03. 2013年1月02日 21:34:07
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JBpress>海外>Financial Times [Financial Times] 2013年の幕開け:FT執筆陣が新年を大胆に予想 2013年01月01日(Tue) Financial Times (2012年12月31日付 英フィナンシャル・タイムズ紙) 2013年は果たしてどんな年になるのか〔AFPBB News〕
ネイト・シルバー氏を見ていると、予想はとても簡単な作業に思える。ニューヨーク・タイムズ紙の統計専門家で、バラク・オバマ氏の大統領選勝利を予言した同氏は、選挙やスポーツイベントの結果を予測する自身の手法は「それほど複雑なものではない」と述べている。 だが、誰もがあれほど見事に予想できるわけではない。 本紙(フィナンシャル・タイムズ)の専門家たちはそれでも怯まず、自らの評判をかけて、独自の予想を披露する。物事の確率を評価する便利なアルゴリズムなど持ち合わせていない。自身の知識と直観、または、少なくとも(科学担当エディターのクライブ・クックソンのように)図太さに頼らざるを得ないのが実情だ。 クックソンは昨年、光速を上回る速度での移動も可能であることを科学者たちは確認することになるだろうと予想したが、残念ながらこれは外れてしまった。誰もが胸を躍らせた当初の実験結果は、ケーブルの接続不良に起因するものだった。 しかし、そんなことは、この際気にしない。真相を明らかしようというあの取り組みは、見ていて楽しいものだった。当のクックソンは今年、火星で生命体が発見されると予想している。 だが、マーティン・ウルフの昨年の選択もこれに負けず劣らず危険なものだった。1年前には単一通貨ユーロは絶滅危惧種のリストに載っており、生き残るという強気の予想をする向きはほとんどいなかった。だがマーティン・ウルフは例外で、そうしたユーロ懐疑論者の行き過ぎた見方をたしなめた。 シルバー氏よりも早い時期にオバマ勝利を予想したエドワード・ルースも称賛に値しよう。また、アリソン・スミスは英国企業の配当の当たり年になることを正確に予測したし、新聞業界の苦境に対するベン・フェントンの警告も的を射ていた。 昨年の予想のすべてをここで振り返ることはできない。だが、当たるかどうかはともかく、本紙の専門家たちは今年も新年を占っている。 (Peggy Hollinger) ■英国は「三番底」の景気後退に苦しむのか? 答えはノーだ。普通に言われているような三番底に陥ることはないだろう。ただ、これは最も重要な問題ではないかもしれない。景気後退は「2四半期連続のマイナス成長」と定義されることが多いが、この定義では英国経済をきちんと描写できない。 英国経済は2008年から2009年にかけてひどい景気後退に陥り、一旦小さく盛り返し、2010年半ば以降は概ね横ばいで推移している。この横ばいの時期における下向きの局面を「底」と考えるのか、上向いた局面を「回復」と捉えるかといった議論は的外れだ。 したがって、ロンドン・オリンピックの景気押し上げ効果が剥落する2012年第4四半期がマイナス成長になり、2013年第1四半期も小幅に落ち込めば、これを三番底と見なして大騒ぎする向きが出てくるだろう。 だが、筆者はこれに与しない。2013年の真の課題は、自律的な経済成長を再開できるか否かだ。そして悲しいかな、その再開にはまだ疑問符が付く。 (Chris Giles) ■火星に生命が存在する有力な証拠が見つかる? 2013年最大の、そして人々が最も待ち焦がれている科学の成果は、米航空宇宙局(NASA)の探査機「キュリオシティ」による火星の土壌と岩石の化学分析によってもたらされることになる。乗用車サイズのこの探査機は8月にこの惑星に降り立ち、組み込まれているいろいろなロボットを試し始めている。 米航空宇宙局(NASA)の探査機「キュリオシティ」〔AFPBB News〕
1カ月前には、生命の存在を示す化学物質を既に検出したとの噂が流れて大騒ぎになった。 キュリオシティは来年も埃っぽく赤い大地を何マイルも走行し、時折停止しては地表や地中のサンプルを採取して、内蔵の分析機でこれを吟味する。 そして、生体内の反応でしか生じ得ない分子という明確な証拠を探すことになるだろう(そうした反応は過去のものかもしれないし、今日のものかもしれない。もし後者なら、なお一層心が躍ることになろう)。 生きている虫でも見つかれば宇宙生物学者は驚きのあまりひっくり返るだろうが、大半の人はそうはならず、この惑星におけるこれまでの地質学的な変動を考えれば過去に生命が存在したことはあり得るし、微生物が今でも生きている可能性だってある、と語ることになるだろう。 2013年末までには火星に生命が存在することを示す生化学的な確たる証拠が見つかる、と筆者は見ている。 (Clive Cookson) ■先進国の「4大」中央銀行のどこかが2013年に介入金利を引き上げるか? 答えはノーだ。確かに、米国の連邦準備理事会(FRB)、欧州中央銀行(ECB)、日銀、イングランド銀行の4行による金融政策は極めて緩和的だ。短期の市場介入金利は低く、最も高いECBで0.75%にとどまっている。またこの4行は非伝統的な政策手段をいくつも実行に移しており、自らのバランスシートを大幅に拡大させている。 しかし、今後1年のうちにどこかが利上げに踏み切ると考える理由はほとんどない。話は簡単だ。信用供与のエンジンが修理されて景気が回復するまでは、中央銀行は金融を引き締めないのだ。 また引き締めに動く際には、これまでのバランスシート拡大の動きを巻き戻すところから始めることになるだろう。政策金利を引き上げるのはその後だ。 論理的に考えれば、最も早く利上げに動きそうなのはFRBだ。最も早く回復するのは米国経済である公算が大きいからだ。ECBの方が先になる可能性もあるが、それは単に、ECBがインフレにヒステリックな対応をする体質だからだ。 (Martin Wolf) ■バラク・オバマ大統領はイランを爆撃するか? 答えはノーだ。チャーチルの比喩を借りるなら、バラク・オバマ米大統領は戦争騒ぎの前に長談義を試みるつもりだ。オバマ大統領は、イランと直接、2国間交渉に挑もうとするだろう。 アヤトラ・ホメイニ師が同意する保証はないが、制裁強化は強力な動機を与えている。イランは今、金融制裁と原油禁輸措置の結果、ひどい経済的な痛みを感じており、イランの現体制は新たな「グリーン」革命を恐れている。 ベンヤミン・ネタニヤフ首相(左)とバラク・オバマ大統領〔AFPBB News〕
一方、米国は今、イランの核の野望のみならず、米国の安全保障といった問題もカバーする大がかりな交渉の用意があるように見える。 イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は米国にイランの核施設に対する早期の攻撃を要請し、オバマ大統領を反対方向に引っ張ろうとするだろう。 しかし、ネタニヤフ首相が米大統領選でミット・ロムニー氏を支持する旨を表明し、ヨルダン川西岸でイスラエル入植地を拡大する計画を打ち出した後では、ホワイトハウスは話を聞く気にならないだろう。2013年は米国とイスラエルの関係が大々的に崩壊する年になるかもしれない。 (Philip Stephens) ■2013年初めの選挙の後、モンティ氏はまだ政権にとどまっているか? 多くの人はそうであることを望んでいる。だが、その大半は、市場と悩めるユーロ圏首脳が選挙結果を不安げに待つイタリア国外の人々だ。選挙は2月に実施される見込みで、シルビオ・ベルルスコーニ氏が、元共産主義者と組んだ中道左派の民主党を倒そうと必死になり、再びポピュリスト的なふざけた態度に出ている。 実務家のマリオ・モンティ首相は、中立性(ベルルスコーニ派の新聞の言葉を使えば「処女性」)を捨て、自身の遺産を守るために選挙戦に参画する。選挙戦は間違いなく、醜い争いになるだろう。イタリアの政治は、1990年代初頭の戦後秩序の崩壊以降、これほど不安定だったことはない。 モンティ氏の中道派連合は、景気後退と増税にうんざりし、政界エリートの腐敗に怒っている、不満を募らせた有権者と向き合うことになる。全面的な勝利を収めるほどには人気がないため、モンティ氏は国家元首である大統領(重職ではあるが、政策立案には関与しない)になるか、民主党との連立政権で財務相に就くかという選択を迫られるかもしれない。筆者は後者に賭ける。 (Guy Dinmore) ■米国は2013年に、危機以前の3%という国内総生産(GDP)トレンド成長率に戻るだろうか? ノー。成長率は2%を超えない。米国財政の未来を巡ってワシントンで続く論争や、米国の輸出品に対する脆弱な需要、比較的ゆっくりした米国住宅市場の回復ペースは、景気回復がまた期待外れに終わる1年をもたらすだろう。期待外れの回復はこれで4年連続となる。 欧州と比べると、米国は今後も明るい場所であり続ける。自国の期待に照らすと、米国はアンダーパフォームするだろう。 (Edward Luce) ■イングランド・プレミアリーグの4大クラブは監督を交代させるか? 2013年は世界の視聴者を魅了するサッカーリーグにとって激変の年となる。チェルシーは夏にラファエル・ベニテス監督を解雇する可能性が高い。何しろ彼は短期契約で起用されており、ファンはその場しのぎの監督として何とか我慢している状況だ。恐らくチャンピオンズリーグでの無残な敗北で、マンチェスター・シティの粋な監督、ロベルト・マンチーニ氏も終わりだろう。 プレミアリーグで最も長く監督を務めてきたアーセン・ベンゲル、アレクス・ファーガソン両氏の将来はもっと不透明だ。 アーセナルのベンゲル監督は7年間メジャータイトルを何も獲得できておらず、どんな名門クラブでも今ごろ命運が尽きていたはずだが、利益を稼ぐ才覚はクラブの経営陣を感心させている。アーセナルがチャンピオンズリーグで勝ち進んだ場合に限り、ベンゲル監督は生き残れるだろう。 大晦日に71歳になるファーガソン監督は、かなりの大物が後継者に決まるまで続投しているように見える。偶然にも、夏にはジョゼ・モウリーニョの体が空く。勇敢だが愚かではないマネーの動きは、4大クラブでは8月の新シーズンの初めに監督が交代していることを物語っている。 (Janan Ganesh) ■9月のドイツ総選挙の後、何が変わるのか? 今回初めて、ドイツで「黒・緑」連立政権が誕生する可能性がある。すなわち、アンゲラ・メルケル首相が率いる中道右派のキリスト教民主同盟(CDU)と、1960年代の抗議運動までルーツをたどれる環境主義の緑の党との連立である。 長年にわたる相互不信のため、このような連立交渉は両党にとって難しい。ドイツ社会民主党(SPD)がメルケル首相のCDUとの大連立に反対している関係で、黒と緑の組み合わせの可能性が最も高くなっているわけだ。 その結果は欧州統合を支持する連立政権となるが、ドイツでは過去何十年もなかったほど保守色の濃い政権となるだろう。 (Quentin Peel) ■ギリシャ経済は2013年に縮小が止まるか? 答えはイエスだ。国際通貨基金(IMF)は当初、ギリシャは2011年に成長軌道に戻ると予想し、その後、成長に回帰する時期を2012年、2013年とした後、今では2015年と予想している。2013年がこれまでと違うかもしれない理由は3つある。 まず、最新の緊縮策により、ギリシャはプライマリーバランス(利払い前の基礎的財政収支)の均衡に限りなく近づくうえ、数回にわたる債務再編でギリシャ政府の債務返済は事実上、数年間保留された。 次に、ギリシャでは銀行が危機の原因ではなかったことを思い出すといい。だが、どんな銀行システムも、助けなしで恐慌と債務再編を乗り切ることはできない。 ギリシャ政府と「トロイカ」との長期対立によりその助けが保留されていたため、民間部門の信用収縮が危機に追い討ちをかけた。今やっと、銀行システムの自己資本を増強するための資金がギリシャに向かっている。 そして3番目に、ギリシャの民間部門の一部は、公的部門より健全な状態にある。競争力はかなり回復してきた。ひとたび構造改革が実施されれば、ひどい非効率によって押しとどめられてきたほかの可能性も解き放たれるはずだ。 (Martin Sandbu) ■英国は原子力発電所の新設計画を進めるか? ノー。政府は英国の将来の電力需要を満たすうえで、原子力を好ましい技術の1つに指定したかもしれないが、二の足を踏む理由はいくつもある。原発の電力はコストが高く、多額の建設費がかかるためにガスで生産した電力よりも3割ほど割高になる。2011年の福島の原発事故以降、規制が強化されたせいで、割高な価格は今後も続くだろう。 英国は新規の原発建設計画を見送る公算が大きい〔AFPBB News〕
原発を支持する根拠はかねて薄弱で、主に二酸化炭素の排出量削減とエネルギー安全保障という2つの義務に基づいていた。 だが、英国経済の弱さと、エネルギー効率を重視する流れは、非化石燃料による発電にそれほど多額の投資を行わずとも、炭素排出量を削減できることを意味している。 シェールガスの潜在力は、英国が必要とする輸入が減る見込みがあることを意味している。原発を何基か建設する合理性はほとんどなく、高いコストを相殺するスケールメリットは見込めない。多額の補助金を必要とする産業にしては、原子力は政治的支持を決定的に欠くのだ。 連立政権はエネルギー政策に関して意見が割れているかもしれないが、自由民主党は再生可能エネルギーを支持し、保守党はガスを支持している。では、原子力はどうか? どちらも熱心ではない。英国は来年、原子力ルネサンスを見送ると思った方がいいだろう。 (Jonathan Ford) ■ユリヤ・ティモシェンコ氏は釈放され、ウクライナは西側を向くか? どちらも答えはノーだ。ビクトル・ヤヌコビッチ大統領率いる現政権は、ティモシェンコ氏に対する有罪判決は正当で、政治的ではないと断固主張し、立場をはっきり固めすぎた。今になって折れれば、完全に面子を失う。 一方で、欧州連合(EU)は繰り返し、野党党首のティモシェンコ氏が投獄されている限り、ウクライナ政府との政治的「協定」や自由貿易協定に署名しない姿勢を示してきた。 このため、一連の協定は、文書は完全に同意済みだが、署名されないままとなるだろう。だが、ウクライナがロシアに近づくこともないだろう。ヤヌコビッチ氏とロシアの指導部はそりが合わない。ロシアが提唱するベラルーシやカザフスタンなどとの「ユーラシア同盟」に参加すると、あまりに大きな主権を失う。 ウクライナは国際通貨基金(IMF)と新たな融資協定を結んで財政難を乗り切ろうとするだろう。だが、その他の点では概ね、ウクライナは過去20年間いた場所にとどまることになる。つまり、東側と西側の間で宙ぶらりんの状態が続くのだ。 (Neil Buckley) ■シリアに対する西側諸国の軍事介入はあるか? イエス。西側の大国がシリアに介入する可能性が高い理由はいくつかある。まず、4万人以上の死者が出た後、人道的な犠牲に対する不快感が高まっている。次に、バシャル・アル・アサド大統領の現体制の後を継ぐのは、アルカイダと関係のあるグループも含めたイスラム原理主義組織だとの不安が高まっている。 2013年は西側諸国がついにシリアに軍事介入する可能性が高い〔AFPBB News〕
西側諸国は、当初、選ばれた穏健派の反体制グループに武器を供給するために介入することで、その事態を回避しようとするだろう。 欧米の軍によるさらなる介入は、その後に起きる出来事に左右されるかもしれない。米国は既に、アサド大統領が化学兵器を利用する準備を進めるのであれば、介入すると明言している。 内戦が著しくエスカレートすれば、西側の空軍力を使い、飛行禁止区域が設定される可能性は十分ある。アサド大統領が倒されれば、その余波は混乱を極め、流血の事態になるかもしれない。 シリアへの平和安定化部隊の派遣を求める大きなプレッシャーが生じるだろう。いずれにせよ、2013年は、シリアへの軍事介入を避けてきた西側のタブーが破られる可能性が高い。 (Gideon Rachman) ■2013年に日中間の武力衝突は起きるか? ノーだ。しかし、トラブルは確実に予想しておいた方がいい。日本の支配下にある尖閣諸島(中国名:釣魚島)の領有権を巡って対立する主張の恨みは極めて根深い。この1年というもの、既に海上で小競り合いが起き、中国各地で暴力的な反日デモが発生した。 日本の首相に安倍晋三氏が選ばれたことで事態が落ち着くこともない。安倍氏は国家主義者で、日本の平和憲法を破棄し、国防費を増額したいと考えている。 中国の新たな指導者である習近平氏も恐らく、国家主義者としての自身の資質に磨きをかけたいと思うだろう。それでも発砲を許すことは、リスクが高い。問題の島が攻撃された場合、米国には日本を助ける義務がある。血が流れれば、事態は即座に国際的な危機に発展しかねない。だが両国とも、完全に手に負えない事態に発展しないよう最善を尽くすだろう。 (David Pilling) ■医療分野での2013年の最大のブレークスルーは何か? C型肝炎を患う2億人の患者に朗報がもたらされるだろう。血液を介して感染するC型肝炎ウイルスは、肝臓感染症や肝硬変、がんを引き起こす可能性がある。製薬会社各社は、臨床試験でウイルスの排除に成功した、経口錠剤のみに基づく治療に向けてレースを繰り広げている。新たな治療法は、インターフェロンの注射による治療と比べて大きな進歩となる。 それでもなお、感染率(静脈注射による薬物使用から感染するケースが多い)を下げる多大な努力が必要になる。また、C型肝炎は明白な症状が出ないまま長らく潜伏することがあるため、診断の改善も求められる。 (Andrew Jack) ■2020年のオリンピックは誰が主催するか? イスタンブールだろう。国際オリンピック委員会(IOC)は9月に、イスタンブール、東京、マドリードの中から開催地を選ぶ。スペインの首都マドリードの美しさは魅力的だが、IOCは同国の経済問題に目をつぶるわけにはいかない。東京は安全な賭けであり、IOCが欧州以外の都市を望むのなら、有利かもしれない。 だが、イスタンブールの方が進歩的な選択だ。イスラム教徒が圧倒的に多いトルコは、オリンピックを新たな観客に紹介するというIOCの目的にかなう。シリアとの緊張関係は多少の懸念材料かもしれないが、それを言えば、日本の対中関係も同じだ。 IOCのメンバーは、イスタンブールには大規模な建設作業が必要になることも心配するかもしれない。だが、トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン首相はオリンピック誘致を支援し、彼がイスタンブールの誘致のチャンスのカギを握ることになるだろう。結びに当たって、皆さん、Mutlu Yıllar!*1 (Roger Blitz) *1=トルコ語で新年おめでとうの意 |