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この連日の揺れが何を意味するか、ご存知ですか 忍び寄る「震度7」その現実味
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/32180
2012年04月03日(火)週刊現代 :現代ビジネス
地震には「足音」がある。近づくものが巨大であるほど、その音は大きく響く。3・11前、東北沖にはとてつもない怪物≠フ気配があった。再び始まった大地の揺れは、いったい何を意味するのか。
■「M5級が連発」する意味
東日本の沖に広がる太平洋で、1年前、海底が南北500km、東西200kmにわたって割れた=B
解放されたエネルギーはM(マグニチュード)9・0。人知を超えた巨大なエネルギーの余波は、今も日本列島を揺さぶっている。
気象庁は3月8日、昨年の東日本大震災以降、日本で発生したM5以上の地震が、約600回に達していることを公表した。このうち、M6以上の地震は97回。M7以上の大地震も6回起きたという。
「地震の回数を見ても、まだ収束に向かっているとは言えず、M7以上の余震の可能性も消えていない」(気象庁地震津波監視課)
不気味なことに、地震は確かに「多い」。微小地震を含めた総数自体は、昨年に比べると徐々に減る傾向にある。ところが最近、M5クラスの中規模地震が再び増加しているのだ。
たとえば3月14日午後6時ごろ、三陸沖でM6・8とかなりの規模の地震が発生。するとその約2時間後の午後8時前、ほとんど同じ場所で、続けざまにM5・9の地震が起きた。
さらにその1時間後の午後9時過ぎ。今度は千葉県の東方沖で、M6・1の地震が発生した。この地震は陸地に近かったため、茨城県神栖市付近で震度5強、日立市で震度5と、強い揺れを記録している。この3月14日は、わずか3時間の間に、3回もM6クラスの地震が起きたのである。
問題は、これだけではない。こうした中規模の地震は徐々に数を増やしながら、なんとその震源が「東京」に向かってゆっくりと近づいてきているのだ。
筑波大学大学院生命環境科学研究科の八木勇治准教授がこう語る。
「3月14日の千葉東方沖の地震は、千葉県沖の浅い¥齒鰍ナ起きました。実はこのタイプの地震は、これまで主に、東日本大震災の震源域である福島県沖などで発生していたのです。ところが、今やその範囲がだんだんと広がり、関東地方の浅い場所でも地震が起きはじめました。
このタイプの地震は、都市から離れていない海岸線近くが震源になる。基本的にはM6以上の地震が想定できますが、もしそれがM7クラスの地震になり、しかも大都市近くで起きるとすれば、大きな被害が予想されます」
次ページの図を参照してほしい。これは最近の約1ヵ月間に東日本で起きたM3以上の地震をマッピングし、さらにその上に、M5以上の地震の震源を重ねて表示したものだ。
近づいてくる「震度7」
http://gendai.ismedia.jp/mwimgs/3/c/530/img_3ca068baff187af513945d15ed6b58eb248622.jpg
昨年から引き続き、東日本大震災の震源域では無数の地震が起きていることがよく分かる。ただ、気になるのはM5以上の地震である。M5地震の発生ポイントが、どんどん関東地方に偏ってきているのだ。
2月29日、千葉県東方沖でM5・8。3月1日には茨城県沖でM5・4。翌2日には再び千葉県東方沖でM5・1、そして3月14日と15日に、隣接した場所でM6・1、M5・0。さらに16日には、内陸の埼玉県南部でM5・2の地震が起きている・・・・・・。
実は昨年の東日本大震災の前にも、宮城県沖を中心とした東北地方太平洋岸の地域では、こうした中規模地震が群発していた。3・11の約1ヵ月前から、本震の震源地付近で、M5クラスの地震が続いていたことが明らかになっている。
大震災により、広大な震源域の北(青森沖)と南(千葉・茨城沖)に、「岩盤が割れ残った場所」が現れた。M9のエネルギーを受け止め割れ残った場所には、強いストレスが生じて次の大地震が起きやすい。
これまで専門家の一部はそう警告を発してきたが、今起きている状況は、まさにその警告が現実になるかもしれないことを示唆している。
■関東直下型か西日本巨大地震
もうひとつ、歴史研究から巨大地震の痕跡を辿る「地震考古学」の研究家で、独立行政法人産業技術総合研究所の寒川旭氏は、こんなことを指摘する。
「東日本大震災は、その規模と被害は1000年に一度とされ、869年の『貞観地震』に似ていると言われました。ですが、似ているのは大津波を伴うM8~9クラスの地震だったというだけではありません。
貞観地震が起きた9世紀は、日本中が地震の活動期というべき時代でした。その状況自体が、現在ととてもよく似ているのです」
9世紀、貞観地震の数十年前から、現在の秋田県、山形県、新潟県、長野県、伊豆地方(静岡県)などでは、直下型地震が頻発した。そして、播磨地方(兵庫県)で大地震が起きた翌年、M9クラスと推定される貞観地震が起きた。
しかし当時、天変地異はそれだけで終わらなかった。貞観地震から9年後の878年、現在の東京都・神奈川県にあたる武蔵国・相模国を中心とする関東南部で、M7・4クラスと推定される直下型地震が発生する。
さらに880年には、出雲地方(島根県)でやはりM7クラスの大地震が発生。そして887年、西日本としては最大級の「仁和地震」(M8・5級、西日本の太平洋沿岸が震源域の超巨大地震)が起き、ようやく静穏期を迎えたのである。
「貞観地震が東日本大震災に相当すると考えた場合、その前年に起きた播磨地震は『阪神・淡路大震災』('95年、M7・3)にあたることが分かります。出雲地震は『鳥取県西部地震』('00年、M7・3)になりますし、その他の地域でも『新潟県中越地震』('04年、M6・8、震度7を記録)など、9世紀によく似た地震がすでに起きている。
では、まだ起きていないのはどこの地震でしょうか。すなわち、『関東直下型の大地震』と、『西日本の巨大地震』ということになります」(前出・寒川氏)
■大地震は次々起きる
1000年の周期を経て、日本は再び、大地震の活動期に入っているのか。
「そもそも東京付近では、むしろ地震が起きるのが普通だと考えるべきです」
そう語るのは、武蔵野学院大学特任教授で元北海道大学・地震火山研究観測センター長の島村英紀氏だ。
「たとえば江戸時代は二百数十年続きましたが、その間に関東地方では、約30回も大地震が起きている。ところが近年は、1923年の『関東大震災』(M7・9)以来、ぱったりと大地震が途絶えています。
この状態は、むしろ異常と言える。今後はかつてのように、頻繁に大地震が起きる状態に戻るものとみたほうがいい。地震が次々と起きる≠ルうが、東京ではふつうなんです」
ここにきて、政府や学会から「首都直下地震」に対する警告が次々と出ているのにも注意が必要だ。
3月7日、首都直下地震の対策を検討する文部科学省のチームは、東京湾北部でM7クラスの地震が起きた場合、「震度7の揺れが想定される」と発表した。
その上、東京都から千葉県を結ぶ地域で起きるこの地震は、場合によってはM8級になる可能性もあるという。そうなれば、震源直上となる東京湾沿岸の広い地域が、震度7の激震に見舞われることになる。
さらに東京大学地震研究所は、M7クラスの首都直下地震が今後5年以内に起きる可能性を、「20~60%」と試算した。従来の政府の試算では、「30年以内に70%」とされていた。どちらも高い数値だが、東大地震研の見立てでは、切迫度がより上がっていることが見て取れる。
研究機関の研究成果に加え、実際に3・11直前と同様、M5クラスの地震が同じような場所で次々と起きている事実---。
「地震が起きるかどうか」を議論すべき段階は、もう過ぎた。起きるかどうかではなく、「必ず起きる地震に、どう対処するか」を全力で考え、備えるべき時が来たのである。
文科省チームは、首都直下地震の際、どの地域が震度7になるのかは「誤差が大きい」として公表しなかった。だが、いざ地震が起きたときに後出しジャンケン≠ナ「想定通りでした」と言われても困る。
震度7という最大レベルの揺れに直撃された場合、政府の中央防災会議のデータによれば、木造建築物の50%以上、鉄筋コンクリートなどの非木造建築物も、20%以上が「全壊」するという。そんな場所に、何も知らずに住んでいるのは自殺行為に等しい。
■揺れの後に真の恐怖が
前出の島村氏はこう語る。
「過去に東京付近を襲った地震、たとえば1855年の『安政江戸地震』(M7以上)は隅田川の河口付近が震源地だったとされていますが、そこから半径20km以内の被害が非常に大きく、江戸の下町の繁華街の多くが壊滅し、当時でもおよそ1万人の死者を出しました。現在の地名で言うと、日比谷、有楽町、深川、浅草といった地域が大きな被害を出しています。
また、隅田川や荒川などの河川流域も地盤が弱いため、非常に強い揺れに見舞われる恐れがあります。昔は利根川も東京のほうに向かって流れていました。その影響で、現在の埼玉県三郷市や草加市、千葉県野田市といった地域から、東京の江東区、江戸川区、墨田区、荒川区なども、かなり強く揺れるでしょう」
地盤が悪いと、たとえ震源が直下でなくとも、震度7を記録する場合もある。河川流域のほか、東京湾の沿岸部やかつての海・湿地の跡も、当然危ない。銀座付近から霞が関、大手町、神田、神保町といった都心部は、江戸期以前は海が広がっていた場所だ。
また、震度7とは「それ以上ない最高の激震」を示す。東京都民はもちろん、一般的な日本人は、大半が震度5程度までの揺れしか経験がないはずだ。震度7という異次元の揺れ≠フ中では、まともな行動、まともな判断はほぼできないことを、最初から覚悟する必要がある。
「震度5と震度7では、人が感じる恐怖感のレベルがまったく違うものになります。したがって人口が多い都市の場合、みんなが心の準備をしておかないと、むしろ、揺れが収まった直後のほうが怖い。
揺れの間はまったく動けないと思われますが、それが収まった途端、恐怖に駆られてパニックが起きる可能性があります。繁華街やターミナル駅などでは、将棋倒しや圧死など、パニックによる死者が出ることも予想されます。子供や女性、高齢者は特に危険です」(災害危機管理アドバイザー・和田隆昌氏)
千葉県浦安市などの湾岸地域では、3・11の震度5で広範囲に液状化現象が発生したが、震度7ではそのレベルではなく、多数の建物の倒壊・崩壊が起きる可能性が高い。これらの地域を通る、高速道路や鉄道の高架・陸橋も、言うまでもなく倒壊の危機だ。
「震度7」は、まもなくやってくる。その恐怖の足音に気づかない者は、何もかも失うことになる。
「週刊現代」2012年4月7日号より
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