じわり広まる「地球寒冷化説」
これは当然、原発事故による電力不足への懸念からきているトレンドだ。昨夏に節電商品を購入した人は31.7%、今年購入する予定の人は28.7%と若干減少はしているものの、新たな消費動向として注目される。エアコンをはじめ、電力ニーズに拍車がかかる一方で、電力不足が懸念されている状況は、節電商品の売れ行きをさらにアップさせる可能性もある。
とはいえこの暑さは、日本経済のためになっても、自分の健康のためにはなりそうもない。何とかならないのか。実は、日本で「人工的」とも言える猛暑が問題化する一方、世界ではこれまでの「地球温暖化説」に対して、「地球寒冷化説」も唱えられ始めている。つまり、気候そのものが涼しくなるというわけだ。
暑がりの人には朗報かも?
じわりと広まる「地球寒冷化説」
今年4月19日、国立天文台などの国際研究チームによると、世界最高峰の解像度を誇る最新鋭の太陽観測衛星「ひので」が、従来とは異なる太陽の活動=太陽の磁場の反転を世界で初めて確認したと発表した。この現象は、約170年前と約370年前にも起きたと見られており、それぞれその約10年後には太陽の黒点の数が減って、地球が寒冷化していたという。国際研究チームは、「今回観測された現象も、約10年後の地球の寒冷化など、異常気象につながる可能性がある」としている。
前述の寒冷化の時期は、別名「小氷河期」「プチ氷河期」と呼ばれるものだ。日本ではちょうど江戸時代に当たり、享保、天明、天保期などに大飢饉を招いたと言われる。今回観測された黒点の減少と気温変化との因果関係はまだ不明だが、世界レベルで見れば、ここ数年間の間に極端に寒い冬が訪れるようになった地域も多く、すでに何らかの影響が出始めているのかもしれない。これはある意味、暑がりの人にとって朗報と言えるのではないだろうか。
だが、いくら涼しくなると言っても、飢饉を招くほどの寒冷化はご免だ。また、「寒冷化説」は現段階で地球温暖化ほど研究が進んでいるわけではなく、信憑性に疑問を唱える声も多い。我々がまず考えるべきは、この夏の暑さをどう乗り切るかだ。
「家にずっといると、冷房の効いた部屋で体を冷やしすぎたり、外の気温がわからずに外出してしまい、急な体温変化で体調を崩すこともあるので、注意が必要です」(森氏)。
冷房などで人工的に体温を下げながら、たまには風の当たる場所で外の気温を感じ、自然に体温調節することをお勧めしたい。
しかし、それにしても暑い――。
質問1 あなたは今年の猛暑に耐えられる?
耐えられる 70
耐えられない
どちらとも言えない
http://diamond.jp/articles/-/22918/votes
この記事を読んだ人はこんな記事も読んでいます(表示まで20秒程度時間がかかります。)
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。