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強盗事件を助長しかねない2つの悪
被害者を叩くマスコミと「地獄の沙汰も金次第」
2012年10月24日(Wed) 小谷 隆
先日、知り合いのマスコミ関係者の案内で、生まれて初めて、他人を殺めた人間を生で見る機会があった。所はさいたま地裁の第2法廷。生の法廷を見ること自体、初めての経験だった。
被告人の33歳の男は実の弟を殺害して床下に埋め、他に強盗事件を4件も起こしている。弟をコンクリートのブロックで殴り殺したというからどこぞのチンピラ風の怖いお兄さんを想像していたのだけれど、実際に見る被告人はどこにでもいそうな中肉中背のおとなしそうな普通の青年だった。
判決は無期懲役。裁判長が主文を読み上げても被告には動揺した様子ひとつない。理由が読み上げられる15分ほどの間も被告人は悪びれたそぶりさえ見せず、だるそうに首を回してポキポキと鳴らしたり、あらぬ方向を眺めたりしていた。どのみち控訴するんだから早くしてくれよ、とでも言いたげな態度だった。
被告人は閉廷するや否やせせら笑うような表情を浮かべ、拘置所職員に手錠を嵌められながら、弁護人に一言「コウソ」と告げた。
なぜか被害者を叩くマスコミ
被告人の罪状の主たるものは強盗殺人と死体遺棄。それだけでも無期懲役に値するものではあった。
しかも、それだけではない。彼はその凶行のほか、殺めた弟の車を使って強盗事件を4件も犯している(未遂も含む)。うち3件は同じ牛丼チェーンの店を狙ったものだった。しかも3度目には「恒例の◯◯強盗です」と名乗るなど、まるで世の中をなめ切ったような物言いで店員に凶器の包丁を向けていたという。
思えばその牛丼チェーン店への強盗事件の報道が相次いだ時期があった。初めのうちは淡々と事件を5W1Hで伝えていた報道機関も、頻度が上がると今度はチェーン店側の防犯体制の不備を指摘するようになった。
どこかがそんなことを言い始めると他のメディアも遅れまいと一気に右に倣えするのが日本の報道の特色だ。牛丼チェーンの運営会社を批判する論調が相次ぎ、防犯の甘さが強盗事件を助長しているとまで言ってのける媒体もあった。
性犯罪の被害者に対して「防御が甘いから襲われたのだ」などと言ったら顰蹙どころでは済まされないだろうけれど、実際それと大差ないような報道ばかりだったと記憶している。
この騒ぎを看過できなくなった警察庁は重い腰を上げ、昨秋、同チェーンに対して異例の指導を行った。その後、同チェーンが人件費を含め何億円もかけて防犯体制を強化したこともあって今年になって強盗は激減した。
同チェーンの資料によれば、2011年の同チェーンでの強盗事件の発生件数は78件(うち未遂32件)だったものの、2012年は10月15日現在で23件(うち未遂14件)に減っている(同社の統計による)。今年は多くが未遂に終わっているところを見ても防犯体制強化の効果のほどがうかがえる。
しかし日本全国の強盗事件の絶対数が減ったわけではない。むしろ総数は増えているようだ。例えばコンビニ強盗は、各都道府県警のホームページと警備会社の統計によると2011年が386件だったのに対し、2012年は10月15日現在ですでに昨年を上回る410件に上っている。未遂などはカウントされないことがあり、実際はこれ以上の数の事件が起こっているという。早い話、牛丼チェーンからコンビニなどにターゲットが移っただけのことだ。
ちなみに牛丼チェーンへの強盗で逮捕されたある男は、牛丼店強盗の報道に触れて自分にもできるのではないかと思って犯行に及んだと供述している。マスコミは、防犯体制の甘さが強盗事件を助長したと指摘していたが、むしろ報道が強盗予備軍をけしかけたと言った方が正しいのではないか。
犯罪を助長する? 安易な示談による減刑
報道の罪もさることながら、予備軍を犯行に走らせてしまうのではないかと思われる別の問題もある。
それは今回のさいたま地裁の法廷でも検察側から出た話なのだけれど、被告人が犯した犯罪のうち、コンビニ強盗についてはすでに示談が成立しているというのである。
この被告人はコンビニ強盗で3万7000円を奪ったものの、被害者であるコンビニからは、「示談にします。処罰を望みません」という一筆をとっているのだ。示談金は7万円ちょっとである。もっとも、この被告人の場合は強盗殺人だけですでに重い罪だからこんな示談も焼け石に水ではあるのだけれど。
だが、これがもし強盗だけなら、こういう示談が成立すると執行猶予がつく場合があるのだという。強盗事件は性犯罪や、名誉毀損のような親告罪(被害者が告訴しなければ裁判が行われない犯罪)ではないのだけれど、被害者が示談に応じればいとも簡単に減刑できてしまう。
横浜で起こった別の強盗事件では、示談のおかげでやはり執行猶予がついた。法廷で判決を聞いた被告人は思わず弁護人に向かってVサインを突き出した。
刃物を突きつけて金を奪った凶悪犯でも、金さえ払えば罪に問われないで済むというのである。まさに地獄の沙汰も金次第の現実がここにある。
牛丼チェーンの法務担当者に話を聞いたところ、同チェーンの店舗への他の強盗事件についても、弁護士から示談が持ちかけられることがしばしばあるという。ただ同チェーンの場合、そうした示談には断固として応じない方針だという。
「こういう事件を起こした輩は必ずまたやりますよ」
そう断言するのは元警視庁の刑事で現在は同社の防犯担当を務める人物。凶悪犯罪を数多く担当してきた経験から、薬物、性犯罪と強盗は再犯率が極めて高いと指摘する。
「(刑務所に)ぶち込まれた連中でさえ、出てきたらまたやるんですからね。まして示談で執行猶予付き放免なんてとんでもない話ですよ」と安易な示談による減刑を批判する。
たいていは犯人の親御さんが子供可愛さで何とかしくてれと弁護士に泣きつく。あるいは弁護士から親御さんに提案することもあるようだ。
制度改革で弁護士が増えるのは結構だけれど、カネになるなら何でもやるような弁護士ばかり増えても困りものだ。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/print/36366
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