01. 2013年1月05日 01:13:50
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JBpress>海外>Financial Times [Financial Times] 社説:米国の崖をまた別の崖と交換した大統領 2013年01月04日(Fri) Financial Times (2013年1月3日付 英フィナンシャル・タイムズ紙) 今週の財政を巡る「ミニ合意」についてせいぜい言えることは、これよりはるかにひどい事態になり得たということくらいだ。両者が立場を曲げなかったら、米国では今頃、景気後退入りの可能性が高まっていただろう。 結局、大きく割れた議会という政治的な現実から、包括的な取引は達成し得なかった。崖っぷちから落ちていたら、米国の信頼性を大きく損なうレベルの不確実性とともに新年が幕を開け、世界中の投資家が怯えることになったはずだ。 今回の合意でひとまず最悪の事態は避けられたが、その代償は、今から2カ月後に潜在的にもっと破壊的な対立の舞台を整えることだった。両者が3月にどんな合意をまとめられるか――まとめられると仮定しての話――を見て初めて、我々は今週のその場しのぎの合意の是非を判断できるのかもしれない。 今回勝ったのはオバマ大統領 政治的な面を見ると、今週の平凡な取引で勝ったのはバラク・オバマ大統領の方だった。オバマ大統領を支持する左派の多くは、大統領があまりにあっさりと税率について折れ、増税対象となる最低限の年間世帯年収を、それまで訴えてきた25万ドルではなく45万ドルにすることに同意したと不満をこぼしている。 それはそうかもしれない。だが、大統領の譲歩は、10年間で予想される税収を推定8000億ドルから6000億ドルへとわずかに減らしただけだ。 それと引き換えに、大統領は共和党に、増税は承認しないという20年来のタブーを破ることを強いた。この党内の対立は共和党を分裂させる可能性を秘めている。 ベイナー下院議長(中央)は厳しい立場に立たされた〔AFPBB News〕
下院の共和党議員の3分の2近くがジョン・ベイナー下院議長と決別したという事実(造反者にはベイナー氏の右腕のエリック・キャンター氏も含まれる)は、共和党の名高い規律を台無しにした。オバマ大統領は今後数週間で、こうした分裂を利用するたくさんのチャンスを得るだろう。 世界が今週の合意の経済的インパクトを消化する中、真のニュースが出てくるのはこれからだ。 市場は当然ながら安堵し、世界中で株価が力強く上昇した。だが、ミニ合意はそれでも米国経済に国内総生産(GDP)比1.5%程度の財政引き締め効果をもたらす。その一部は富裕層向けの税率引き上げから来る。 だが大部分は、給与税の2%減税措置の失効を認めた決断から来るものだ。これにより、平均的な世帯の2013年の税負担はざっと1000ドル増える。米国の景気回復にとっては無用の負担だが、致命的ではない。 それよりずっと深刻なのは、3月1日に期日が訪れる歳出の「強制削減措置」と債務上限を巡る次の崖を取り巻く不確実性だ。オバマ大統領を批判する向きは、大統領は今週、交渉対象から債務上限を取り除く方法を見つけるべきだったと言う。だが、そうしていれば、合意そのものが台無しになっていたかもしれない。 結果的に我々は今、オバマ大統領が大規模な歳出削減策(強制削減措置が発動した場合に自動的にカットされるGDP比1%相当と同規模)に同意しない限り、割れた共和党が米国の国債デフォルトを脅しに使いかねない事態に直面している。 共和党が税に関してどれほど間違っていようとも、歳出削減を訴える点では正しい。膨れ上がる連邦予算の最大部分を占める各種給付制度については特にそうだ。 オバマ大統領は一貫して、債務上限について共和党と交渉する気はないと発言してきた。だが、大統領が債務上限引き上げを求める自身の要求を、並行して行われる強制削減措置を巡る交渉と切り離せるとは考えにくい。 共和党は、債務上限引き上げを承認する場合、引き上げ額1ドルに対して1ドルの歳出削減を要求している。一方のオバマ大統領は、歳出削減を行う場合は同額の新税とセットでなければならないと主張している。どうすれば、テクニカルな国債デフォルトを回避できるタイミングでこうした意見の対立を調整できるのか、果たしてできるのかどうかは、心配なほど不透明だ。 共和党を説得できるか? オバマ大統領は今後8週間で、国債デフォルトの引き金を引くのを避けるよう共和党を説得しなければならない。ベイナー下院議長の弱い立場を考えると、オバマ大統領は給付制度、特にメディケア(高齢者向け公的医療保険制度)と社会保障制度を改革する真剣な提案を行う必要がある。大統領自身が設けたボウルズ・シンプソン委員会が指摘したように、これは妥当なトレードオフだ。 米国はいずれにせよ、中期的な財政改革に向けて前進する必要がある。その代わり、オバマ大統領は、債務上限については立場を貫き、将来の歳出削減と増税は必ず、経済が完全に回復した後に実施されるようにしなければならない。 それでも対応が不十分な可能性もある。共和党は、今週の増税に対して復讐する決意のように見える。残念なことに、オバマ大統領には、共和党に分別をもって行動させる力はない。だが、それこそがまさに大統領が今試みなければならないことだ。それができないと、米国にとって真に悲惨な事態になる。
JBpress>日本再生>世界の中の日本 [世界の中の日本] 起業に必要な資金は他人の財布から マキァヴェッリ先生ならこう考える(39) 2013年01月04日(Fri) 有坪 民雄 近年、起業に関心を持つ人が多いようです。自分で会社を興して一国一城の主になろうとする理由は様々ですが、たいていの場合ネックになるのは資金でしょう。ヒト、モノ、カネは事業の3要素だと言われますが、資本がほとんどいらない一部の事業は別として、カネがなければヒトもモノも得られないのが普通です。
その、最も大事な資金は、どうしたら得られるのでしょうか? 資金調達は、大きく分けて2通りの方法があります。1つは自分で貯蓄してカネを作る。もう1つは、他人の財布にあるカネを使わせてもらう、です。 浪費をする国や会社は破滅する (『君主論』、マキアヴェリ著、池田廉訳、中公文庫) マキァヴェッリは、基本的に君主は、人から好かれる、よい評判が立つのがいいと考えていました。しかし、金離れのよい、気前のよい人と見られるのは避けるべきで、「あいつはケチだ」といった悪評は受けても気にするなと言います。 財布のヒモが緩いと思われると、おカネ欲しさに人が集まってきます。集まってきた人を満足させようとすると浪費をしてしまい、カネがなくなります。 持っているカネが少なくなると、普通の人ならまずいと考えて浪費をやめようとします。しかし君主や社長など権力を持つ人たちの中には、自分の立場を生かして実入りを増やせば、これまで通りの浪費ができると考える人がいます。 彼らは国民に重税を課したり、社員の給料を減らしたりして贅沢の原資を確保するのですが、たいていはやり過ぎて国民や社員から恨みを買って破滅する。 君主や社長にとって、金が欲しくて近寄ってくる少数の輩より多数の国民や社員の方が大事なはずなのに、大事な人を苦しめて輩を満足させる。それで破滅しない方がおかしいでしょう。 君主や社長の仕事は大事業を行うことで、そのためにはカネが必要です。そのカネを浪費する輩など、自分に近づけてはならない。それにはケチだと評判が立つのがいちばんよいというわけです。 教会のお金で大事業を行ったスペインの王様 浪費を防ぐには、ケチと呼ばれるのを気にしないことです。ケチに徹すれば、カネは最短時間で貯まります。必要資金が貯まれば、いつでもやりたい事業を始められますから、ケチは新事業の母とも言えます。 マキァヴェッリの時代ではフランスやスペインがそうでした。 しかし、スペイン王のフェルナンド5世に関しては、マキァヴェッリはケチなだけではなく、もう1つの理由も挙げています。それは、フェルナンドが人のカネを使って大事業を行った、ということです。 人のカネというのは、この場合、教会が集めたカネです。フェルナンドは、700年以上にわたってイベリア半島に存在していたイスラム教国を追い出そうとするキリスト教徒の運動、すなわちレコンキスタを終了させた王として知られています。 キリスト教徒にとって、ヨーロッパからイスラム教の国をなくすのは悲願でしたから、ローマ教会は、最後のイスラム教国であるグラナダを攻めるフェルナンドに資金を援助していたようです。 フェルナンドはケチな人ですから、おそらくグラナダ戦争では自分のカネは使わず、教会のカネを使って戦争をしたと考えられます。言い換えれば、他人のカネで戦争をやって、自分の手柄にしたのです。 他人のカネを使って事業を起こしてみる 現代において、他人のカネを使って大事業を行うのは資本主義の根幹の1つと言えます。銀行は、他人のカネを預金として集め、さも自分のカネのような顔をして貸し出すことで、融資先より優位に立ってきました。株式会社制度は典型的な他人のカネを使って大事業を行うやり方でしょう。 政治の世界も同様です。政治家が国や地方自治体の予算を取ってきて橋や道路を造ったりするようなことは、政治家が自分のカネを使ってやっているわけではありません。国民が出したカネを使って自分の手柄を作っているのです。 日本は政治家の手柄を優先し過ぎました。そのなれの果てに今の厖大な財政赤字があるわけです。これはこれで大きな問題ですが、実業界においては今でも他人の金を使う方法は通用します。 起業を目指す方は、まずは自分のカネより他人のカネを使って事業を起こすことを考えましょう。自分のカネを貯めて起業するにしても、小資本でやれる商売ならそこまでしなくてもいいでしょう。 何億もの資金が必要な事業なら、貯金している間に自分の人生が終ってしまいます。人のカネを使うなら、今すぐにでもできるのです。 100人に出資をお願いすれば事業の成否が分かる 「いや、私もそう考えて出資してくれる人を探したけど、いないんだ・・・」 そんな読者もおられるでしょう。そういう方は、第一に何人に出資をお願いしたかを数えて下さい。数人程度にしか声をかけていないなら、100人に声をかけることを検討すべきです。 100人にお願いしても出資してくれる人がいないなら、それはやりたい事業そのものに問題があると考えましょう。その事業が社会に与える影響が小さいのではないか? もっと大風呂敷を広げるべきではないか、考えるべきだと言うことです。 ローマ教会はフェルナンド5世以前にも、他人のやる事業に援助を出したことがあります。十字軍や、塩野七生氏の「ロードス島攻防記」に描かれる騎士団なども教会の(正確にはヨーロッパ中のキリスト教徒の)カネで維持されてきました。 十字軍や騎士団、そしてフェルナンドが多くの寄進を得られたのは、宗教的情熱に訴えたからです。エルサレムやイベリア半島をイスラム教徒に奪われたことは、キリスト教徒にとって我慢できないことでした。よってイスラムから自分たちの土地を取り返す大義名分によって彼らは援助を受けることができました。言い換えれば、それだけ需要が多い目標を十字軍や騎士団は目指したのです。 自分のやりたい事業は、他人の夢にもなりえるか? そんな方面から事業を再検討していくと、案外近いところに、自分が使える他人の財布があるかも知れません。 |