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森元首相の発言については、事実認識や表現の質が悪いので擁護する気にはならないが、噛みついたメディアの反応も質が悪いと思っている。
森氏の「あの子(真央ちゃん)は、大事なときには必ず転ぶ」発言をメディアが取り上げたのも、森氏の東京五輪パラリンピック組織委員会の会長という重責にあるからだろう。
噛みついたメディアの反応の質が悪いという評価は、森氏の表現に難があるとしても、「真央ちゃん転ぶ」発言自体にそれほどの悪意や問題があるわけではなく、問題があるとしたら別の発言のほうではないかと思うからである。
麻生財務大臣が代表だと思っているが、政治家は、芸人や大阪人に似て、受ける話をしたがる。おちゃらけを好まないまじめな左翼や右翼とは違い、自民党の政治家を好む人たちは、少しえぐい話やひとを小バカにしたような言い回しを好むようである。
「あの子は、大事なときには必ず転ぶ」という表現もその一つであり、森氏の発言全体からは、浅田真央さんの実力を高く評価しソチでの好成績を期待していたことが読み取れる。
(真央ちゃんは「大事なときには必ず転ぶ」というのも、転んだあとにわざわざ言う必要がないことだが、トリプルアクセルにこだわる真央ちゃんのこのところの演技は、そう言われても仕方がないものだと思う)
どうでもいいしそれが正しいとも思わないが、森氏の思いを汲むなら、真央ちゃんが開会式の前夜に行われたフィギュアスケート団体戦SPに出ていなければ、個人戦で立派な成績を上げられたはずというものだろう。
森氏は、真央ちゃんやキム・ヨナさんと並んで金メダル候補の筆頭にあげられていたロシアのリプニツカヤちゃんも、ショートプログラムが不調(森氏の発言は20日なのでフリープログラム前)だったことから、女性選手が1週間のインターバルで厳しいパフォーマンスを行うことにスタミナ面でムリがあると考えたようだ。
森氏は、そこで話を止めていればいいものを、他の選手への配慮を欠く発言や日本スケート連盟の批判につながる発言を行ってしまった。
森氏は、東京五輪パラリンピック組織委員会会長という立場なのだから、ある選手のファンと見られるような発言は控えるべきだったと思う。
ロシアのリプニツカヤちゃんは団体戦でショートもフリーも出場したが、真央ちゃんはショートのみで、フリーには鈴木明子さんが出場している。
フリーのほうが演技時間が長い。だからフリーのほうがきついとは言わないが、鈴木明子さんは両足小指の故障をおして出場している。しかも、フリーはショートの2日後に設定されていたから、個人戦までの間隔も詰まっている。
人気や期待はともかく、このところの実績から言えば、ソチの個人戦で真央ちゃんと鈴木明子さんのどちらが上位になっても不思議ではないほど拮抗した力関係である。
森氏が真央ちゃんのことを慮るのなら、鈴木明子さんに対する配慮も必要だったと思う。
森氏の話をまとめると、日本はフィギュアスケートの団体戦に出場するべきではなかったというものになる。
森氏は、キム・ヨナさんは団体戦に出なかったから個人戦がうまくいったと見ているが、韓国は女子シングルしか国際試合で上位に入れる選手がいないから10ヶ国の枠しかない団体戦に出場することができなかったのである。
仮定だが、韓国の総合力が日本と同じくらいで団体戦に出ていれば、キム・ヨナさんも、ショートくらいは出ていたのではないだろうか。
どうせ勝てない団体戦に出るべきではなかったと言う森氏の真意がどこまでのものかわからないが、団体戦に出場できる権利を勝ち取っていながら、個人戦のことを考慮して辞退すべきとは思わない。
男女のシングルにしても、誰一人オリンピックに出場できないことさえあり、今回のように男女揃って最大枠の3名が出場という快挙は長年かけて達成したものである。
日本スケート連盟も、団体戦でメダル圏内に入ることは難しいと思い、予選突破を目指したようだ。予選突破が目標だったからこそ、予選のSPに羽生くんと真央ちゃんを投入したのだろう。二人も、無理強いされたわけではなく、納得したうえで出場を受けたのだろう。
それでも、予選突破は難しいと思って見ていた。25ポイントが予選突破ラインと見ていたので、二人がともに1位になって20ポイントを獲得したとしても、ペアとアイスダンスが1ポイントずつしか獲得できないと、合計22ポイントで予選突破は厳しいからである。
失礼ながら、ペアとアイスダンスはともに最下位で1点ずつかなと思っていたが、予測を裏切り両種目とも8位で3ポイントずつ獲得した。日本は見事に“総合力”で決勝に進出したのである。
日本のフィギュアは、シングル偏重という感じで、ペアやアイスダンスは挑むカップルも少ない。
ペアで出場した高橋・木原組も、ソチの団体戦を意識してちょうど1年前に結成されたという。女性の高橋さんはペアが盛んな中国でフィギュアスケートを始めたのでペア志向だったが、男性の木原さんは、1年ほど前に、シングルから“泣く泣く”ペアに転向したという。ペアの二人は、1年しかなかったことを考えると、よくやったと言える演技をしたと思う。
森氏は、発言でリード姉弟についても触れているが、感心できる内容ではない。
選手層が厚い米国でのオリンピック出場が難しいことから母親と同じ日本国籍を選択した可能性はあるとしても、「帰化させた」という表現は不穏当だろう。
ソチのアイスダンスでは、両親とも日系のシブタニ兄妹が9位という好成績を上げている。(リード姉弟は21位)
育つ環境の違い(日本は社交ダンス文化があまりない)はあるとしても、日本人的DNAでも、アイスダンスで好成績を上げられるという一つの見本ではあるだろう。
愛国心が薄いくせに、リレー種目、駅伝、卓球の団体戦などが好きだからというわけではないが、フィギュアに団体戦ができ、日本代表としてペアやアイスダンスに出場できる機会が増えれば、ペアやアイスダンスの競技人口も増加すると思う。
日本スケート連盟も、小学生の競技会にダンス部門を設定したという。
日本のフィギュアは、国を代表する重みを背負いながら一発勝負で臨むオリンピックで、男性が1位・5位・6位、女性が6位・8位・12位という好成績を残した。これは実に立派な業績だと思う。
真央ちゃんについても、ショート終了時点で金メダル争いから脱落してしまったのは残念だったが、フリーは、個人的にだが、キム・ヨナさんより上位の1位ないし2位のパフォーマンスだったと思っている。
(ショート16位で、フリーは第2グループでの滑走だったから、はじめから高い得点は期待できない。こう言うのは失礼かもしれないが、あれだけ見事な演技ができたのは、金どころかメダル争いとは無縁になったとふっきれたおかげかもしれない。最低でも205点以上がメダルの条件だったから、真央ちゃんはフリーで150点以上出す必要があった。金メダルのソトニコワさんのフリーの得点は150点に届いていない。韓国ではキム・ヨナさんのほうがデキが良く開催国ロシアということでソトニコワさんの点数が嵩上げされたために負けてしまったと騒がれているようだが、フリーの演技の出来映えは、ソトニコワさん→真央ちゃん→キム・ヨナさんの序列で妥当だと思っている)
真央ちゃんについては、常々、スケーティングは群を抜きステップや表現力も優れているのだから、確実性が劣るトリプルアクセルにこだわらず、確実性の高いジャンプ構成にしたほうが上位を狙えると思ったり、音楽も、今回はまだましだが、重厚なものではなく、ノリの良い曲にしたほうがいいと思ったりもしていたが、真央ちゃんは、アスリート魂と美意識を捨てることはしなかった。
(だから羽生くんが金メダルを獲得できたとは思っていないが、フリーが007で金メダルをとったときのキム・ヨナさんのコーチでもあるオーサー氏は、競技で勝つことにこだわり、そのための指導ができる人だと思っている)
両足小指の故障にめげずに演じきった鈴木明子さんとアスリート魂と美意識を捨てることなく見事にフリーを演じた真央ちゃんに称賛の言葉を贈りたい。
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