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日が暮れてからも、駅前の小さな食堂はいつも賑わっていた。
通りに面したその2階の小部屋の天井に、行き交う車のヘッドライトが影絵の様に建物の凹凸を映し出している。
延びては縮み、左右に消えるその様は、時に人の横顔のようにも見えたりした。
夕飯前の日課のように、ぼんやりとそんな空想の投影をしながら、寝転んで観る天井のスクリーン。
ささやかな街の夕暮れ時。
そんなありふれた日常の活気と対比して、独り隔絶したこの空間には妙な覚えがあった。
何故だかは分からない。
ボーッとそう考えている内に、あの夢魔の衝撃が蘇って来る。
体が金縛り状態になっている。
再び恐ろしく孤独で、物哀しく、郷愁を帯びた時間が経過した。
必死でその呪縛を振り解く。
いつしか空には星が瞬き出していた。
誰かに聞いた。あの無数の星々全てがひとつの世界だと。
その中でも特に目立ち、惹かれるのは、あの三つに並ぶ星。
その下にある小さな三ツ星。
あそこに行きたい。
夕食を済ませ、やがて床に就いた。
ふと目覚めると満月が輝いている。
誰かが呼んでいる。
寝静まっている家族の脇を音を立てずに物干し台へと出た。
距離は定かではないが、その満月と反対の、はるかな高空に満月の様な船が浮いていた。
その船の窓から覗く老若男女、様々な衣服の人々。
遠いはずなのに、微笑みながらこっちに手を振っているのも見えた。
あの船に乗りたい!
でも降りてきてくれない。
意地悪とは考えられない、やさしそう笑顔なのに。
何故?……………懸命で真剣な疑問と願いだった。
その必死さが導き出した結論。
そうか、乗せてという願いは依存で、自ら乗ろうとする姿勢が決意だな。
勿論、就学前の幼子。言葉でそう思念したのではない。
理屈抜きにそう感じ取ったのだ。
あそこまで飛べないからと諦めているようじゃダメだ。
よし、無理でもあそこまで飛んでやる。
その懸命さ故の、無茶苦茶な姿勢と決意だった。
気が付くと船の中に居た。皆から祝福された。
船は月へと向かう。一瞬で月に着くと、いつの間にか人々は船外で、月の表面に立っている。
連れ立って散策を始めた。
何処から皆が出たのか、出入り口は何処にも見当たらない。
再び、ハッとした。出ようとする意思だ。
その瞬間に外に出た。
やがて月の丘の上の神殿らしき廃墟から地球らしき星が見え、
目を凝らすとズームアップして、我が家も、母の姿も何故か見えた。
郷愁で涙しながらも、又船に。
次に辿り着いたのは巨大な渦巻き模様の星の近く。次に輪を持つ星。
ここから先の記憶が無い。多分帰されたのだろう。
この時の印象で小学生の頃頻繁に書いた星々の絵。
これも高校生の頃に、その謎は解けました。
ボイジャーから史上初の木星のカラー映像が届けられた時でした。
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