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急速な円安 対日輸出企業は「パニック」=韓国 
http://www.asyura2.com/12/hasan78/msg/873.html
投稿者 赤かぶ 日時 2013 年 1 月 14 日 11:45:00: igsppGRN/E9PQ
 

http://japanese.yonhapnews.co.kr/headline/2013/01/13/0200000000AJP20130113001700882.HTML
2013/01/13 17:06  聯合ニュース


【東京聯合ニュース】東京に進出している韓国のソフトウエア企業の支社長は11日、ウォンの対円相場が100=1200ウォン台前後で取引されているとのニュースに深いため息をついた。同企業は3カ月ごとに韓国の本社に送金している。金額は4億円程度だ。

 昨年10月の対円相場、100円=1400ウォン台を維持していれば送金額は56億ウォン(約4億7300万円)となっただろうが、100円=1200ウォンとウォン高・円安が進んだため48億ウォンに減った。減少額は8億ウォンに上る。11日には100円=1100ウォン台となり、減少額は9億ウォンに膨らんだ。

 IT企業よりも打撃を受けているのは製品の利幅が薄く、決済期間が短い食料品メーカーや化粧品メーカー。マッコリを輸出しているある企業の関係者は「為替レートが変わっても韓国からの仕入れ値を突然下げるわけにもいかず、日本での販売価格を引き上げることもできないため被害を被るしかない」と話している。

 食料品を輸出する企業の場合、為替レート以外の影響も受けている。韓流ブームに乗り日本に進出した韓国の多くの食品会社は昨年、独島をめぐる対立により韓日関係が冷え込んだ影響で売り上げが減少した。辛うじて在庫を処分し、新たに商品を仕入れる時期にウォン高・円安が進み、二重の打撃を受けた。

 韓国農林水産物流通公社(aT)東京支社のキム・ジンヨン支社長は「ダブルパンチの状況だ」と話している。過去3〜4年の円高の時期に日本に進出した企業が感じる衝撃はより大きい。

 一部ではウォンの対円相場が100円=1000ウォンを下回る場合は日本から撤収する企業もあると予想したり、2006年のように100円=700ウォン台までウォン高・円安が進む可能性も出てくるのではないかとの懸念の声もある。

 また、一方では一喜一憂する必要はないとの主張もある。IT企業、アールサポート東京支社のアン・チョンホン支社長は「われわれは100円=700ウォンだった2006年に日本に支社を開設した。為替レートは上昇したり下落したりするので製品で勝負するしかない」と話す。

 aTのキム支社長も「100円=1000ウォン〜1200ウォン程度が適切だという企業もある。このような時こそ輸出企業は取引先と決済条件を調整しながら売り上げを伸ばす方法を模索すべきだ」と述べた。


 

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コメント
 
01. 2013年1月14日 18:08:32 : Y28uZ2IjEw
15%が20%円安に振れれば韓国も厳しくなるだろう。サムソン、ヒュンダイにお任せするしかないね。

02. 2013年1月14日 20:52:55 : tc9BlcZSeQ
にほんの会社は円高で潰れまくったんだぞ。自分のことしかない半島人。

03. 2013年1月14日 23:35:37 : smIgroqNsM
ロッテと農心は、大丈夫だろうな。
多種多様な、スーパーテクニックを使うだろうし。
(わからない方はググッてね。)

ただ、CJ(第一製糖)や露眞とかは、苦しいだろうな。

正直、CJの食品はうまいし。露眞は悪酔いしないので
撤退しないでほしいです。


04. 2013年1月15日 05:37:53 : UFRir3KgoQ
>03さん
半島通だねえ。

05. 2013年1月15日 12:26:22 : o0cdRtTAsk
潰したのは経団連だからな

生産拠点を海外に建設した経団連大手にしてみれば
円高になればなるほど在庫移動で利益がでる

反対に日本から移動する品目には
戻し税適用で損失分を確保

円高とは経団連の業者潰しが目的

潰して中小企業の知的財産の接収
こんな奴らだ


06. 2013年1月15日 14:09:09 : Pj82T22SRI
焦点:「アベノミクス」による円安、韓国経済に恩恵も
2013年 01月 15日 13:50 JST  

トップニュース
原発輸出は「今後も進める」、エネ政策議論で組織変更の意向=経産相
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米GMキャデラックの「ATS」、北米カー・オブ・ザ・イヤーに
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[ソウル 15日 ロイター] 日本の安倍政権が掲げる「アベノミクス」を拠り所とする円安は、現代自動車(005380.KS: 株価, 企業情報, レポート)など韓国の大手輸出企業にとっては脅威だが、韓国次期政権は積極的な対応策は望んでいない。ウォン高は実際のところ韓国経済の強化につながる可能性があるからだ。

ウォン高を受けて大手輸出企業株は下落している。しかし韓国の経常収支が過去最高の黒字を記録しているという理由だけでなく、ウォン高は輸出依存型経済からの脱却を後押しする可能性があるため、政府高官らはウォン高容認の姿勢を示し始めた。

来月下旬に就任する朴槿恵・次期大統領は、韓国の輸出主導型経済モデルは時代遅れだと言明。輸出企業はもはや十分な雇用を提供していないため、内需型産業の強化に焦点を絞ると述べている。

有権者の考え方も変化したようだ。KBSテレビが今月報じた世論調査によると、国民は低インフレと経済の安定を最重要の経済課題と考えている。5年前の前回大統領選後に実施された同様の調査では、経済成長の推進が首位に挙げられていた。

多くの有権者は現在、ウォン安は現代自動車やサムスン電子(005930.KS: 株価, 企業情報, レポート)など主要輸出企業に対する実質的な補助金であると同時に、庶民の購買力を奪っていると見ている。

HSBC(香港)のアジア経済担当共同ヘッド、フレデリック・ニューマン氏は「通貨の段階的な上昇には多くの恩恵がある。1つは家計の購買力強化。加えて製造業部門に生産性向上を促す効果もある」と述べた。

<輸出企業に打撃>

アベノミクスで特に強い打撃を受けるのは、世界中で日本車と競合する韓国の自動車メーカーだ。

円が対ドルで約2年半ぶりの円安水準に下がっていると同時に、ウォンは先週、対ドルで2011年8月以来の高値を付けた。

原理上、トヨタ自動車(7203.T: 株価, ニュース, レポート)は現在、利益を失わずに米顧客向けに10%以上の値引きを提供できるのに対し、現代自動車はドル建て価格を5%以上引き上げる必要がある。

現代自動車グループのある幹部は「ウォン高はわれわれの収益に影響しやすい要因だ。われわれはウォン高で苦悩している」と述べた。

韓国自動車調査研究所(KARI)が12月発表した報告書によると、円が対ウォンで1%下落すると韓国の自動車輸出は年間1.2%縮小する。

韓国は戦後、通貨安を利用して製造業輸出を拡大してきた。トムソン・ロイター・データストリームによると、ウォンの実質レートは2000年代初頭までの30年間で円に対して約80%下落した。

<雇用拡大に結び付くサービス業>

朴次期首相は内需部門および中小企業型産業の拡大を目指すと表明。財閥企業に対してはレイオフを考え直すよう呼びかけている。

朴氏は大統領選勝利後「財閥企業は利益最大化を経営の目的に据え続けるのではなく、より大きな社会との共存追求を視野に入れるべきだ」と述べた。

朴氏の政策の詳細が発表されるのは来月だが、これまでの発言に照らすと中小企業による金融市場および規制上の支援措置へのアクセスが容易になりそうだ。

朴氏の与党セヌリ党の執行部メンバーは12月初め、ロイターに対し、輸出企業支援型の為替政策から脱するべきだとの考えを示した。

セヌリ党のLee Hye-hoon氏は「為替レートの変化には常に勝者と敗者がいる。輸出企業と一部大手企業を支えるために(ドル/ウォン)レートを高水準に維持する政策には反対だ。一般国民の生活費が上昇するからだ」と述べた。

その上、製造業は以前ほど国内で雇用を生み出さなくなっている。機械化に加え、コストの低い海外に工場が移転した結果だ。

中央銀行のデータによると、非農業部門就業者に占める製造業部門の割合は2004年の20%強から着実に下がり、2011年には18%となった。この間、国内総生産(GDP)に占める製造業部門の割合は拡大している。

<ウォン正常化はスピードが問題>

韓国のサービス産業は雇用において重要な役割を果たしているが、労働生産性では製造業に大きく後れを取っている。政府は輸出に重点を置き、昨年1─9月のGDPに占める輸出比率は57%と、2007年の43%から拡大した。

野村インターナショナル(香港)のエコノミスト、Young Sun Kwon氏は「ウォンは依然、幅広い通貨に対して過小評価されており、最近の動きは正常化だ」と言う。

しかし政策当局者らはウォンの急激過ぎる上昇、あるいは為替レートのボラティリティ上昇について、輸出入企業に打撃を及ぼすだけでなく、韓国の金融安定も損なうと懸念している。

為替政策に携わる高官は「われわれにとって最大の懸念材料は、ウォン高が自己実現し、投機的な取引の結果として短期の対外負債が増大しかねないことだ」と述べた。

(Choonsik Yoo記者)

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景気は当面弱めに推移、強力な金融緩和「間断なく推進」=日銀総裁
2013年 01月 15日 10:31
[東京 15日 ロイター] 日銀の白川方明総裁は15日開かれた支店長会議であいさつし、景気の先行きについて「当面弱めに推移するとみられる」と述べた。その後は、内需が底堅さを維持し、海外経済の減速脱出につれて「緩やかな回復経路に復していく」と展望した。

その上で、日本経済のデフレからの早期脱却が「極めて重要な課題」とし、実質的なゼロ金利政策と資産買入基金の着実な積み上げを通じ、「強力な金融緩和を間断なく推進していく」とした。

白川総裁は景気の現状に関し、「輸出や鉱工業生産は、海外経済の減速した状態が続いていることなどから、減少している」と語った。企業の景況感は「製造業を中心に慎重化している」とし、設備投資は「非製造業に底堅さがみられる」ものの、「全体として弱めとなっている」との認識を示した。一方、個人消費は底堅さを維持しているが、エコカー補助金制度の終了に伴う反動減の影響も残っていると指摘。公共投資は増加を続け、住宅投資も「持ち直し傾向」にあると述べた。物価は、生鮮食品を除く消費者物価の前年比が「当面ゼロ%近傍で推移するとみられる」とした。

日本の金融システムは「全体として安定性を維持している」とし、こうした中で「金融環境は緩和した状態にある」と語った。

世界経済については「減少した状態が続いている」と指摘。この間、国際金融資本市場では、欧州債務問題を背景とした投資家のリスク姿勢は「このところ後退」しているが、今後の市場の展開には「引き続き十分注意していく必要がある」と語った。

日本経済のリスク要因では、1)欧州債務問題の今後の展開、2)米国経済の回復力、3)新興国・資源国経済の持続的な成長への円滑な移行、4)日中関係の影響──などをあげ、「日本経済をめぐる不確実性は引き続き大きい」と警戒。金融・為替市場動向の景気・物価への影響にも「引き続き注意が必要」とした。

その上で白川総裁は、日本経済のデフレからの早期脱却と持続的な成長経路への復帰が極めて重要な課題と位置づけ、こうした課題の実現には「幅広い経済主体による成長力強化の努力と金融面からの後押し」が不可欠と指摘。日銀として「引き続き適切な金融政策運営に努める」と述べるとともに、市場動向を十分注視し、日本の金融システムの安定確保に「万全を期していく方針」を表明した。

(ロイターニュース 伊藤純夫) 
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金融政策について安倍自民総裁と議論しなかった=日銀総裁 2012年12月18日
10─12月は日中関係の影響が明確に出る=日銀総裁 2012年11月26日
緩和方針で応酬、物価上昇率の表現で修正提案も=日銀議事要旨 2012年11月26日
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTYE90E01320130115?sp=true


07. 2013年1月15日 21:37:50 : Pj82T22SRI
11月のユーロ圏貿易収支は予想以上に黒字拡大、輸出が急増
2013年 01月 15日 20:10 JST
[ブリュッセル 15日 ロイター] 11月のユーロ圏貿易収支は予想以上の黒字を計上した。輸入が横ばいにとどまる一方で輸出が急増し、域内の需要がリセッション(景気後退)で低迷している一方、輸出競争力が高まっていることが示された。

ユーロ圏統計局(ユーロスタット)によると、11月の貿易黒字は137億ユーロ(季節未調整)。前年同期の49億ユーロから黒字幅が急拡大した。輸入が横ばいだったのに対し、輸出が5%増加し、貿易黒字を押し上げた。

ロイターがまとめた市場予想は100億ユーロの黒字で、予想を上回る黒字となった。

1―11月では輸入が前年同期比2%増にとどまったのに対し、輸出は8%増加した。

1―11月のデータは詳細が明らかにされていないが、1―10月のデータに基づけば、機械、自動車、その他工業製品の輸出が拡大し、原油およびガスの輸入コスト増を相殺した。

季節調整ベースでは11月の貿易黒字は110億ユーロで、10月の74億ユーロから増加。輸入が前月比1.5%減少した半面、輸出は0.8%増加した。

1―10月のデータを国別にみると、ドイツの貿易黒字が前年同期の1290億ユーロから1580億ユーロに拡大。

イタリアは253億ユーロの赤字から66億ユーロの黒字に大きく改善した。

債務問題で国際社会から支援を受けている国々も貿易収支が改善し、ポルトガルは1―10月の赤字が前年同期の142億ユーロから91億ユーロに縮小。ギリシャの赤字も188億ユーロから132億ユーロに縮小した。

 


第4四半期独経済は0.5%のマイナス成長、年間の成長率は0.7%に鈍化
2013年 01月 15日 20:13 JST
[ウィースバーデン(ドイツ) 15日 ロイター] ドイツ連邦統計庁によると、第4・四半期の国内総生産(GDP)伸び率(速報値)はマイナス0.5%となり、第3・四半期の0.2%からマイナス成長に落ち込んだ。ユーロ圏債務危機が輸出や企業の投資を圧迫した。

その結果、2012年のGDP伸び率(速報値)は前年比0.7%となり、2011年の3.0%から大幅に鈍化した。

ドイツ経済は2010年に東西統一後最も高い4.2%の成長を遂げた後、2011年の成長率は3.0%に鈍化。2012年は欧州債務危機の影響から逃れられず、さらに大きく鈍化したことが裏付けられた。

2012年の成長率は、ロイターが30人のエコノミストを対象に実施した調査で予想されていた0.8%も下回った。

INGのエコノミスト、カルステン・ブレゼスキ氏は「ドイツ経済は『幸福の孤島』だったが、もはやそうではなくなった。ただ、リセッション(景気後退)に見舞われているユーロ圏の中で、少なくとも『成長の孤島』ではあるようだ」とコメントした。

ドイツ連邦統計庁は「過去2年のGDP成長率ははるかに高かったが、それは2009年の世界的な危機の後の回復プロセスによるものだ」と指摘した。

多くのエコノミストは、今後はドイツ経済が回復に向かうと予想しているが、2013年は依然として低成長にとどまるとみられている。

ドイツ政府は16日に2013年の経済成長見通しを明らかにする予定だが、15日付のハンデルスブラット紙は、1.0%から0.5%に引き下げられる見通しだと伝えた。

ただ、ドイツ経済は第4・四半期のマイナス成長から急速に回復する兆しが現れており、12月は8カ月ぶりに民間セクターが拡大したほか、企業の景況感も5カ月ぶり高水準に回復した。

連邦統計庁によると、2012年の公的セクター財政収支は対GDP比0.1%の黒字となり、2007年以来の黒字を回復した。2011年は対GDP比で0.8%の赤字だった。
 


08. 2013年1月15日 22:47:42 : Pj82T22SRI
  Q:「アベノミクス」のどこが新しいのか 

 話題の「アベノミクス」を乱暴に要約すると、「国土強靱化のために公共投資を増
やす」「マネーの供給量を増やして流動性を高める」ということになるかなと思いま
す。これまでの金融・財政政策と比べてみて、「アベノミクス」のどこが新しいので
しょうか。

----------------------------------------------------------------------------
                                  村上龍
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 ■ 北野一   :JPモルガン証券日本株ストラテジスト

 どこも新しくないと思います。国土強靭化のために向こう10年で100〜200兆円の公
共投資を増やすということですが、その昔、海部内閣は日米構造協議を受け向こう10
年間で総額430兆円の公共投資基本計画を策定しました。一方、2003年から2004年に
かけては、日銀が当座預金残高目標を随時引き上げる中、30兆円以上の円売り介入を
実施しました。成長戦略についても、何度も繰り返し策定されてきたのは、ご案内の
通りです。

 今回、アベノミクスが注目されるのは、株式相場や為替相場が、政策の正しさを肯
定しているように見えるからでしょう。もし、株高にも円安にもなっていなかったら、
メディアも好意的に取り上げていなかっただろうし、専門家も低い評価しか与えな
かったのではないでしょうか。

 ところで、こうした株高や円安は、アベノミクスを期待した動きなのでしょうか。
私は、必ずしもそうではないと思います。「仮定」の話は、意味がないのかもしれま
せんが、私は、政権交代がなくても、安倍首相でなくても、株式相場や円相場は、現
在の水準に至っていたのではないかと考えております。そういう可能性をも考えなけ
れば、政策の評価もできないのではないでしょうか。

 では、順番に、具体的に考えて行きましょう。まず、総選挙の直前の経済状況を思
い出してみましょう。当時、日本経済は、すでに景気後退入りしていたと考えられて
おりました。12月7日に発表されたESPフォーキャスト調査によると40人のエコノミス
トのうち34人が「すでに景気の山は通り過ぎた」と回答しておりました。当然、株式
相場に対して積極的な参加者少なかったと思われます。外国人投資家を持ち上げる風
潮は相変わらずですが、11月に予定していた私のアメリカ出張は、日本株への需要が
ないという理由でキャンセルになりました。このような「空気」が支配的であったこ
とは、相場を考える上で、忘れてはならないことです。

 ところで、こうした景気に対する悲観的な見通しは、ここ数年、毎年のように繰り
返されております。内閣府の月例経済報告を見ますと、2010年9月、2011年10月、そ
して2012年8月と景気見通しを弱気に転換しております。そして、興味深いことに、
毎回、彼らが景気見通しを弱気に転換したころから株式相場が上昇に転じております。
だいたい、弱気転換から100営業日で15%上昇しております。今回も、ある意味で、
これと同じことが起きたといえます。市場参加者が弱気になることによって、相場反
発、上昇へのエネルギーが蓄積されていきます。誰も株を買ってないのだから、上が
りやすくなると言うことです。
 
 ただ、それには、何らかの「きっかけ」は必要かもしれません。今回は、絶妙のタ
イミングでアベノミクスが発表されたということなのでしょうか。私は、それも違う
と思います。まず、日本企業の企業収益が何の関数かを確認しておきましょう。財務
省の法人企業統計年報の全産業ベースの営業利益の推移をみると、ほぼ鉱工業生産と
連動していることが分かります。一方、この営業利益とドル円相場には、ほとんど相
関がありません。

 したがって、企業業績の回復を期待するには、生産が増える証拠をつかまねばなら
ないことになります。では、日本の鉱工業生産は、何の影響を強く受けているので
しょうか。それは言うまでもなく、アメリカを中心とする世界の景気循環です。なお、
生産と円相場の間にも、明確な相関はありません。円相場を1年あるいは2年先行させ
ても相関係数は高くなりません。そのアメリカの鉱工業生産を見る上で、参考になる
のは在庫循環です。

 在庫循環に注目するのは、お医者さんが患者さんの胸に聴診器を当てるような基本
動作です。読者の皆様も、出荷と在庫を縦軸と横軸にとった図表をご覧になったこと
があるでしょう。アメリカの在庫循環は、11月分の統計で、いわゆる45度線を下から
上に抜けてきたことを確認しました。景気の調整が終わったことを確認できたのです。

 さて、ここに、ずっと情報を遮断された部屋に隔離されていた株式投資家、あるい
はエコノミストがいたとします。その彼に、二つの情報を与えます。(1)市場参加
者は景気見通しに対して、極めて悲観的になっている。40人中34人が景気後退だと
言っている。(2)アメリカの在庫循環をみると、在庫調整の終焉を確認できた。こ
の二つの情報をもとに、株式相場を予想してもらうとどうなるでしょうか。おそらく、
ほとんどの株式投資家、あるいはエコノミストは、株式相場は上昇すると予想するで
しょう。それが、足元でも起きていたと言えます。株式相場の値幅も、2010年、2011
年の踊り場脱却局面と、それほど大きな違いはありません。

 また、リスクオフだから円高になっているというのは、為替アナリストの方々が良
く使う説明です。以上の(1)と(2)の組み合わせは、リスクオンへの転換を意味
しますから、それで円安になったことも説明できるでしょう。

 こうした事情を反映した相場変動にアベノミクスが掉さす結果になったことまで否
定はしませんが、最近の専門家の解説を聞いていると、あまりにも以上の「ファンダ
メンタルズ」を無視しているのではないかと思います。これを無視して、株高、円安
とアベノミクスを結びつけると、「市場が、政策を肯定している」という解釈になり
ます。そうした市場の値動きが「新しい」という印象になるのかもしれません。

 先日、ぼんやりとワイドショーを見ておりますと、コメンテーターの方が、今回は
政府も日銀も「本気」だから期待できると発言しておりました。「本気」って何で
しょうか?「本気」に見えるのは、市場の反応を見ているからではないですか。では、
市場の反応は、アベノミクスだけで説明できるのでしょうか。繰り返しになりますが、
私は、そうは思いません。そのあたりも含めて、我々は、考える必要があるのではな
いでしょうか。

 ところで、以上の説明では、日本株が欧米の株以上に上昇している理由まで説明で
きません。昨年の秋以降、日本株が特に出遅れていたのは、領土問題に端を発する中
国リスクの影響が大きかったと思います。その中国リスクを抱え込むはめに陥ったの
は、原発ゼロを目指す硬直的なエネルギー政策の故であったと私は思います。中国リ
スクと原発ゼロの関係についての説明は長くなるので省略しますが、今回の総選挙の
結果として意味があったのは、柔軟なエネルギー政策の策定が可能になったことで
しょう。それが安倍政権になってより明確になりました。こうした中国リスクの低下
が日本株のキャッチアップをもたらしたと言えるでしょう。

 敢えて言うなら、政権交代の意味は、エネルギー政策に柔軟性を取り戻したことだ
と思います。

                 JPモルガン証券日本株ストラテジスト:北野一


 

小笠原誠治の経済ニュースに異議あり! トップ |

クルーグマン教授は安倍総理を褒めているのか?
2013/01/15 (火) 13:30


 クルーグマン氏:アベノミクス「結果的に完全に正しい」(毎日新聞)

 結果的に完全に正しい?

 はてさて、クルーグマン教授は安倍総理の経済政策を評価しているのでしょうか?

 これだけではなんとも判断し難い。但し、そもそも強力な金融緩和と積極的な財政出動をクルーグマン教授は長年主張している訳だから、彼が安倍総理の考えを否定するとは到底思えない。

 彼は何と言っているのか? 原文を確認することにしましょう。

 For three years economic policy throughout the advanced world has been paralyzed, despite high unemployment, by a dismal orthodoxy. Every suggestion of action to create jobs has been shot down with warnings of dire consequences. If we spend more, the Very Serious People say, the bond markets will punish us. If we print more money, inflation will soar. Nothing should be done because nothing can be done, except ever harsher austerity, which will someday, somehow, be rewarded.

「過去3年間、先進国の経済政策は、高い失業率にも拘わらず陰鬱な正統派理論のために機能マヒを起こしている。雇用を創出するためのあらゆる提案が、大変な結末をもたらすだけだからという理由で拒否されてきた。これ以上財政出動をするならば、国債市場が罰を与えると『生真面目な人々』は言う。これ以上お札を印刷すれば、インフレが起きる、と。何もすることができないのだから何もすべきでない、緊縮財政措置を除いては、と。そして、緊縮財政はいつの日か報われるだろう、と」
 
  But now it seems that one major nation is breaking ranks -- and that nation is, of all places, Japan.

 「しかし、ある一つの国が列を乱そうとしている。その国とは、こともあろうに日本であるのだ」

This isn't the maverick we were looking for. In Japan governments come and governments go, but nothing ever seems to change -- indeed, Shinzo Abe, the new prime minister, has had the job before, and his party's victory was widely seen as the return of the "dinosaurs" who misruled the country for decades. Furthermore, Japan, with its huge government debt and aging population, was supposed to have even less room for maneuver than other advanced countries.

 「これは、我々が探していた異端者ではない。日本では、政権は直ぐに替わる。しかし、何も変わるようにはみえない。実際、新しい総理の安倍晋三はかつて総理の座にいたことがあり、自民党の勝利は、何十年もこの国を間違った方向に導いてきた「恐竜」の復活と見られている。さらに、その政府が多額の借金を抱え、しかも高齢化が進展しつつある日本は、他の先進国よりも選択の余地が乏しいと見られてきた」

But Mr. Abe returned to office pledging to end Japan's long economic stagnation, and he has already taken steps orthodoxy says we mustn't take. And the early indications are that it's going pretty well.

「しかし、安倍氏は、日本の長く続いた経済停滞を終わらせると約束して政権の座に復帰し、そして、正統派が決して採用してはいけないという政策を既に取っている。そして、最初の兆候としては、非常に巧く行っている」

Some background: Long before the 2008 financial crisis plunged America and Europe into a deep and prolonged economic slump, Japan held a dress rehearsal in the economics of stagnation. When a burst stock and real estate bubble pushed Japan into recession, the policy response was too little, too late and too inconsistent.

「背景を少々説明する。2008年の金融危機が米国と欧州を深刻で長引くスランプに陥れたその時よりも遥か前に、日本は経済停滞の『稽古』をしていた。そして、バブルが弾けて日本が不況に陥った時、日本の政策対応は余りにも規模が小さく余りにもタイミングを失し、そして政策の一貫性に欠けたものでしかなかった」

To be sure, there was a lot of spending on public works, but the government, worried about debt, always pulled back before a solid recovery could get established, and by the late 1990s persistent deflation was already entrenched. In the early 2000s the Bank of Japan, the counterpart of the Federal Reserve, tried to fight deflation by printing a lot of money. But it, too, pulled back at the first hint of improvement, and the deflation never went away.

「確かに、公共事業は相当の規模に達したが、借金を心配する政府は、常に経済回復が本格的なものになる前にそうした政策を引っ込めてしまい、そして、1990年代の終わりに達する頃には、完全なデフレ状態に陥ってしまった。2000年代の初め頃、米連銀のカウンターパートである日本銀行は、お金を大量に刷ることによってデフレと戦おうとした。しかし、日銀もまた、改善する前にそうした措置を撤回してしまい、デフレは居座ってしまった」

That said, Japan never had the kind of employment and human disaster we've experienced since 2008. Indeed, our policy response has been so inadequate that I've suggested that American economists who used to be very harsh in their condemnations of Japanese policy, a group that includes Ben Bernanke and, well, me, visit Tokyo to apologize to the emperor. We have, after all, done even worse.

「但し、日本は、2008年以降我々が経験している雇用問題には直面していない。実際、米国の政策対応は余りにも不十分であったので、かつて日本の政策を非難したバーナンキや私も含む米国のエコノミストが東京を訪れ、天皇に謝罪すべきではないかと言ったことがあった。結局、米国は日本よりも対応がまずかったのである」

And there's another lesson in Japan's experience: While getting out of a prolonged slump turns out to be very difficult, that's mainly because it's hard getting policy makers to accept the need for bold action. That is, the problem is mainly political and intellectual, rather than strictly economic. For the risks of action are much smaller than the Very Serious People want you to believe.

「日本の経験から、もう一つ学んだことがある。長引く不況から抜け出すことがどんなに困難なことか分かる一方で、その主な理由は、政策決定権者に、大胆な行動を起こす必要があることを認めさせるのが難しいことにある。つまり、問題は厳密な意味で経済学的なものというよりも、政治的、そして知的なことなのである。というのも、そうした行動がもたらすリスクは、『生真面目な人々』が皆を信じ込ませようとしているよりも遥かに小さいものだからである」

Consider, in particular, the alleged dangers of debt and deficits. Here in America, we are constantly warned that we must slash spending now now now or we'll turn into Greece, Greece I tell you. But Greece, a country without a currency, doesn't look much like the United States; surely Japan offers a more relevant model. And while doomsayers keep predicting a fiscal crisis in Japan, hyping each uptick in interest rates as a sign of the imminent apocalypse, it keeps not happening: Japan's government can still borrow long term at a rate of less than 1 percent.

「特に、主張されている借金や債務の危険性について考えてみればいい。ここ米国においては、我々は常に警告されている。支出をカットせよ、今やるのだ今、と。さもなければギリシャになってしまうぞと。ギリシャと私は言っている。しかし、自国の固有の通貨を持たないギリシャは米国とは似ていない。日本となら比較してもいいかもしれないが。終末論者は、日本の財政危機を予言し続けている。金利の高騰が起きると言い続けてきた。しかし、そのようなことは全然起きていない。日本の政府は、今でも1%未満の長期金利でお金を借りることができる」

Enter Mr. Abe, who has been pressuring the Bank of Japan into seeking higher inflation -- in effect, helping to inflate away part of the government's debt -- and has also just announced a large new program of fiscal stimulus. How have the market gods responded?

「日本銀行により高い物価上昇率を追及するように圧力をかけてきた― そうすることによって政府の債務負担を実質的に軽くする― そして、大規模の新たな財政出動を行うと言う安倍氏を登場させよ。市場の神々の反応はどうであったか?」

The answer is, it's all good. Market measures of expected inflation, which were negative not long ago -- the market was expecting deflation to continue -- have now moved well into positive territory. But government borrowing costs have hardly changed at all; given the prospect of moderate inflation, this means that Japan's fiscal outlook has actually improved sharply. True, the foreign-exchange value of the yen has fallen considerably -- but that's actually very good news, and Japanese exporters are cheering.

「答えは、全て良し。少し前までマイナスであった市場― つまりデフレが続くと予想していた― のインフレ予想は、今やプラスの領域に入っている。しかし、政府の借入コストは全く変わっていない。もし、マイルドなインフレが予想されるのであれば、このことは、日本の財政見通しは、実際には急激に改善しているということである。確かに、円の価値が相当に落ちているが、それは実際には非常に良いニュースであり、日本の輸出業者は喜んでいる」

In short, Mr. Abe has thumbed his nose at orthodoxy, with excellent results.

「要するに、安倍氏は素晴らしい結果をもたらし、正統派理論をバカにしているのだ」

Now, people who know something about Japanese politics warn me not to think of Mr. Abe as a good guy. His foreign policy, they tell me, is very bad, and his support for stimulus may have more to do with old-fashioned pork-barrel (tofu barrel?) politics than with a sophisticated rejection of conventional wisdom.

「ところで、日本の政治に詳しい人々が安倍氏を良い人物だと思うなと警告する。彼の外交政策は
非常にまずいと彼らは言う。そして、彼の刺激策は、伝統的な理論を拒否したアイデアというよりも古いタイプの利益誘導に近いと言う」

But none of that may matter. Whatever his motives, Mr. Abe is breaking with a bad orthodoxy. And if he succeeds, something remarkable may be about to happen: Japan, which pioneered the economics of stagnation, may also end up showing the rest of us the way out.

「しかし、そのようなことはなんら問題にはならないかもしれない。彼の真意がどうであれ、安倍氏は拙い正統派理論を打ち壊しているのである。そして、もし彼がそれに成功するならば、何か特筆すべきことが起こるかかもしれない。不況の経済学の先駆者である日本が、我々世界の他の国々に不況から抜け出る方法を示すことになるかもしれない」


 さあ、クルーグマン教授の意見をお知りになって、貴方は今、どのようにお感じになっていることでしょう?

 彼は、多分、安倍総理のことを良くは思っていない。外交が下手だし、経済政策もバラマキに近い
かもしれない、と。

 しかし、そうは言っても、やっていることは自分の主張してきたことと一致しており、だから、褒めない訳にはいかない、と。つまり、自分が正しいと言うだけの話です。そして、そのクルーグマン教授の主張する仮説の正当性が、こうして日本において社会実験によって立証されるであろう、と。

 果たして、実験の結果はいつ出るのか?

 クルーグマン教授は正しいのか?

 私は、その反対になると思うのです。

 もちろん、景気が一時的によくなる可能性は大であるのですが、景気がよくなればなるほど、そして、物価上昇率が高くなればなるほど、日本の国債が暴落してしまう危険性が大きくなるのです。

以上



09. 2013年1月18日 20:28:54 : fya7P2ndhI
通貨安維持したければ、自国通貨買いに金融取引税をかけることだ。
財政赤字もあるんだし、歓迎されるだろう。

10. 2013年1月18日 20:51:33 : Pj82T22SRI
アベノミクスでの円安臨界点は「ドル95円」=高島修氏
2013年 01月 18日 18:35 JST 記事を印刷する | ブックマーク | 1ページに表示 [-] 文字サイズ [+]


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高島修 シティバンク銀行 チーフFXストラテジスト(2013年1月18日)

アベノミクスによるドル高円安は「ドル95円」が臨界点になるだろう。今回のドル高円安は足元の日米金利差に大きな変化がない中で進んでいるため、日本の政治環境の変化に着目したヘッジファンドなど欧米系短期筋による投機主導の相場と見る向きが多いようだ。だが筆者に言わせれば、これはむしろ「ファンダメンタルズへの回帰」である。

それにはまずドル円相場と日米金利差の相関の推移を説明する必要があるだろう。過去7年ほど、ドル円相場は日米金利差の中でも特に金融政策の方向性を織り込む傾向にある日米2年金利差と高い相関を有してきた。とはいえ、その相関の程度はいつも同じではなかった。

たとえば、ドル円が124円台で大天井をつけた2007年7月から08年12月末までの相関関係は、日米2年金利差が1%変化すると、ドル円が7円ほど動くというものだった。これは長期的な両者の関係から見ても、あまり違和感のないものだった。

ところが、米連邦準備理事会(FRB)が信用緩和(量的緩和第1弾)を始めた09年以降は、日米2年金利差が1%変化すると、ドル円が23円ほど動くという関係に変化した。ドル円の金利差への感応度は一気に従来の3倍に跳ね上がったのだ。

これは、米市場金利が歴史的な低水準に低下し「金利の希少価値」が高まったことに加えて、FRBの大胆な量的緩和が米金利の限界的な低下とドル安円高を促したためだと考えられる。フローの面では、過去の両者の相関に着目したヘッジファンドなどによるドル売り円買いが行われたことが、ドル円の金利差への感応度を高める原動力になったと見られる。

だが、金利水準の低下に伴って金利のボラティリティが低下したことで、この間、本質的には日米金利差がドル円に及ぼす影響はむしろ低下した。その意味では、日米金利差の実態からかけ離れたドル安円高が進んだのである。

<過去に歪められた価格水準の是正>

ところが、足元では、FRBは15年半ばまでの金利据え置きを宣言しているにもかかわらず、それに先んじて量的緩和の巻き戻しを行う可能性を市場にシグナルし始めた。一方、日本では自民党の安倍晋三政権が発足し、大胆な金融緩和と財政出動によるデフレ円高の克服を強く訴え始めた。日銀はインフレ目標の上昇修正とともに、今後も量的緩和の拡充など追加緩和を余儀なくされる可能性が高い。

こうした中、ヘッジファンドなど短期筋の投資行動は円買いどころか、完全に円売りに移行した。その結果、ドル円は日米金利差の実態からかけ離れたドル安円高水準を維持できなくなったと考えられる。これが日米金利差の大きな変化がないにもかかわらず、今回ドル高円安が進み始めた主要因と見られる。

つまり、現在起こっている現象は、過去に歪められた価格水準の是正であり、実のところは、金利差の実態に見合った水準への回帰かもしれない。07年から08年までの日米2年金利差との関係で試算すると、ドル95円前後がドル円の適正水準との推計値が得られる。

<IMF為替評価モデルも95円までの円安を示唆か>

偶然にも、国際通貨基金(IMF)の為替評価も95円程度までの円安は価格適正化の範疇との示唆を与える。昨年、IMFは為替評価モデルを変更し、為替レートが実体経済に及ぼす影響を加味する新しいモデルを導入した。実は、これは為替評価の世界においては「コペルニクス的転換」である。

その結果、昨年8月にIMFが発表した4条協議に基づく日本経済の年次報告書では、円の実質為替相場が10%前後の過大評価との認識が示された。これを名目為替レートに引き直せば、15―20%程度の円安は適正水準への回帰と見なされうる。ドル円で言えば、ちょうど95円前後が目安となりそうだ。急激に進む円安に、欧米からの牽制が入るのではないかとの危惧もあるようだが、今しばらくはその懸念は少ないのではなかろうか。

ただ、このようなドル高円安はあくまでも過去に蓄積された価格水準の歪みを矯正する過程で生じるものであって、アベノミクスや日本の政治環境の変化が実体的に金融経済面で具体的な変化をもたらしているわけではない。安倍政権の発足は単に価格調整のきっかけになっただけだ。特に今回、政治的な圧力で日銀が従来以上に金融緩和に取り組むようになるとの思惑が円安期待を強めているが、これは金融政策に対する誇大妄想というものだろう。

たとえば、01年から06年に日銀が量的緩和を実施した時には、為替相場ではドル安円高基調が続いた。ITバブル崩壊後にFRBが行った果敢な利下げ(金利政策)に伴うドル安圧力を日銀の量的緩和は跳ね返すことができなかったからだ。FRBの金融政策にしても、量的緩和に取り組み始めた09年以降、ドル円こそ下落したものの、米ドルの通貨インデックスはむしろ長期的な下落トレンドを脱し、対ユーロを中心に底入れの兆しさえ強めてきた。量的緩和が為替相場に与える影響が極めて限界的なものであることを示唆する重要な事例である。

したがって、すでに金利政策の発動余地をなくしている日銀の量的緩和を頼りに、為替市場で円安が進んでいくことには早晩、限界が生じるはずだ。日米金利差の実体に見合う95円程度までなら、アベノミクスや日銀の緩和期待からドル高円安の流れが続こうが、一旦そうした水準に達し、価格正常化プロセスが終了すると、とたんに日銀の緩和期待に対する円相場の感応度は低下。円安相場はモメンタムを失うことになるのではないか。

<アベノミクスが目指すべき道>

もう一つ気になるのが、安倍政権が製造業復活へ税優遇などを検討していると報じられていることだ。

オバマ政権が製造業復活を掲げる米国では現在、住宅ブーム崩壊後に急増した建設ワーカーなどの長期失業者を製造業復活で吸収するという雇用戦略がとられている。日本が製造業主体による経済回復を目指し、円安を志向していると受け取られれば、米国の経済戦略・雇用政策と真っ向からぶつかる。

米国は「安倍政権は円安誘導を行っている」などとの牽制を始め、円売りポジションを膨らませてきた海外短期筋による円買い戻しの口実を与えることになるだろう、円相場は一転して急騰し、アベノミクスは行き詰まることになりかねない。

マクロ経済政策(金融政策、財政政策、通貨政策)の中で、日本がデフレ克服のために十分に発動しうる余地があるのは、今や通貨政策しかない。その通貨政策は効果的に発動する必要があり、そのためには欧米諸国などから円安合意をとりつけるのが望ましい。

その際、日本に求められるのは、内需主体での経済拡大シナリオを諸外国に示すことだ。つまり、金融緩和と財政刺激策といったリフレ政策に加え、円安政策を敢行することで、期待インフレ率の上昇を図る。それに成功すれば、実質金利が低下し、初めて日銀による金融緩和効果が顕在化し、消費や投資といった内需が拡大。円安で輸出が押し上げられたとしても、輸入が増加することで経常黒字は縮小する。

つまり、円安政策をとる中間目標は期待インフレ率の刺激であり、最終目標は内需拡大によるデフレ克服と国際収支均衡化であるべきだ。「近隣窮乏化策」と受け取られがちな通貨安による外需振興策とは対照的に、この点が明確に伝わるのであれば、諸外国も決して円安政策に対して異を唱えることはないだろう。

今週、甘利明経済財政担当大臣や自民党の石破茂幹事長らが円安のデメリットに言及。ドル円が急落する場面があった。ただ、円高にせよ、円安にせよ、メリット、デメリットの2つの側面があるのは当たり前だ。貿易収支に着目していては、円高が望ましいのか、円安が望ましいのかの結論は見えてこない。より重要なことは、日本がデフレ均衡に陥っている国であり、その是正には期待インフレ率の上昇は避けて通れないという点だ。

この問題意識を政府内でしっかり共有すれば、甘利大臣や石破幹事長のような、軸足の定まらない発言が政府関係者から漏れ伝わってくることもなくなろう。円安の進行で欧米諸国との不協和音が生じることも少なくなり、場合によっては、自民党が選挙公約に掲げたような「平成のルーブル合意」締結さえも可能になるかもしれない。

ただし、逆に言うなら、期待インフレ率を中間目標に掲げるスタンスを明確に打ち出せなければ、つまり財政措置などを伴う製造業支援スタンスが露骨に出てきてしまうと、円安は「近隣窮乏化策」との印象を諸外国に与え、いずれ欧米諸国辺りからの牽制発言を招くことになる。この場合、アベノミクスは「ドル95円」前後で挫折することになりかねないだろう。

*高島修氏は、シティバンク銀行のチーフFXストラテジスト。1992年に三菱銀行(現・三菱東京UFJ銀行)に入行し、2004年以降はチーフアナリスト。2010年にシティバンク銀行へ移籍。

 

浜田内閣官房参与:100円くらいが良い水準、110円以上の円安は問題 
  1月18日(ブルームバーグ):内閣官房参与で、安倍晋三首相のブレーンとして知られる浜田宏一エール大学名誉教授は18日午後、都内の日本外国特派員協会で講演し、為替相場の適切な水準について「1ドル=100円くらいが良い水準ではないか。110円かそれ以上の円安は問題かもしれないが、95円、100円くらいなら心配いらない」と述べた。
浜田氏は「日本の金融政策はこの15年間どちらかというと緊縮方向に向かっていた」と指摘。リーマンショック後の円高を放置したことで、「日銀がエルピーダを破たんさせたといってよい」と語った。また、「人口減がデフレの原因だというまともな学者はいないが、白川総裁はそう言っている」と述べた。
一方で、「あまり財政を大盤振る舞いすると、また増税が必要になり、経済にゆがみをもたらすことが心配」と言明。「自民党政権に一抹の不安があるとすると、財政政策がないと金融政策は効かないと思っている閣僚が存在することだ」と語り、財政拡張に懸念を示した。
記事についての記者への問い合わせ先:東京 日高正裕 mhidaka@bloomberg.net
記事についてのエディターへの問い合わせ先:Paul Panckhurst ppanckhurst@bloomberg.net;大久保義人 yokubo1@bloomberg.net
更新日時: 2013/01/18 14:59 JST

 
ロンドン外為:円のボラティリティが17カ月で最高 
  1月18日(ブルームバーグ):18日の外国為替市場では来週の日本銀行会合をにらんで円のボラティリティが1年5カ月ぶりの高水準となっている。21、22両日の政策決定会合で日銀が追加緩和策を打ち出すとの観測を背景に、円はドルに対して2年半ぶり安値を付けた。週間ベースでは10週連続の下落に向かっている。
内閣官房参与で、安倍晋三首相のブレーンとして知られる浜田宏一エール大学名誉教授は18日、為替相場の適切な水準について「1ドル=100円くらいが良い水準ではないか」と発言した。
オプションプレミアムが示す円のボラティリティは一時、2011年8月以来最高の17.4%となった。ロンドン時間午前7時8分現在は1ポイント上昇の17.3%。
円は対ドルで1ドル=90円21銭と10年6月23日以来の安値を付けた後、前日比0.3%安の90円13銭での取引。対ユーロでは一時、0.4%安の1ユーロ=120円71銭を付けた。これは11年5月4日以来の円安・ユーロ高。
ユーロは対ドルで1ユーロ=1.3386ドル。
原題:Yen Volatility Advances to 17-Month High Before BOJ PolicyMeet(抜粋)
記事に関する記者への問い合わせ先:シンガポール Masaki Kondo mkondo3@bloomberg.net;東京 Monami Yui myui1@bloomberg.net
記事についてのエディターへの問い合わせ先:Rocky Swift rswift5@bloomberg.net
更新日時: 2013/01/18 16:43 JST


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