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被害想定の大幅見直しが続く全国の自治体で減災対策が急務[大地震]
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/32492
2012年06月03日(日)毎日フォーラム
文部科学省、内閣府、そして東京都が、首都直下地震や南海トラフ地震の震度分布、津波高、被害などの想定を相次いで公表した。都内の広範囲で震度7の地震が発生し死者は9700人、高知県黒潮町には満潮時34・4mの津波が押し寄せる---。「あらゆる可能性を想定した最大クラス」(内閣府)とするが、各地の自治体は衝撃を受け、早急な対応を求められている。
まず3月末、首都直下地震の想定見直しを進めてきた文科省の研究チームが、東京湾北部でマグニチュード(M)7・3の「東京湾北部地震」が発生した時の揺れの強さを試算した震度分布図を明らかにした。
それによると、新たな調査結果に基づいて、東京湾北部に東西約63キロ、南北約31キロの震源域を設定。このエリアで、地震が起きる地域を(1)東京・千葉県境付近(2)千葉市周辺(3)東京23区西部---として震度分布を計算した。
震度7の領域が最も広いのは(1)で、江戸川区、江東区、品川区、大田区、川崎市など広範囲で震度7の揺れが予想されるという。(2)の場合も隅田川河口付近が震度7、(3)でも隅田川河口付近に加えて川崎市なども震度7となった。
都防災会議が発表した被害想定は、さらに深刻だ。
東京湾北部を震源とするマグニチュード(M)7・3の首都直下地震が発生した場合、都内の建物の約1割の30万棟が全壊・焼失し、9700人が死亡すると推定。帰宅困難者は517万人に及び、自宅が被災した避難者は339万人にも上ると見立てた。
想定した地震のパターンは(1)東京湾北部(2)多摩直下(M7・3)(3)海溝型の元禄型関東地震(M8・2)(4)地表近くの活断層が動く立川断層帯地震(M7・4)---の四つ。発生時の気象条件を複数想定し、「冬の午後6時、風速毎秒8m」が最も被害が大きかった。
建物被害は23区東部や大田区など木造住宅密集地域を中心に、11万6200棟が倒壊し、18万8100棟が火災で焼失。死者9700人の内訳は建物倒壊などによる圧死が5600人、火災が4100人。負傷者は14万7600人(うち重傷2万1900人)で、死傷者の95%が23区内に集中した。
この被害想定通りだとすると、政治・経済・行政の中枢が大打撃を受け、被災者、帰宅困難者にも十分な救援・救護の手が届かないことが予想される。
西日本の太平洋沖に延びる海溝「南海トラフ」で発生する巨大地震についても、内閣府の有識者検討会(座長・阿部勝征東京大名誉教授)が想定される最大の震度分布と津波高を発表した。
南海トラフの巨大地震は近い将来の発生が懸念され、今回は最新の科学的知見や過去の津波の痕跡調査などから、考えられる最大級の被害を検討した。
その結果、津波高は各地で想定の2〜3倍、東京の島しょ部では5倍を超えた。満潮時には黒潮町の34・4mを最大に、東京の島しょ部から静岡、愛知、三重、徳島、高知の計6都県23市町村で20mを超えると予測。中部電力浜岡原発(静岡県御前崎市)付近は21mで、建設中の防波壁を3m上回った。震源の西端を宮崎県沖の日向灘まで延ばした結果、愛媛、大分、宮崎、鹿児島では約3倍の13m〜17mの津波が襲来。
震度6強以上は21府県395市町村で、国土の約7%の2万8000平方キロに及ぶ。震度7は静岡、三重、高知など10県153市町村計7000平方キロに及んだ。非常に強い揺れが3分近く続く地域も多いという。
こうした発表を受けた各地の自治体は、対策の練り直しなどに頭を痛めている。
黒潮町などに30m超の津波が押し寄せるとされた高知県。尾崎正直知事は記者会見で、「極めて厳しい結果で、冷静に受け止めていくことが重要。発生頻度が低くてもこういうことが起こる可能性があることを、率直に受け止めて南海地震対策に生かしていかなければならない」と険しい表情で語った。国に対しては、財政的な支援措置が必要となることを見据えて「南海トラフ巨大地震に対応していくための特別立法が必要と国に訴えたい」と語った。
また、尾崎知事は4月6日、首相官邸で野田佳彦首相と会い、地下シェルター計画を紹介。30m超の津波避難タワーを建設するのは現実的に難しく、高台やビルのない沿岸部は「地下シェルター」が有効と判断。「サブマリン構想」として、シェルター内に酸素供給装置や自家発電装置を設置。約200人を収容するイメージという。県の担当者は「産学官連携の検討会を発足させ、1年以内には結論を出したい」としている。
一方、静岡県下田市では、これまで想定されていた津波の高さは約7mだったが、今回の想定で25・3mと3倍以上になった。
同市は4月11日、市新庁舎建設庁内検討委員会を開き、新庁舎を海抜53mの市立敷根公園内に移転し建設することを正式に決めた。同市は庁舎建て替えを巡り、現在地か高台移転かで議論が行われていた。
現在の市庁舎は伊豆急下田駅近くの市街地にあり海岸から直線距離で約700m、海抜2・5m。1854年の安政地震で市街地は大津波の被害を受け、122人が溺死したとの記録が残る。
築55年の市庁舎は老朽化から当初、現地点での建て替えが検討されていた。しかし、東日本大震災や内閣府の想定を受け、石井直樹市長が敷根地域への移転を表明。石井市長は毎日新聞の取材に対し、「(今回の)想定を重く受け止めている。高層庁舎を現在地に建てても、津波で被害を受けては、住民保護や復興に十全な働きができない」と移転方針を固めた理由を話す。市職員も「現庁舎は市街地に近く便利と思うが、庁舎が被害にあっては初動体制に影響が出る」と理解を示している。
こうした対応、対策が各地で進むが、政府は防災、減災のための経費として3次補正と12年度予算に1兆円超の「全国防災対策費」を計上。ただし、学校や役場などの予防的移転に対する補助制度はない。
高知県や和歌山県など太平洋沿岸9県の知事らは3月29日、中川正春防災担当相に対策強化のため「南海トラフ巨大地震対策特別措置法(仮称)」の制定を求めた。徳島県の飯泉嘉門知事は取材に「浸水域にある公共施設をどう移動させるか。補助制度を含めた新しい体系の法律が必要ではないか」と話す。
「想定外」の災害を二度と起こさないため、起こりうる最大の被害を想定することは必要だが、ショッキングなデータが独り歩きするだけでは市民は困惑する。自治体の対策を画餅にしないためにも、公共施設の予防的な移転に対する国による助成制度の本格的な検討が求められる。
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