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南海トラフ地震:巨大津波想定 町消えてしまう、住民どう守れば(その1)
http://mainichi.jp/area/news/20120401ddn041040009000c.html
毎日新聞 2012年04月01日 大阪朝刊
◇平地、逃げ場ない 幹部、緊急会議−−高知・黒潮町
政府が31日に発表した南海トラフを震源域とする巨大地震のシミュレーションは、津波高、浸水域とも従来の被害想定を根底から覆す内容となった。防災対策の抜本的な見直しを迫られた自治体からは「これほどの大災害から、住民を守ることができるのか」との声が上がった。地理的な条件から対策を施すのが難しい地域もあり、新たな脅威への備えは難航しそうだ。【小坂剛志、倉沢仁志、平川哲也、米山淳】
「町の存続が危ぶまれる」「一体、どこへ逃げたらいいのか」−−。最大34・4メートルの津波高を示された高知県黒潮町は、行政関係者や住民に衝撃が走った。海から約700メートルに建設された津波避難タワーは最も高いところで海抜12メートル。高台を避難所としている地域も、計画を抜本的に見直す必要が出てきた。「鯨の見える町」として、海と生きてきた人口約1万3000人の町が揺れている。
町はこれまで最大8メートルを想定していたが、今回の最大津波高はその4倍以上。高台のない沿岸部に約3000万円をかけて津波避難タワー1基を整備したが、予想通りの津波が来たらひとたまりもない。町役場も海から約700メートルの場所(海抜6メートル)にあり、高台移転の話が進んでいる。
町幹部は31日午後、役所で緊急会議を開いた。大西勝也町長は「予想を大きく上回った。町の存続が危ぶまれる」と厳しい表情で語り、内閣府有識者検討会の公表内容の精査や情報収集などを指示した。大西町長は取材に対し「居住地もかなり限られてくる。高台移転も含め、あらゆる手段を排せずに対応したい」と述べた。
地域の自主防災会連絡会長を務めた西岡正和さん(65)は、高齢者や障害者の避難を危惧する。「逃げるしかないが、高齢者がどれほどの時間で高台まで逃げられるか。私も脳梗塞(こうそく)を患って車いすの生活」と不安を募らせる。
衝撃は保育所にも広がっている。町立大方中央保育所は海から約1・2キロの海抜26・2メートルの高台にある。津波避難計画では「保育所に待機」となっているが、保育所関係者は「どうしようというのが本音。園児なので素早く避難させるのは難しいし。子どもの命を守るために逃げるとしか今は言えない」と話す。
同町沿岸部には民家や役場が集中し、夏場はホエールウオッチングの観光客でにぎわう。運営するNPO法人の埜下(ののした)安弘さん(54)は「ウオッチング中に地震が発生すれば、沖の方が安全ということもある。漁師でもある船長に判断を任せるしかないかもしれない」という。
◇街並み守りたい−−和歌山・湯浅
和歌山県湯浅町も最大津波高10・2メートルで、04年の想定の2・1倍だ。海を望む町の一角には、約400年前にしょうゆ醸造で栄えた街並みが残る。海抜3メートル前後の場所に、伝統的な中2階の低層住宅が細い路地に約320棟密集する。津波避難ビルを建てる土地はなく、ほぼ全域が浸水する計算だ。情緒ある街並みの保存か、津波対策か。町の担当者は「伝統的な地区を誇りに思う町民は多い。避難誘導など、ソフト面の充実で補いたい」という。
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■解説
◇「東日本」教訓、最大級を提示
従来の南海トラフの防災想定は、過去数百年間の史料などに残る地震と津波を再現することを前提とした。これに対し、内閣府の検討会が31日公表した震度分布と津波高は、証拠が乏しくても現状の地震学で考え得る最大級の「脅威」を提示した点で、根本的に異なる。東日本大震災の教訓を踏まえ、次の想定外は許されないという前提で検討された。
ただし、今回の想定は行政の広域災害対策を念頭に置いた試算で、個別の地点では予測を上回る強い揺れや津波に見舞われる可能性もある点に注意が必要だ。また、過去に南海トラフでマグニチュード8以上の巨大地震が発生した前後には、西日本の内陸部で阪神大震災規模の直下型地震が連発した。今回の震度分布などを基に今後被害シナリオを考える際には、こうした誘発地震などさまざまな想定を含めることが求められる。
個人レベルでは、予測を冷静かつ重く受け止め、災害を「防ぎきる」のではなく、命を守ることを最優先する重要性を共有したい。揺れが収まる間もなく津波に襲われる地域は、高台移転の本格検討を始めるべきだろう。対応には数十年の時間と巨額の費用が必要になるかもしれない。提示された超巨大地震を「西日本大震災」とさせないための知恵と覚悟が求められている。【八田浩輔、池田知広】
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