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「週刊新潮」の「報道ステーション記事」を考える
http://fusenmei.cocolog-nifty.com/top/2012/08/post-2006.html
2012/08/18 誰も通らない裏道
先週発売の週刊新潮に『「テレビ朝日」看板番組の裏の顔 「報道ステーション」は闇金融に手を染めた』という記事が掲載されている。今週はお盆休みで週刊誌も休みなので、現状では最新号である。ちなみに、週刊誌は2週合併号となった場合、通常の号よりも発行部数を何割か上積みする。そういう部数の大きい号での「報道ステーション」ネタに私は「おっ、来たな」と思った。
ちなみに私は「報道ステーション」を日常的にはまったく見ていない。ただ、この番組が原発に対してそこそこ真っ当な立場で報道していることはネットからの情報で知っており、該当する部分の動画がアップされると削除される前に見るようにしている。
「このぐらいは最低限、報道しなければダメだろう」というぐらいの内容だが、マスメディア総崩れ状態のなかにあっては、残念ながらこの程度でも貴重な存在だと言える。
その「報道ステーション」が「闇金融に手を染めた」という。何事かと思って記事を読んでみると、要は『「報道ステーション」の制作会社(古舘も役員をつとめる古舘プロジェクト)の社長が闇金融に手を染めた?』という内容で、そこから「制作会社の社長」と「?」を取ってタイトルにしているわけだ。
古舘プロジェクトの社長が10人ほどの人にカネを貸していて、貸金業法違反の可能性もある。もし本当にそうであれば、これは闇金融だというのである。話にすればそれだけなのだが、前段ではさまざまな関係者のコメントを駆使して、この社長が怪しい人物であるということをこれでもかと印象づける。その中には「闇金の帝王と呼ばれている」とか「出資法違反の法外な金利で貸している(=闇金融のイメージ強調)」というコメントもある。
だが、実際にこの社長に取材すると、至極真っ当な金利で貸していることが判明。また人数も10人ほどで、これが「闇金の帝王」という立派な呼称に値するかは微妙なところだろう。
つまり、あとはこの社長の行為が貸金業法違反かどうかの問題で、それが立件され有罪の判決が出れば罪となるわけだが、『「報道ステーション」は闇金融に手を染めた』というタイトルは、現時点での真実とはかけ離れた事実のつぎというしかない(それが週刊新潮の伝統的な編集テクニックなのだが)。
ところで週刊誌という媒体は記者クラブメディアでないことはよく知られている。それが「週刊誌のジャーナリズムはゲリラ」と言われて評価される所以でもあるのだが、本当にそうなのだろうか?
その話をする前に、週刊誌がどのように作られているかをちょっと説明しよう。
週刊誌という組織のトップはもちろん編集長である(その上に発行人がいるが)。編集長の下に複数の班があるのだが、これは雑誌の「折」によって分かれている。一般に週刊誌というのは、グラビアがあり、ざら紙の記事ページがある。グラビアの中にもカラーとモノクロがあり、モノクロはニュースに対応する。記事ページも「折」によってその役割が異なり、外側の折(週刊誌の最初と最後のニュース記事部分)は締切時間がもっとも遅い。そして内側に入っていくほど締切が早くなり、そういう部分には連載モノが入る。
そしてこの折ごとに班があり、担当デスクがいて、その下に編集者いる。さらに各班にぶらさがった形で記者がいるのだが、社員なのは編集者までで、記者は契約である。
週刊誌の場合、取材をするのはこの記者で、記者がネタを編集に上げ、そのなかから「ゴーサイン」が出たものを取材して記事にしていく。
ではその記者はどこからネタを拾ってくるかといえば、これはもちろん一人ひとりがさまざまなネットワーク、ネタ元を持っているわけだが、たとえばニュース班の記者であれば、やはり重要な情報源はクラブ所属の記者ということになる。つまり、記者クラブに属さない週刊誌といえども、クラブと無縁でないのであって、いざとなれば権力が情報をコントロールすることは十分可能なのだ(先日、当ブログで読売新聞政治部著による『民主党 迷走と裏切りの300日』という本を紹介したが、この本の版元は新潮社だ。しかも読売新聞政治部による本はこの他にも数冊あり、こういった点からも、たとえば読売の政治部と新潮社の関係がうかがわれる)。
まあ今回の記事のネタ元が誰で、どんな経緯で掲載されたかは知る由もないが、しかしここ最近の報道ステーションの原発報道をふり返ってみると、やはり何かしらの「意図」を感じずにはいられない。そこで、以下に私の推測を週刊誌風に書いてみよう。
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原子力ムラの虎の尾を踏んだ? 古館伊知郎
いま売りの「週刊新潮」に『「テレビ朝日」看板番組の裏の顔 「報道ステーション」は闇金融に手を染めた』という記事が掲載されている。なんともはや、おだやかでないタイトルだ。早速、その裏を追ってみた。
「古館が虎の尾を踏んだんですよ」と声を潜めて話してくれたのは、テレビ朝日に近い関係者。
「報道ステーションは視聴率もいいし、バックに権力べったりの朝日新聞がついているから、内容も何の問題もなかったんです」
ならなぜ、今ごろ、こんなネタが出てきたのか。関係者が続ける。
「古館の原発に対するスタンスです。とくに福島第一原発については収束したというのが業界の一致した報道基準。もはや過去の話であって、大々的にフレームアップする必要はない。むしろこれからは、広告復活に向けて電力業界と一致協力するというのが放送関係者の基本路線です。ところが古館が妙に原発に対して突っ張り始めたので、局のトップも心配していました……」(前出・関係者)
確かにここのところ、古館は原発に対してマスコミ的には尖ったコメントをし続けていたが、その発端となったのは、今年3月11日に放送されたスペシャル番組だった。古館はその中でこうコメントしたのだ。
「原子力村という村が存在します。 都会はこことは違ってまばゆいばかりの光にあふれています。 そして、もう一つ考える事は、地域で主な産業では中々暮らすのは難しいという時に、その地域を分断してまでも、積極的に原発を誘致した、そういう部分があったとも考えています。その根本を、徹底的に、議論しなくてはいけないのではないでしょうか。私はそれを強く感じます。 そうしないと今生活の場を根こそぎ奪われてしまった福島の方々に申し訳が立ちません。私は日々の報道ステーションの中でそれを追求していきます。もし圧力がかかって番組を切られても、私はそれはそれで本望です。」
ここから「報道ステーション」でマスメディアとしては“異例の”原発報道が始まった。これに対しては、テレビ朝日の中からも心配する声が上がったという。語るのは広告関係者。
「あの古館発言は禁句です。そもそも原子力ムラの中にはマスメディアも含まれていて多額の広告費が流れていました。3.11後もその流れはまったく変わっていません。にもかかわらず、その秩序を乱すのは、まさに虎の尾を踏む行為です」
一方、こんな見方もある。
「それでも最初のうちは容認されていたのです。あまり踏み込みさえしなければ、この程度の番組はむしろガス抜きになるという見方もありました。ただ、ここへきて首相官邸前での脱原発デモの規模が大きくなり、全国的な広がりを見せ始めたことで原子力ムラにも危機感が募ってきました。その流れで「報道ステーションもそろそろ叩いておかないと」ということになったんでしょうね」(放送関係者)
では報道ステーションはどうなるのか?
「週刊新潮はもともと権力にもっとも近いメディアで、これまでも反原発運動などを叩いてその見返りに広告をもらってきました。新聞や放送とはまた違った役割を持った権力の別働隊です。今回は原子力ムラがそういう雑誌を使って『これ以上やったら許さないよ』というシグナルをテレビ朝日に対して送ったのでしょう。もちろんそのことは番組関係者だってわかっています」(雑誌関係者)
今後の報道ステーションに要注目だ。
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