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鯛の塩焼き鍋は池波正太郎的粋な料理の代表の一つなのである。(おっさんひとり飯)
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投稿者 五月晴郎 日時 2014 年 8 月 08 日 00:40:57: ulZUCBWYQe7Lk
 

http://ossanhitorimeshi.net/?p=10679

鯛の塩焼き鍋で酒を飲んだ。

鯛の塩焼き鍋は、池波正太郎的粋な料理の代表の一つなのである。

きのうブログで紹介http://ossanhitorimeshi.net/?p=10653しようと池波正太郎『そうざい料理帖』を改めて、パラパラと眺めたら、池波正太郎の世界が蘇ってしまったのである。

鯛のアラを買ってあったのだが、これを塩焼き鍋にすることにした。


池波正太郎の料理がいいのは、とてもうまいにも関わらず、作り方が非常にシンプルであることだ。

料理は「手をかけるほどうまい」とは、たしかに言える。野菜の下ゆでや、炊き合わせを別々に煮ることなどは、その一手間をかけるか、かけないかで、味は大きく変わってくる。

しかし料亭ならともかく、家庭料理の場合には、全てに手をかける訳にはいかないだろう。手軽に出来ることも、やはり大事だ。



すると、どこに手をかけ、どこに手をかけないかの見極めが、必要になってくる。手をかけるべきところには思い切って手をかけ、そうでないところは思い切って省略する。

さらには、やり方を根本的に変えることにより、手をかける必要が全くなくなるようにする。



それができるのが、「名人」なのである。

名人は時折見かけるが、池波正太郎はその一人であると思う。



鯛の塩焼き鍋は、池波正太郎が折詰などに入った尾頭付きの鯛をもらったときに、作ることにしているそうだ。尾頭付きの鯛は、そのまま食べてももちろんうまいものだが、これに一手間をかけ、料理に仕立て上げようと考えることが、まずは微笑ましい。

鍋にするわけなのだが、具は、鯛のほかには豆腐のみ。このストイックさが、しびれるところだ。



鍋はどうしても、具材をあれこれ入れたくなる。もちろん、具だくさんの鍋も、それはそれでおいしいものだが、中途半端に具だくさんになると、かえってみすぼらしく見える。

池波正太郎は、ひとりで食べる「小鍋だて」には、具材の種類は

「2品か、せいぜい3品」

と言う。

あれも、これもと入れたくなるのを抑えることが、「粋だ」というわけなのだろう。



それから鍋の味付は、「酒と塩のみ」となっている。これもしびれる。

鯛はたしかに、塩だけで完璧な味になる稀有な魚だ。調味料も、それから具材も、余計なものを入れないほうが、鯛の味を活かすことになるのである。



きのう買ってあったのは、生の鯛のアラだから、まずは塩焼きするところから始める。

魚は焼いてから煮るようにすると、臭みが取れ、香ばしい風味がつく。



鯛アラはサッと洗って、ウロコが残っていたらていねいに取り、塩を振る。

塩は、あとで汁に入れるのだから、「多いかな」と思うくらいに振ってしまってかまわない。



鯛を焼くには、グリルがあるならそれでいいし、焼き網でも、フライパンでもかまわない。フライパンを使うなら、フタをして焼くとうまくいく。

ただしどのやり方でやるにせよ、魚を乗せる前によく熱しておくことが、くっついてしまわないためには必要だ。

あとでさらに煮るわけだから、多少生焼け加減のところで火から上げるようにする。



鍋に鯛と豆腐を入れ、酒1カップ、それに水を、鯛と豆腐がかぶるくらい入れて中火にかける。

煮立ってきたら火を弱め、ごくごく小さく煮立つくらいの火加減にし、5分煮る。

味を見て、塩気が足りなければ塩を加え、さらに10分煮て火を止める。

アクは、初めに出てきたのはサッと取るが、あとのは鯛のうまみだから、取らないことが肝心だ。



澄み切った、鯛のだし。


器に取り、ネギを少しかけて食べる。

鯛のうまみそのものの、極上の味である。



夏の鍋は、暑いかと思うところなのだが、全くそんなことはない。煮ながら食べるのでなく、煮たものをテーブルに持ってくるのだし、それに夏は、汁が冷めてもそれはそれで、悪くない。



さらにきょう、これをキンキンに冷やして、そうめんの汁にした。


ちょっとゼラチン状になっていて、夏にはたまらないのである。



あとは、ナスの塩もみ。

ナスは、今が盛りである。盛りのナスは、ハウス物とは全くちがい、アクがほとんどない。

ナスの塩もみも、普段なら味を色々つけるわけだが、この時期だけは何もせず、そのまま食べると、ナスの甘みを味わえる。



ナスは好みで縦のトラ刈りに皮を剥き、3ミリ幅くらいに切った上で、塩一つまみを振って揉む。

5分くらい置いたら、水で洗ってよく絞る。


トマトとオクラのツナマヨ和え。

オクラはまな板の上で塩を振ってズリズリとし(板ずり)、1〜2分サッとゆでる。

常温で冷やしたら、1センチ幅くらいに切り、8等分のくし切りにして種を除いたトマトと合わせ、ツナとマヨネーズ、塩コショウで和える。



それに新ショウガの梅酢漬け。


酒は、冷や酒。

鯛には、やはり日本酒が合うのである。  

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