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外交を有利に展開するには、インテリジェンス(諜報)の良し悪しが外交交渉での決め手になる。本書はインテリジェンスに詳しい二人の対談形式で、その入手方法、外交に使える情報にするためには何が必要かを解説する。NHK国際ジャーナリストから独立した手嶋龍一氏と外務省のラスプーチン(手島氏は対談の中でもそう呼ぶ)と呼ばれた佐藤優氏の二人が情報戦争の一端を垣間見せてくれる。佐藤優氏は鈴木宗男議員(当時)のロシア案件に絡み検察に逮捕され、500日以上も拘留されながら不屈の精神で拘置所から出所、その後、意欲的に作家・評論家として独自の視点から社会の解説をする。
サブタイトルは「インテリジェンス入門書」で、一般人には解読できない意味を含むセンテンスを使い、インテリジェンスの分かる人には意味が伝わるようにする。そのインテリジェンスから分析した情報を解説して、一般の人間には普段見えない外交を説明する。その事例が身近な不思議を説明しており、例えば、第二次世界大戦期に日本で暗躍した二重スパイであるリヒャルドゾルゲについての事情、イラク戦争における各国の動きについてインテリジェンスの面から説明、一般の人には見えない情報分析を展開し、インテリジェンスとは何かを説明する。
日本がインテリジェンス弱国である事は二人の共通認識で、本書のメインテーマである。インテリジェンスに携わる人材を育てよと何度も繰り返す一方で、二人がどういう行動を取ろうとしているのか分からないところが、すでにインテリジェンスの領域に入っているようだ。本書の対談の会話中にも、二人は仕掛けや、駆け引きを見せているので、すでに情報戦を開始している。なかなかの曲者二人である。
本書の中の一端をあげると、
ありとあらゆる都市で、ほとんどの要人の電話は盗聴されていると考えたほうがいい。例外はワシントンだけでしょう。あそこの電話を盗聴していると、すぐに逆探知されてしまう。(佐藤)そのネットワークは、政治家、官僚、民間企業、ジャーナリスト・・あらゆるところで活動しているようです。(手島)(p18)
上海の総領事館が中国当局から脅迫されて自殺したなら官邸に報告して然るべきなのに、それもしない。弱みを握られているヤツが外務省幹部にいるんでしょうね。(佐藤)(p156)
経済力に応じたインテリジェンス能力を日本は持っているものの、それを生かしきれていないという。インテリジェンスなしに経済力が強くなることはあり得ない。日本には、仕事を中断して、勉強する、充電するといった仕組みが少なすぎるのです。(佐藤)ジャーナリストになると、夜討ち朝駆けで疲弊していく。充電する機会がほとんどない。(手嶋)(p201)
ヴァチカン市国は、隠れた情報大国です。・・・そのインテリジェンス能力にはいまも侮りがたいものがある。(手嶋)ヴァチカンは怖いですよ。・・・モスクワでもすごい仕事をしていますし。(佐藤)(p89)
私はロシアの仕事をしていたとき、日商岩井と三井物産を非常に重視していました。この二つの商社には、それぞれ基本哲学があります。(佐藤)(p20)
これを読んでいて、菅沼光弘氏(公安調査庁を退官後、アジア社会経済開発協力会を主宰)の言葉を思い出した。「日本はスパイ天国であり、カウンターインテリジェンス(防諜)に対する法制度の不備を原因とするが、実質上は日本人には自国を自らの手で守る意識が乏しい。自分で自分を守る心のない国に秘密などあるわけがない、日本の実情は対外情報力が極端に欠如し、自分の殆どの情報については‘筒抜け’である」と指摘する。
また、「情報(インテリジェンス)機関は、金とヒトを集めればできるものではない。情報の収集・分析には十分な経験と豊富な蓄積が不可欠」と言う。北朝鮮問題にでも、「正規の貿易関連品目の流通を止めても、隠れて流入している覚せいなど剤密輸が受ける影響は少ない。情報機関のち密なインテリジェンス分析がなければ、裏で流通する覚せい剤などに大打撃を与えることなど不可能である」と実質断言している(表では断言できないから私見の予測と断って)。
第二次大戦でも、不利な状況になってから指導者がこのインテリジェンスから目をそらすような行動をした。アメリカに占領されてからは「防諜」の考え方をズタズタにされたままである。この点からみてもまだ日本は独立を果たしていないのだ。そんなことを感じながら一気に読めた本(入門書)である。
矢津陌生ブログ http://yazumichio.blog.fc2.com/blog-entry-268.html より転載
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