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首都直下震度7:どうすれば? 地下鉄「魔の水路」に パニック避け地上へ
http://mainichi.jp/select/news/20120517mog00m040010000c.html
2012年05月17日 毎日新聞
もしも地下鉄の中で「震度7」の地震に遭ったら−−。広大な海抜ゼロメートル地帯を抱える首都東京の地下空間に、網の目のように張り巡らされた地下鉄。巨大地震や津波、そして液状化現象に耐えられるのかを検証した。【小国綾子】
東日本大震災では仙台空港アクセス線の地下トンネルが津波で水没した。津波が東京を襲うと地下鉄はどうなるのか。ヒントとなるのが、国の中央防災会議の2009年のシミュレーションだ。
「200年に1度の大雨で荒川土手が東京都北区で決壊」と設定したところ、地下鉄の地上出入り口に高さ1メートルの止水板を設置しても、結果は「東京都市部の22路線130駅、総延長約200キロのうち、最大で17路線81駅、約121キロで改札階まで水没する」。海抜ゼロメートル地帯だけでなく、地表に水が到達しない霞ケ関駅や六本木駅も浸水することが分かった。地下の線路網が“水路”となって被害を拡大させるからだ。シミュレーションに関わった関西大社会安全学部長、河田恵昭(よしあき)教授は「震災対策で最も遅れているのが地下鉄の水害対策」と断言する。
東京都は4月に見直した首都直下地震の被害想定で、元禄型関東地震(海溝型)による津波を、東京湾平均海面を基準に最大2・61メートルと想定した。東京湾の防潮堤の高さは3・5メートル以上あるが、河田教授は「防潮堤や海岸護岸が巨大地震で壊れたり、液状化現象で沈下する可能性がある。河口にある水門や鉄扉が計画通り閉められなければ津波が川を遡上(そじょう)する恐れもあり、09年のシミュレーションが現実のものになる。津波は大雨による浸水などより破壊力があり、さらに被害が拡大する」と警鐘を鳴らす。
怖いのは津波による水だけではない。「東京は液状化しやすく、地下水位も高い。地震による液状化や潮位上昇による地下水位上昇で、市街地の地表から水が噴き出し、氾濫することはあり得る。震災直後は大丈夫だったが翌日には地下鉄水没、などという事態も起こり得るのです」
鉄道各社は対策を講じてはいる。東京メトロはこれまで、地上に開いた約950カ所中約900カ所の換気口に、遠隔操作で閉鎖でき、水深2メートルに耐える浸水防止機を設置した。うち102カ所については水深6メートルにも耐える新規格に更新中だ。「駅出入り口に設置する止水板(70センチ)の高さを上げたり、駅の出入り口自体をかさ上げするなど、さらなる対策を講じている最中」(広報部)という。河田教授も「東京の地下鉄のトンネル内には約10カ所の防水ゲートがあり、水没までの一定時間はかせげる」と評価する。
ただし、巨大地震後の混乱の中、地下鉄職員が客の避難誘導から止水板設置まで短時間に行えるのか。また非常用電源自体が被災し停電した場合、浸水防止機を手動で閉められるのか。河田教授は「難しいだろう。大都市は津波による市街地氾濫を一度も経験していない。だから備えが遅れた」という。
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地下鉄が地震で本格的な被害を受けた世界初の例は1995年の阪神大震災だった。神戸高速鉄道の大開(だいかい)駅で柱が多数壊れ、天井が崩落。真上を走る国道28号も陥没した。鉄道各社はこのケースを教訓に耐震補強工事を実施。東京メトロも柱を中心に耐震補強工事をほぼ終えた。
同社広報部は、首都直下地震の最大震度が「6強」から「7」へ引き上げられたことについて「震度7を想定した補強工事だったので大丈夫」、液状化対策は「03年に工事を完了した」と説明する。
一般的に、地下構造物は地盤と一緒に揺れるため、振幅が増加しやすい地上構造物と比べ、地震に強いとされる。しかし、東工大の川島一彦教授(土木工学)は「地下鉄の弱点は『変わり目』の部分」と指摘する。一つは「地盤の変わり目」である。「硬軟など地盤の性質の変わる場所では、地下構造物に異なる方向の力が加わりやすく、構造物も変形、破損を受けやすい」
もう一つは「構造条件の変わり目」、つまり地下鉄施設と地下街や商業ビルなどの接合部だ。川島教授は「建設時期や工法、管理方法が違うため、接合部の安全性は確保されにくい」と話し、接合部が地震で破損した場合、そこから地下水や液状化した土砂が流れ込む危険性を挙げる。
実際、防災科学技術研究所兵庫耐震工学研究センターが2月末、強度の低いボルトを使用し、接合部の設計・施工が著しく悪い地下施設を再現した大型模型で加震実験を行ったところ、ボルトがはじけ飛び、構造物同士の接合部に隙間(すきま)から砂が入り込む現象が確認されたという。
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逃げる側からいえば、地下鉄で怖いのは停電だ。しかし各社とも非常用電源を持っており、いきなり真っ暗にはならない、という。東京メトロの場合、非常用電源は車両で1時間、駅で4時間持つ。
地下鉄が駅間で緊急停止した場合、「乗務員の案内まで勝手に車両から出ない」が鉄則。東京メトロ丸ノ内線や銀座線は線路脇に600ボルトの電圧のかかる別のレールがあり、触れると大変危険だ。また「お客様が線路に降りたら、その方々の安全確認まで電車を動かせず、かえって運転再開が遅れます」(同社広報部)。
災害救援に詳しい日本セイフティー災害研究所の伊永(これなが)勉所長は「一番怖いのはパニック」と指摘する。特に「浸水はわずかであっても地上への階段を上るのを困難にする。素早く地上に上がる必要があるが、だからといって地上への出口に人々が殺到し、折り重なり倒れる方が危険」。
伊永所長によると、停電を想定した暗闇の地下街実験では、出口の方向を大声で知らせると皆が我先にと殺到し、かえって避難が遅れることが証明されているという。「むしろ周囲の2、3人に声を掛け、一緒に手を取り合い逃げるほうがパニックを避けられ、結果的に集団全員が早く地下から出られるのです」
伊永所長が提案するのは、避難情報を明記した地図の掲示だ。「多くの人が知らない駅で降ろされることになる。避難所の場所、地上に津波を逃れる高いビルはあるか、トイレの有無、火事の可能性などの情報を盛り込んだ地図を、地下鉄のすべての駅に掲示すべきでしょう」
とにかく地上へ。ただしパニックは避ける。この2大原則を忘れず、通勤・通学途中の地下鉄駅について調べておいたほうが良さそうだ。
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