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「しんぶん赤旗」 2012年8月16日(木)
いまメディアで/大手紙、大義なき暴走/消費税増税あおった大罪
民主・自民・公明3党の増税連合による消費税増税強行がいかに大義のないものであったかは、増税法成立後も反対の声が過半数を維持していることを見ても明らかです。この大義なき暴走をけしかけてきたのが「朝日」「読売」「毎日」「日経」「産経」といった大手全国紙です。「権力の監視」というジャーナリズムの原点を投げ捨てた巨大メディアの暴走ぶりを検証します。(メディア取材班)
叱咤激励から戦術指南まで
大手全国紙は昨年9月、消費税率10%への引き上げの具体化などを掲げた野田内閣が発足すると一様に歓迎、「先送り政治からの決別を」(「朝日」)、「『もう後はない』覚悟を」(「毎日」)など、増税断行へ叱咤(しった)激励しました。「読売」はそのために、自民、公明両党との「大連立の実現」を催促しました。
以来、増税法案の閣議決定(3月30日)、民自公3党合意(6月15日)、衆院通過(6月26日)、参院採決・成立(8月10日)など政局の節目にあわせて集中的な増税応援キャンペーンを行い、野田内閣が増税路線から後戻りしないよう「監視」を続けてきたのです。
叱咤激励から戦術指南まで手取り足取りの応援ぶりを、「朝日」社説に見てみると―。
増税論者の民主党・岡田克也氏が「一体改革」担当の副総理として入閣すると、ここぞチャンスとばかりに、「岡田氏入閣 一体改革の先頭に立て」(1月14日付)という社説をかかげ、以後、「消費税増税 自治体も責任を果たせ」(1月24日付)、「谷垣総裁へ 自民こそ増税法案を」(1月27日付)とたたみかけます。
民自公3党合意をはさんで衆院通過にいたる1カ月間には実に14本、2日に1本の割合で応援社説をかかげました。「首相が陣頭指揮に立て」(6月5日付)と求めた翌6日には、自民党に「責任野党の矜持(きょうじ)を示せ」と迫り、民主党内で小沢一郎氏のグループが造反の動きを見せると、「小沢元代表 矛盾だらけの増税反対」(6月19日付)、「小沢氏の造反 大義なき権力闘争だ」(6月23日付)とけん制する念の入れようです。
政権の暴走をチェックするどころか、けしかけ続けてきた大手全国紙の姿は、侵略戦争をあおり日本の進路を誤らせた戦前の新聞の過ちをほうふつとさせるものです。
ここまで横並び言論の自殺行為
「一体改革の先頭に立て」(「朝日」)、「一体改革実現へ総力あげよ」(「読売」)、「首相こそ説明の先頭に」(「毎日」)、「岡田副総理をテコに一体改革を進めよ」(「日経」)―今年1月の内閣改造時の各紙社説の見出しですが、新聞社名を隠したらどれがどこの社説かわかりません。
このときに限りません。法案が閣議決定されたときには「やはり消費税増税は必要だ」(「朝日」)、「民・自合意に全力挙げよ」(「毎日」)、「首相はぶれずに突き進め」(「日経」)と役割分担し、増税法案が成立したあかつきには「『新しい政治』の一歩に」(「朝日」)、「首相の『国益優先』を支持する」(「読売」)、「『決める政治』を続けよう」(「毎日」)と礼賛したのです。
権力への翼賛・横並びもついにここまできた―これでは独立した言論機関の自殺行為だと言われても仕方ありません。
ところが、それさえ「当たり前」「何が悪いのか」という雰囲気が、メディアの世界を覆っていることは深刻です。
読売新聞の渡辺恒雄会長は、ことし1月5日の読売賀詞交換会でこう語っています。
「他の新聞も少しずつ反省して今度は消費税もTPPも全国紙はみな賛成に回って、現実主義的になってきた。しかし、いつも変わらず、世論全体を引っ張っているのは読売新聞だ」(「新聞之新聞」1月20日号)
「朝日」1月8日付のコラム「消費増税 再生の一歩に」(星浩編集委員)は、「権力監視が仕事であるメディアが『増税を容認する』ことへの疑問はあるだろう。しかし、先進各国で財政赤字が膨らみ、危機からの脱出策を探っている現在、メディアの役割は『監視』だけでは済まない。国の再生に向けて、政治に『結果』を求めることが必要になってきた」と書きました。
消費税に頼らない別の道があるという提案の中身をまともに吟味することもなく、それを国民に知らせるという報道機関の最低限の役割さえ果たさないでおいて、なぜ消費税増税が「現実主義的」で「国の再生」につながると断言できるのか。
消費税増税をめぐる大手全国紙の一連の報道姿勢は、「権力の監視」「真実の報道」というジャーナリズムの原点から離れ、権力と一体化した巨大メディアの堕落した姿を示しています。
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