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これは何の前兆なのか「異常気象」 壊れ始めた日本列島
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/32702
2012年06月06日(水)週刊現代 :現代ビジネス
長雨と冷夏 竜巻と雹 爆弾低気圧とゲリラ豪雨1m長の巨大な肉食生物が都会に大量発生、切っても切っても死なずに増殖していく
どこかヘンな近頃の空模様。快晴だと思った途端、暗くなり、雷が鳴り、強風とともに雨や雹が落ちてくる。もしそれが通り過ぎた後、日本が壊れるほどの「青天の霹靂」が襲って来るとしたら---。
■雨上がりのエイリアン
ある朝、自宅の玄関を出た男性は、何かひものようなものを踏みつけた。
「足元で、1mはゆうにある細長くて黄色く光った奇妙な物体がうねっていました。よくよく見ると、頭らしき部分が三角形をしていて、どうやら生き物らしい。踏みつけた拍子に、胴体は真っ二つになってしまったんですが、二つともクネクネ動いていて、正直、気味が悪かったです。妻に聞いたら、長さは違えど、自宅周辺で、このところ何回も見ているようです」
男性が目の当たりにしたこの生物、名前をオオミスジコウガイビルという。ヒルと銘打たれているものの、種は異なり、人間の腸に寄生するサナダムシの仲間である。扇状の頭にではなく、腹の部分にある口で、好物のミミズやナメクジを捕食する肉食生物だ。
体長が1m以上に育つこともあり、梅雨の時期になると繁殖して地に這い出てくるため、雨上がりのエイリアン≠ニ呼ぶ人もいる。
東京医大名誉教授の牧野尚哉氏が解説する。
「普通は湿った土壌を好む目立たない外来種なんですが、ここ最近、日本の大都市でも目にするようになりました。天敵はあまりおらず、体を切られても死にません。植木鉢の底についての移動も見られますが、仮に車に轢かれたとしても、タイヤの溝についた切れ端がそのまま移動して、別の場所で再生します。生存環境が悪くなると、自分で身体を切り離し、数個体に生まれ変わったりもする。
なぜ、急激に増え出したのかは不明です。大きな視点で考えれば、温暖化の影響がないとも言い切れないのですが」
人体への直接的被害はないものの、この時期に、コウガイビルは都内で大量発生、地面やマンションの壁を這い、人々を驚かせている。
最近の豪雨あるいは長雨のおかげで、湿った環境を好むこの肉食動物が幅を利かせることになった。果たして、彼らは単に大雨が降ったせいで増えただけなのか、それ以上の「何か」が起こる前兆なのか---。
今年に入り、例年にも増して日本列島の気象は狂っている。記憶に新しいのは5月6日に茨城県つくば市などを襲い、50人以上の死傷者を出した竜巻だろう。積乱雲が巨大に発達したこの日、宮城県仙台市でも激しい雷雨と雹に見舞われ、Jリーグの試合が一時中断された。
東京の調布市では6日に加えて18日にも局地的に雹が降り注ぎ、農作物に穴が空くなどの被害があった。
「急激に発達する爆弾低気圧、つまりスーパー低気圧が、今回の雹や竜巻を起こしています。私が気象学を研究し始めた50年前には極めて珍しい低気圧だったのに、最近は頻繁に発生している」(『異常気象学入門』の著作がある増田善信氏)
梅雨にはまだ一足早い時期に、各地で豪雨が被害をもたらし、寒暖の変動も激しい、不安定な日々が続いている。この日本列島は自然の猛威によって壊され始めているのだ。
■気候の激甚化
「地球温暖化」の議論とは対照的に、地球は寒冷化に向かっているとのデータが、国立天文台などの国際研究チームから発表された。今夏は冷夏になるという見通しもある中、この長期的な寒冷化もまた、異常気象の原因となっている。
神奈川大学名誉教授の桜井邦朋氏は、太陽の活動の不活性化に注目している。
「'00年頃まで太陽の活動が活発化してきたのに、それがピタッと止まってしまった。歴史的に太陽の活動が静かになり、地球が寒冷化すると、異常気象が頻発するといわれている。それに伴い、冷たい雨が長く降り続く気候へと変わっていくのではないでしょうか。
たとえば平安時代は、太陽は活発化して気候は穏やかだった。その証拠に当時の絵巻物を見ても人々は薄着だし、部屋のふすまも閉めていない。その反対に徳川家光の時代、地球は寒冷化し、不作が続いた。
当時、『こんなマズイものは食べられない』と食事に文句を言った家光が、乳母の春日局から『庶民が飢えているんだから、将軍であるあなたがワガママを言うな』と諭されたそうです」
桜井氏によれば、寒冷化に伴う冷夏と長雨によってもっとも被害を受けるのは農業であり、食糧危機が訪れるという。たとえば品種改良が間に合わず、より寒い北海道のコメは全滅する。
さらに、世界中で食糧が不足、日本への穀物輸出がストップするため、自給率の低い日本では、全土で飢饉が起きかねないと警鐘を鳴らしている。
他方、「気候の激甚化」が異常気象の特徴であり、それによって水害が起きると語るのは、広島大学准教授の長沼毅氏である。
「毎年のように、『100年に一度の豪雨』と謳われる雨が降っていますが、そもそも100年に一度の大雨が毎年降るなんて異常ですよね。
竜巻に遭ったつくば市は昔から積乱雲が発達しやすい地域なのですが、今回はスーパーセル(巨大積乱雲)にまで発達してしまった。最近の天気予報が当たらないのも、局所的なゲリラ豪雨のように東京23区でそれぞれ違った降り方をするようになったからです。昔の雨は広く薄く降りましたが、今の雨はドカンとまとまって降る。いずれも気候の激甚化によるものと考えられます」
これまでは雨が土に吸い込まれて岩盤に浸透し、地下水となって蓄えられていたのに、現在の雨は瞬間的に強く降るために、雨を吸い込むはずの表土自身が、川や海に押し流されてしまうようになる。
すると、一気に水嵩が増し、堤防の決壊や洪水といった水害の原因となる。同時に、地下水が涸れることにつながり、必然的に川もやせ細っていくという。
「地下水が涵養されなくなったため、日本中の川が涸れ始めているんです。たとえば、高知の四万十川はひどく、増水しても『沈下橋』が沈まなくなっている。
また日本各地で土砂災害が続いていることと、地下水の枯渇とは、決して無関係ではない。地下水の枯渇によって、国内のあちこちで地盤沈下が起こるのではないかと心配しています。東京の街も地下水圧が支えていますから、高層ビルがどんどん沈んでいってしまう」(長沼氏)
■爆弾低気圧
気候そのものが、緩やかにではなく短期的に移り変わる原因を、地球規模の気候変動から捉えようとしているのは、帝京大学教授の三上岳彦氏だ。
「気候には暑い、寒いだけでなく、不安定な時期と安定した時期があります。ここ30年間、地球の気温は上昇し続けており、今は気候が大きく変動する時期に入っている。
毎年、気温の乱高下を繰り返しているので、竜巻や雹などが起こりやすくなるんです。温暖化や寒冷化など、人類はここまでの変動を経験したことがないから、今後、どんな異常気象が起きても不思議ではありません」
実際、「異常気象」がもたらすのは、大雨や雹、竜巻だけではない。大地震や大噴火といった、本来、気象とは関係がないと思われていた災害の遠因ともなりうるのである。
「異常気象が大地震を引き起こす、あるいは大地震が異常気象を引き起こす可能性がある。もちろん、低気圧だけで大地震は起こりませんが、強い低気圧が張り出すと、地面を押さえつけている気圧の力が大きく緩みますから、地震が誘発されてしまうのです。
また逆に、大地震に伴う地軸の揺れがスーパー低気圧を発生させることで、様々な異常気象が次々と引き起こされる」(琉球大学名誉教授の木村政昭氏)
低気圧によって地震が誘発されると、それによる地軸の揺れや地殻が割れる際に発生した電磁波が、今度は大気に影響を与えて、異常気象を引き起こす。
要するに、無関係であるはずの、「天」と「地」の災害が一体となり、その循環が止まらず、「災害のスパイラル」が起きるというのである。そうなればたまったものではない。
しかも、スーパー低気圧がスパイラルの最後の引き金を引いてしまうような「噴火手前」、「地震手前」の場所が日本列島には数多くある。
「たとえば噴火ストレスが相当溜まっている富士山では、噴火口内のマグマが上昇しているのは間違いない。昨年の東日本大震災後には富士山周辺で、水噴火によると思われる湧き水が大量に出てきています。
869年に三陸沖で起きた貞観地震はM9以上とも推測されますが、富士山爆発の5年後に起きている。それとの類似を考えれば、活動が活発化している富士山が噴火すれば、それに連動して大地震が起きる恐れがある」(木村氏)
東海大学地震予知研究センター長の長尾年恭氏によれば、次に起こると予想される東海地震は、東南海、南海との3連動以上の超巨大地震である。その場合、噴火から地震の流れとは逆に、地震に富士山が連動して噴火する恐れもある。
天災の同時多発こそが、現在の前兆から憂慮される一番の事態なのである。
■小さな異常
過去、様々な天変地異に晒されてきた日本。歴史を振り返れば、想像を絶する大災害も起きている。
「1585年に起きた天正大地震は、東日本大震災以上の規模をもつ直下型地震でした。このとき現在の岐阜県大野郡白川村にあった帰雲城と城下町が、山崩れと雪崩に遭い、一夜にして影も形もなくなった。約1500人が生き埋めになったので日本のポンペイ≠ニ言われています。都心をこんな大地震が直撃すれば、高層ビル群が一夜にしてなくなるかもしれません」(歴史家で作家の加来耕三氏)
いつどこに来るのかはわからないが、確実にやってくるのが天変地異。壊れ始めた日本列島に住む我々は、防災対策をより一層とるかもしれない。
ただし、皮肉なことに、対策をとればとるほど、天変地異を誘発するというケースもある。たとえば、免震型だから大丈夫と超高層に建てられたビルにより、海風がさえぎられた都心部の気温が上昇することもひとつの典型だろう。
歴史学者で立命館大学教授の山崎有恒氏が語る。
「川の氾濫を防ごうとセメントで堤防を築くと、土砂が詰まって川底が上がり、氾濫が起きやすくなる。堤防をつくっても、川底は上がる。人間が防災をやればやるほど、自然の脅威が増すという皮肉な現実があるんです。
異常気象は、人間が様々な形で自然に手を加えたことの帰結かもしれません。防災の考えが生まれたのは、明治になってからで、江戸期以前の日本人は自然災害をあるがままに受け入れようとしました。たとえば空海は富士山噴火が起こったとき、近くを旅していた。慌てふためく人々の姿を直に見て、彼は自然を受け入れ、魂と導きの修養をするようになったんです」
身に降りかかる天災とどう向き合うべきか。革新的技術ではなく、そんな精神的態度こそが実は何よりの防災手段≠ノつながるのかもしれない。
前出の長沼氏も、我々は自然の脅威に対してもっと率直であるべきだと語る。
「異常気象を考えたとき、私は地球の奥底の部分でもっと大きな変化が起きているような気がするんです。人類の文明でこんなに急激な温暖化は経験がなかった。次の氷期が始まったら、200~300年程度では終わらない。もしかしたら今は、10万年続く氷期の入り口なのかもしれません。
いつどんな激甚災害が起きてもおかしくないのですから、もっと小心者、臆病者になるべきです。あたかも雨は降らないと思う日にも傘を持って外出するように、3・11以降の私たちは考えを改めるべきなのではないでしょうか」
あの肉食生物からどんな兆候を感じ取り、我々は何を考えるべきなのか。
何気ない「小さな異常」が、甚大なカタストロフの先触れなのかもしれない。
「週刊現代」2012年6月9日号より
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