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■首相と白川総裁 正しいのは…
日銀は安倍晋三首相の強い要請を受けて、「2%のインフレ目標」導入について検討中だ。しかし、安倍首相と白川方明(まさあき)日銀総裁の間にはインフレ目標やそれを達成するための金融政策をめぐって重大な齟齬(そご)がある。安倍首相は日銀が脱デフレ、円高是正はもとより、雇用拡大にも責任があるとみているのに対し、白川総裁はひたすら金融政策の限界を強調し、インフレ目標達成に日銀が縛られるのを極度に警戒している。どちらが正しいのか。
白川氏は昨年12月28日、日経新聞とのインタビューで、脱デフレについて、「日銀の生活者調査では国民の8割以上が物価上昇をどちらかというと望ましくないと回答している。一方で同じ国民がデフレからの脱却を望んでいる。国民が求めるデフレ脱却とは景気を良くしてほしいということと同義で、雇用が確保されて賃金も上昇し、企業収益も増えてその結果として物価も上がっていくという経済成長を実現することだ」と述べている。
安倍首相は、今月(1月)9日に開かれた経済財政諮問会議で白川氏の目の前で、「10年以上デフレが続き、相当のことをしないとマインドが変えられない。これまでと次元の違う政策によってインフレ期待を起こし、成長を高めていかないと税収が上がらず財政再建もできない」と述べた。10日の日経とのインタビューでは、「日銀の金融政策で雇用の最大化に努めるべき」とも強調した。
■主婦感覚の置き換え
両者の違いは物価や実体経済に対する金融政策の役割の評価にある。
経済学上、デフレとは物価が全般的に下がり続けるという予想が経済社会に定着している状態であり、逆に物価が全般的に上がり続けるという予想が広がっている場合がインフレである。安倍首相はそれをきちんと踏まえているが、白川氏はそれを無視して、「物価が下がることはよいし、上がることを望まない」という主婦感覚の答えに置き換えている。主婦が値上がりを嫌がるのは当たり前である。
もっとも、国民はバカではない。「国民がデフレからの脱却を望んでいる」と答えるのは、デフレ下では収入が物価以上に下がるし、新卒の息子や娘が非正規の雇用の場しかないことを実感として知っているからである。
白川氏はそこで、論理を飛躍させる。まず景気をよくしろ、そうして需要が増えて物価が上がれば、めでたく「脱デフレ」だと。景気をよくするためには、金融よりも政府の政策が脱デフレ実現のためには大事ですよ、とささやくのである。
■自己否定の発言
★上記の通り、デフレやインフレとは「予想」によって決まる。
予想を決定づけるのは財政政策でも産業政策でもなく、規制緩和でもない。金融政策である。物価がマイナスで続くという予想が続く限り、消費者は消費を手控え、企業は新規や増産のための設備投資を見送り、手元の資金を現金、銀行預金や国債などで運用する。企業の手元の余剰資金(「内部留保」)は昨年9月末で約273兆円、10年間で5割も増えた。カネが実物経済に流れ込まないから、不況が慢性化する。物価は過去14年間で数%しか上がっていないが、GDPは1割、サラリーマン収入は15%も下がったのである。
インフレ目標とは、このデフレ予想を逆転して全般的に物価が上昇すると予想させるための手段で、最も効果的なのが金融政策である。まず中央銀行がお札を継続的に大量発行して、金融市場に流し込む。資金はまず不動産や株式市場に流れ、資産価格を引き上げる。円を大量発行するのだから、外国為替市場で円が売られて、円安となり、輸出企業をはじめとする企業収益の好転予想が広がって株価が上がる。現実に「安倍発言」を受けて市場はそう反応している。あとは、日銀がインフレ目標達成まで大胆な緩和策を続けるとコミットメントすることで、円安・株高が定着していく。そのプロセスの中で、消費者心理の好転や企業の設備投資意欲が回復し、徐々に実物経済が上向いていく。その前提になるのが「インフレ目標」で、実際にインフレ率が2%になるのではなく、★そう思わせることが目標のポイントである。
ところが白川氏は、「金融政策だけではデフレから脱出できない」という趣旨の発言を繰り返し、物価予想に対する金融政策の効力を認めようとしない。それは、中央銀行が金融政策の効果を否定するなら、日銀は不要、つまり自己否定に通じる。
筆者は、安倍氏が日銀総裁になったほうが適切だと思えるほどだ。安倍氏はだれを白川氏の後任に選ぶだろうか。 (田村秀男)
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