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現実の保全
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投稿者 蒲田の富士山 日時 2013 年 12 月 19 日 14:07:58: OoIP2Z8mrhxx6
 

康応四年、戊辰三月十四日、西郷と会して江戸城無血開城を決めたとき、幕府は滅びたが海舟は現実の保全に成功したはずであった。明治二十五年になって、彼は仕事を回顧し、一首の漢詩を試みている。
 
官兵城に迫るの日
我を知るはひとり南洲
一朝機事を誤らば
百万髑髏と化す
 
つまり、海舟は、このとき「百万髑髏と化す」の玉砕を避けて、互全の道を選んだ。そしてその選択に
南洲は協力し、江戸百万の民生を救った。明治十年丁互の秋、その南洲が自滅への道程を直進して行ったときも、海舟は「苦学」して旧幕臣をまとめ、薩軍への加担を許さなかった。
だが、それがどうだろう。西郷と私学校党の面々が、ことごとく滅び去ったいま振返ってみれば、「苦学」して互全したはずの現実そのものが、ぼろぼろに崩壊しているではないか。十年間「辛苦経営」して保全して来た現実が、いつの間にか砂のごときものに変わっているではないか。
西郷とともに薩摩の士風が滅亡したとき、徳川の士風もまた滅び去っていた。瓦全によっていかにも民生は救われたかもしれない。しかし、士風そのものは、あのときも滅び、いままた決定的に滅びたのだ。これこそ全的滅亡というべきものではないか。
ひとつの時代が、文化が、終焉を迎えるとき、保全できる現実などはないのだ。玉砕を選ぶ者はもとより滅びるが、瓦全に与する者もやがて滅びる。一切はそのように、滅亡するほかないのだ。
政治的人間の役割を離れて、一私人に戻ったとき、海舟の眼に映じたのはこのような光景であったに違いない。平家が滅び、源氏が滅びたあとに浮上したのが、北條執権の武家体制であったように、徳川が亡び、西郷と私学校党が亡びたあとには、近代日本というものが樹立されようとしているかに見える。海舟は、政治的人間として、いわばこの近代日本というあり得べき国家に賭けて来たといってもよい。だが、それはいつまでつづくか。それもまた、やがて滅亡するのではないか。
 
 

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コメント
 
01. 蒲田の富士山 2013年12月20日 08:58:38 : OoIP2Z8mrhxx6 : lFz2LtcI6Q
訂正(2行目)
「彼は仕事を回顧し」→「彼は往事を回顧し」
以上
引用は江藤淳の南洲残影の24頁から26頁(文庫版)。

02. あやみ 2013年12月21日 08:10:39 : oZZpvrAh64sJM : MowmliJMyt
蒲田さん こんにちは お元気でしょうか。

「近代日本」の心臓は日本の外にあります。だから、日本の中でとどめを刺せない。玉砕もならない。「それはいつまでつづくか。それもまた、やがて滅亡するのではないか」もう何度も滅亡している筈の近代日本は肝臓のように再生し続けているのではないでしょうか。


03. 蒲田の富士山 2013年12月22日 08:21:44 : OoIP2Z8mrhxx6 : ziMq5NU3KM
まずは、全原発の停止を維持し、廃炉ができるかどうか。このことが日本人にとっての試金石になると思います。石炭、石油を押さえられ、原子力燃料の管理も、とどのつまりは外国人にまかせている。あとは、食料も、おまかせの方向なのが、今の日本の現状ならば、方向転換しなければならない。
原発の立地が農村なのは、こうなる事をある程度見据えたうえで、「日本は農本主義に後戻りしない」との前提でそうしたのか?日本の農本主義を怖れる勢力から見れば、日本を農本主義に後戻りさせないための、布石か?
あやみ様、心臓を横取りされている日本人が、心臓を取り戻す事を、一歩一歩やっていくしかないのですが、来年もよろしくお見守りください。
ではまた。
 

04. 宮島鹿おやじ 2013年12月22日 22:00:48 : NqHa.4ewCUAIk : DocNDonHXH
蒲田の富士山様

こんばんわ。
お久しぶりです。
今日は冬至ですね。寒いです。
周囲では親戚の中の年寄りらが死んでいきます。
もしかすると、フクイチから未だにプルームが飛来している模様です。
お気をつけください。

来年も宜しくお願いします。


05. 蒲田の富士山 2013年12月23日 21:50:32 : OoIP2Z8mrhxx6 : BJEl53HgAI
宮島様。
お久しぶりです。
60歳に、ついこないだ、なっちゃいました。
来年もよろしく。
ああ、60歳。
 

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