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(回答先: 第3回 太陽嵐で大規模停電が起きるわけ 投稿者 MR 日時 2012 年 6 月 27 日 10:56:22)
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第4回 太陽活動は活発化? それとも沈静化?
情報通信研究機構・宇宙環境インフォマティクス研究室【4】
2012年6月28日 木曜日 川端 裕人
太陽活動の周期について、ぼくが理解していることをまとめておく。
(写真:藤谷清美)
地球が巨大な磁石に見立てられるように、太陽も巨大な磁石だといえる。
だいたい北極と南極の近くに磁極があるわけだが、地球の場合数十万年の単位で、南北の磁極が入れ替わる。磁石のSとNは、SouthとNorthからとったものなので、それがひっくり返ると、なんだかややこしい。数十万年単位のできごとだから、我々が生きている間は「北極だから方位磁針のN(North)の方向」と言えるのが救いだ。(とはいえ、方位磁針のN極が北極方向を指すということは、北極の磁極はS極であり、やはりややこしい)。
しかし、太陽の場合はもっと周期が短い。平均すると11年周期なのである。
長妻さんは言う。
「短いときには9年ぐらいで終りますし、逆に今回のように12〜13年かかることもあって、そんなにきれいな周期というわけではないんですね。黒点を日々観測していったら、どうも大体11年ごとに増えたり減ったりっていうのがあって、極端なときにはもう全然黒点が見えなかった時期もあるわけです。しかもこの黒点数の変化が太陽活動が活発になったり、静かになったりするのに対応すると分かっているわけです」
(写真:藤谷清美)
なお来年5月、太陽活動が活発化し、ピークを迎えるという予想は、必ずしも、同じ時期に強烈な太陽活動があり、人工衛星や地上のインフラにダメージを与える、ということを意味するわけではなさそうだ。
「ピークだからといって、絶対に強い活動が起きるというわけではないんですね。太陽フレアの回数は確かに増えてはくるんですけども、非常に強いフレアは、むしろピークよりもちょっと手前とか後とか、あるいは極端なときは、活動レベルが低くなって谷底に近いときに起きることもあるので、非常に強いフレアの発生に関してはあまり積極的な因果関係はないんです」とのこと。
さらに……ぼくが長妻さんを訪ねる直前、東京都三鷹市の国立天文台のチームが、日本の太陽観測衛星「ひので」で捉えた最近の太陽活動の動向が、「来年にピークが来る」という従来の予測と反するかもしれないという発表を行った。
2012年6月号特集「太陽嵐の衝撃」
本誌では宇宙天気予報の対象である太陽嵐の最前線をレポートしています。フォトギャラリーもあるWebでの記事の紹介はこちら。ぜひあわせてご覧ください。
太陽はおおむね11年周期で、南北の磁極が入れ替わるわけだが、今回はなぜか事情が違いそうだという。国立天文台によると、この12年間、太陽の北極がマイナス極・南極がプラス極(さすがにS極、N極とは呼ばないらしい)となっている状態だったのだが、北極の極性だけが反転し、北極も南極もプラス極という状態になりそうだという。南北の極で、同じプラス極になるわけだから、太陽内部で帳尻を合わせて、マイナス極が出来ているはずで、非常に複雑な磁場構造になると予測されている。
そして、なによりも話題になったのが、このような状態が、過去の観測記録の中で、太陽活動が低下し、同時に地球も寒冷化した時期と酷似しているのではないか、という指摘だ。具体的には、1645年から1715年にかけて黒点の数が極端に少なかったマウンダー極小期。例の11年周期は維持しつつも、もっと大きな50年から100年以上の周期の波があって、その中で、太陽活動が極端に低下する時期がある。その際には、地球上も寒冷化するらしい。
来年以降、太陽活動が活発化し、人工衛星はもちろん、地上のインフラにまで被害を与えるかもしれないという従来の予測。それに反して、太陽活動が低下し、それどころか、地球が寒冷になるかもしれないという予測。正反対の予測が目の前に2つあるのだ。
これについて長妻さんはどう考えるだろうか。
「1つ確実に言えることは、今の太陽活動は、今まで我々が経験してきたものと比べてかなり異質になっているということです。今までだと、平均11年ごとに太陽の磁場の極性が反転するのを繰り返していました。磁場の動きからすると22年周期の変化をしていたわけです。今回は北だけ反転したということで、国立天文台のチームは、磁石がひっくり返るのではなくて、プラス極が両方とも外側を向いていて、中にマイナス極があるような、磁石が2個できる状態が今、太陽にできつつあるのではないかと主張しているんですよね。本当にそうなるかは、まだ今の段階ではわかりません」
太陽の大規模磁場の2008年の様子と近未来予想。右が複雑な磁場構造を持つ近未来の予測。(提供:国立天文台/JAXA)
宇宙天気予報を担う長妻さんにしてみると、これから先、どのようになっていくかひたすら日々、人工衛星や地上の観測機器を用いて目を凝らしていくしかないようだ。
「1年か、あるいはそれ以上、観測していって、どちらのシナリオがもっともらしいか、分かってくると思います。今までになかった太陽活動の側面が見られるということで、研究としても面白い部分がありますね。ただ、もし本当にマウンダー極小期のような状態になってしまうと、地球の周りの宇宙環境が静かになるわけですから、もちろん、被害が出るような大きな活動も困るんですけど、静かすぎるのも研究にとっては面白みが少ないかもしれないな、と」
宇宙の天気予報をしつつ、「宇宙天気」そのものの研究者である長妻さんは、このあたりで非常に複雑そうな表情を見せたのだった。
太陽活動が活発化するのか沈静化するのかは、1年か、あるいはそれ以上観測しないとわからないという。今後の観測から目が離せない(写真:藤谷清美)
つづく
長妻 努(ながつま・つとむ)
1967年、東京都生まれ。情報通信研究機構 電磁波計測研究所 宇宙環境インフォマティクス研究室研究マネージャー。博士(理学)。1995年、東北大学大学院理学研究科博士課程修了。大学でオーロラを研究したのち、太陽活動とその影響に興味を移す。現在は放射線帯の予報モデルや、人工衛星がいた場所の宇宙環境を再現する数値予報モデルをはじめ、宇宙天気予報の研究に従事している。『太陽からの光と風 -意外と知らない?太陽と地球の関係 (知りたい!サイエンス)』(技術評論社)、『総説 宇宙天気』(京都大学学術出版会)などの共著がある。
(このコラムは、ナショナル ジオグラフィック日本版公式サイトに掲載した記事を再掲載したものです)
研究室に行ってみた
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川端 裕人(かわばた・ひろと)
1964年、兵庫県明石市生まれ。千葉県千葉市育ち。文筆家。小説作品に、少年たちの川をめぐる物語『川の名前』(ハヤカワ文庫JA)、感染症制圧の10日間を描いた小説『エピデミック』(角川文庫)、数学史上最大の難問に挑む少年少女を描いたファンタジー『算数宇宙の冒険・アリスメトリック!』(実業之日本社文庫)など。ノンフィクションに、自身の体験を元にした『PTA再活用論 ──悩ましき現実を超えて』(中公新書クラレ)、アメリカの動物園をめぐる『動物園にできること』(文春文庫)など。サッカー小説『銀河のワールドカップ』『風のダンデライオン──銀河のワールドカップ・ガールズ』(ともに集英社文庫)は、4月よりNHK総合で「銀河へキックオフ」としてアニメ化される。
ブログ「リヴァイアさん、日々のわざ」。ツイッターアカウント@Rsider
以前連載していた『川端裕人のゆるゆるで回す「明日の学校」体験記』はこちら
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