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http://bizmakoto.jp/makoto/articles/1305/23/news006.html
慰安婦発言で物議を醸している橋下徹 大阪市長。果たして米高官による「不快」発言は、どのような文脈で行われたのか。会見の様子を基に、日本メディアがどのように伝えたのかを検証する。
[伊吹太歩,Business Media 誠]
最近めっきり露出の減っていた橋下徹 大阪市長が、問題発言で物議を醸している。
橋下市長は5月13日、「銃弾が雨嵐のごとく飛び交う中で、命をかけて走っていくときに、どこかで休息をさせてあげようと思ったら慰安婦制度は必要なのは誰だって分かる」とコメント。米軍の司令官に対して「もっと風俗業を活用してほしい」と言ったとも発言した。その後、一気に橋下バッシングが始まった。
もちろんこの発言はあまりにも低次元で、一部で言われるように「話題づくり」にしては稚拙だ。彼の発言が批判されるべきものであることは間違いない。ただ、それ以上に、今回の騒動での外国、特に米国の反応を報じる日本メディアの報道が、皮肉にも日本メディアの問題点を見事にあぶり出した。
朝日新聞記者が行った、米国務省の報道官への質問
5月17日、新聞各社は夕刊で、橋下市長の発言に対する米国務省のコメントを一斉に掲載した。というのも、米国務省の定例会見(5月16日)で、報道官がこの発言についての見解を聞かれ、米国の立場を述べたからだ。
定例会見で橋下市長の発言について質問したのは朝日新聞の記者。質問は2つのみだったが、どんなふうに質疑応答が行われたのか(参照リンク)。全文を極力直訳すると以下のようなものだった。
朝日新聞記者の質問: ども、私は日本の新聞、朝日のタカシです。大阪の橋下市長が最近、いわゆる「慰安婦」問題について、道徳的観点の価値からは受け入れられないが、慰安婦は戦時には欠かせないもの(necessary)だと主張する発言をしました。そして彼はまた、売春によって性的サービスを提供されていた他の国の軍もあるのだから、日本だけが米国やほかの国から批判されるのは公平ではないと主張しました。米国は彼の発言、または米国に対する批判に対してどういう立ち位置でいますか。
Hi, my name is Takashi from Japanese newspaper Asahi. Osaka City Mayor Hashimoto recently made a comment on the so-called “comfort women” issue, arguing that even though it is unacceptable from the moral perspective value, but the comfort women were necessary during the war period. And he also argued that it is not fair that only Japan is criticized by the United States and other countries, because there are other country military that were provided sexual service by prostitute. And do U.S. has any position on his comment or criticism against the United States?
米国務省 ジェニファー・サキ報道官: 発言は、もちろん、把握しています。橋下市長の発言は言語道断(outrageous)で不快(offensive)です。前にも述べたように、当時、性的な目的で人身売買されたこうした女性に起きたことは、嘆かわしく、明らかに相当に重大な人権侵害です。被害者たちには、あらためて、心からの深く同情します。そして日本が周辺国とともに、過去からのこの問題やほかの問題について取り組み、また関係国が前進できるような関係を深めるために努めていくことを望みます。
We have seen, of course, those comments. Mayor Hashimoto’s comments were outrageous and offensive. As the United States has stated previously, what happened in that era to these women who were trafficked for sexual purposes is deplorable and clearly a grave human rights violation of enormous proportions. We extend, again, our sincere and deep sympathy to the victims, and we hope that Japan will continue to work with its neighbors to address this and other issues arising from the past and cultivate relationships that allow them to move forward.
同じ朝日新聞記者の質問: この問題を、性奴隷または慰安婦、どう表現しますか?
Do you describe this issue sex slave or comfort women?
サキ報道官: 再びになりますが、それを定義するかは分かりません。あなたが細かな詳細を示したようですが、われわれは過去にこの問題を慰安婦と表現しています。
Again, I don’t know that I’m going to define it. You kind of laid out the specific details there, and we have described this issue in the past as comfort women.
2つ目の質問には違和感を覚える。すでにある程度一般化している「慰安婦」を、「性奴隷」と呼ぶ可能性はないのかと、サキ報道官に問いかけているのだ。2つしかできない質問で、2つ目にこれをもってくる理由はよく分からない。「朝日のタカシ」氏は、この質問から何を言わせたいのだろうか。
「連れて行かれた」と「売買された」では意味が違う
ともかく、こうしたニュースでは、外国人の発言を日本語に翻訳する際に、誤訳やニュアンスの違いが指摘されることも少なくない。サキ報道官の発言も、訳し方でニュアンスが違ってくる。
先に紹介したサキ報道官のコメントの「当時、性的な目的で人身売買されたこうした女性に起きたことは、嘆かわしく、明らかに相当に重大な人権侵害です」という部分を、各社掲載しているが、朝日、読売、毎日の記事を見比べてみたい。明らかにそれぞれのニュアンスは異なっている。
【朝日】
戦時中に性的な目的で連れて行かれた女性たちに起きたことは嘆かわしく、重大な人権侵害だ
【読売】
当時の女性たちに起きたことは悲しいことであり、重大な人権侵害だった
【毎日】
戦時中に性的な目的で連れて行かれた女性たちの身に起きたことは、嘆かわしく、とてつもなくゆゆしき人権侵害であることは明らかだ
【産経】
性を目的に売買された女性たちの身に起きた出来事は嘆かわしく、明白で並外れた人権侵害だ
ここで特筆すべきは、「連れて行かれた」のか「売買された」かの違いだ。日本のネット上では、いち早くその部分に疑問を投げかける者もいる。サキ報道官は会見で「trafficked」と言っているのだが、産経新聞だけが「売買された」と訳しているのだ。「連れて行かれた」と「売買された」とではまったく意味が違う。こと慰安婦の問題では、ここのニュアンスは大事なところだ。
この場合、サキ報道官の発言は「売買された」とするのが適切だろう。英英辞書などをみても、その意味は「The commercial exchange of goods; trade」または「Illegal or improper commercial activity」とある。つまり「物品の商業的なやりとり、売買」または「違法または不適切な商業活動」という意味になっている。「連れて行かれた」は弱すぎで、ニュアンスが違う。
同じ報道機関でこうも違うと、日本の読者は何を信じればいいのか分からなくなってしまうだろう。ただこれが現在の日本のメディアの現実と知っておくことは大事なことだ。残念ながらこうした違いは、サキ報道官の発言の映像を字幕付きで流すテレビ局の間でも同じだ。とにかく鵜呑みは禁物なのだ。
■実際のところ、橋下発言は大した話題になってない
テレビ局で、サキ報道官の発言(とは言っても、彼女は用意されていたらしい原稿を読んでいたのだが)を、ここぞとばかりに大げさに取り上げたのはTBSだった。
TBSは「米が痛烈批判」とするニュース映像で紹介。だがその報じ方は煽りぎみだ。ニュース映像を見ると、いかにも「米国ひいては世界を敵に回した市長」と言わんばかりだが、実際のところ、橋下市長の発言はAP通信や英BBCなど大手メディアで取り上げられたものの、欧米では大した話題にはなっていない。もちろん韓国メディアは別だが。
国務省の件に関して言えば、報道官が毎日のように行う定例会見で、いち日本メディアの記者が質問したことは、よっぽどのことでもない限り、外国メディアがいちいち記事にしたりはしない。ちなみにこの日の会見では、先日行われたパキスタン総選挙についての質問や、台湾漁船がフィリピン沿岸警備隊の銃撃を受けた問題、シリア情勢についての質問が飛び交った。
もう1つ、この騒動で気になることがある。サキ報道官の発言を報じたTBSのニュースなどで、以下のような一文を目にした。
国務省の高官は橋下氏の発言について、「国務省で働く人間の多くが腹を立てている」と明かしています
これだけなら、「なるほど、米国務省の職員たち大勢が橋下発言を把握しており、しかも怒り心頭だ」となる。それほどまでに国務省内では大阪市長の発言が話題になっているということなのだ。
また次の記事を見ていただきたい。5月18日付けの朝鮮日報(日本語版)だ。
韓国や中国などの当事国が強く反発しているのはもちろん、米国も背を向け始めている。「(米国)国務省の建物にいる全員が日本の発言に気を悪くしている」(国務省当局者)という話が聞こえてくるほどだ
同じ関係者に取材したのではないかと思われるほどTBSと似通ったコメントだ。朝鮮日報が「全員」と言っても、間違いなく「当局者」は全員に話を聞いていないだろうからお話しにならないが、ニュアンスは非常に近い。日本の新聞社でも同様のコメントが掲載されていた。
この当局者のコメントに「?」と感じるのは、著者だけではないだろう。本当に国務省内でそこまで話題になっているのだろうか。「多くの職員」は、どの部分に怒っているのか。どの立場の人物が、国務省の「多くの人」の意見を知り、代弁しているのか。そのコメントを掲載したTBSや新聞社は、確認作業をしたのか。
ちなみに産經新聞は、「国務省の多くの職員が侮辱されたと感じている」と、国務省高官のコメントを掲載している。ん? この「高官」と「当局者」はもしかしてサキ報道官のことで、会見後にみんな一緒にオフレコで話を聞いたから、みんなが匿名筋の似たようなコメントを載せているのか? よく見ると、各社のコメントの違いは、先に述べた翻訳における「ニュアンスの違い」と同じような差異ではないか? 茶番?
よもや大手メディアがそんな分かりやすい稚拙な情報源保護はしないだろうが……。とにかく、メディアといえども民間であり商売であることは重々承知しているが、一応、日本人の「知る権利」を担って米国務省の記者会見に出たり、政府関係者と話ができる立場にあるという自覚を、日本の大手メディアの記者たちには持ってもらいたいものだ。
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