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ポール・クレイグ・ロバーツ
財政の崖は陽動(作戦)に過ぎず、本質はデリヴェティヴの津波とドルのバブルである
「財政の崖」は、政策立案者達、メディア、そして注意を払っている大衆の眼を巨大な問題から、小さい問題へと反らすようにデザインされただけの悪いデマです。
財政の崖とは、もし、議会が浪費削減と増税に対して何も行動を起こさなかった際に、財政赤字を10年間に渡って微量に減らしてゆく、自動的発動にする浪費削減と増税です。言い換えると、「財政の崖」は、どちらに転がっても発動するのです。
一般的な経済学の立ち位置から見た財政の崖の問題は、それが弱まり停滞する経済にもたらされる更なる緊縮財政を意味する処です。ジョン・メイナード・ケインズ(の経済論・モデル)から、ほとんどの経済学者達は緊縮財政は不景気や不況の答えではないと理解しています。
それでも、デリヴェティヴ津波や債券市場・ドル市場のバブルに比べれば、財政の崖は小さな数字の問題に過ぎないのです。
財政の崖は、連邦政府が10年間で出費を1,300,000,000,000ドル(1$=¥100の単純計算で130兆円)削減する事を必要とします。ガ―ディアン紙のレポートによると、これが意味するのは、連邦はその財政赤字を年間109,000,000,000ドル(10兆9千億円)程度、または現在の予算の3%程減らさなければならないという事です。 http://www.guardian.co.uk/world/2012/nov/27/fiscal-cliff-explained-spending-cuts-tax-hikes もっと簡単に言うと、1,300,000,000,000(130兆円)を10(年)で割ると、それは年間130,000,000,000ドル(13兆円)になるという事です。これは、ワシントンの戦争(軍事出費)から毎年3か月の休暇を取れば、簡単に達成出来る事なのです。
デリヴェティヴ津波と債券・ドル・バブルは全く異なった規模のものです。
2012年6月5日の記事、「崩壊は目の前」 http://www.paulcraigroberts.org/2012/06/05/collapse-at-hand/ で指摘しましたが、OCCの2011年の第四四半期の報告によると、230,000,000,000,000ドル(2京3千兆円)に上るデリヴェティヴ市場(ギャンブル)の危険性にされされている米国金融企業のリスクの約95%がJPモーガン・チェイス銀行、アメリカ銀行、シティ・バンク、そしてゴールドマン・サックスの4大企業に集中しています。
経済規制緩和というのは、本質的に、グラス・スティーガル法の廃止とデリヴェティヴの無規制化の事で、民主党クリントン政権と共和党合同で行われたのですが、それ以前はチェイス、アメリカ銀行、そしてシティ・バンクは商業銀行であったわけで、預金者の預金を預かり、事業や消費者にローンを貸し付け、余った資金で国債を買うというビシネス・モデルでした。
それが、グラス・スティーガル法廃止によって、これらの正直な商業銀行がゴールドマン・サックスの様な投資銀行、つまり、ギャンブル・カジノ化していまい、自分達の資金のみならず、預金者達のお金までもを、金利や
為替換算レートや担保や物価価格や株式などの、無担保の賭け、つまり、賭博行為に使いだしたのです。
これらの賭けはあっという間に米国のGDPどころか、世界GDPをも軽く超えてしまったのです。実際、JPモーガン・チェイス・バンクの賭けだけとっても、世界GDPに匹敵してしまうのです。
OCCの2012年第一四半期のレポートによると、US金融企業が抱えるデリヴェテヴの総額は、227,000,000,000,000ドル(2京2千7百兆円)と、ほとんど減っていません。米4大銀行がさらされているデリヴェティヴ・リスクは彼等の幾つもの資産と資金のリスクを説明しているのです。
デリヴェティヴ津波は一握りのバカと腐敗し賄賂を貰っている米国金融規制緩和の監視役人達の犯罪行為の結果です。今日、米国4大銀行だけで、世界GDPの3.3倍規模のデリヴェティヴ・リスクに直面しているのです。私が米国国庫省の役人だった頃は、このような可能性はサイエンス・フィクションよりも(現実の)向こう側だと考えられていました。
うまく行けば、ほとんどのデリヴェティヴ・リスクはどうにか網(ネット)の様に広がるので、ネット・リスクは、それでも多くの国のGDPより大きいのですが、何百トリリオン(0が12個)ドル(何京円)といった規模にはならないでしょう。それでも、状況は米連銀(FRB)にとって心配で、3度目のQE(量的緩和)、これはお金を刷って米国国債や銀行の焦げ付きを買う事を意味しますが、連銀はQE3の買い入れを2倍にすると発表したばかりです。
言い方を変えますと、米国経済政策の全ては「大きすぎて潰せない」4大銀行の救済に専念する事にあるのです。銀行が大きすぎて潰せなくなったのは、独占禁止法がないかの如く、規制緩和によって財政・金融の集中を許したからです。
QEの目的は銀行の賭けを補助する借金の値を高く保つ事にあります。連銀は、借金の莫大なマネタイゼーション(現金・資金化)の目的は経済を低金利と不動産セールによって助ける事だと主張します。ですが、連銀の政策は、預金者、特に引退して、預金の利子で生計を立てている人達に(低金利なので)預金を引き出させる事になり、逆に経済を痛めているのです。CDS(クレディット・ディフォルト・スワップ)、マネー・マーケット・ファンド、そして債券に払われる金利の率はインフレ率より低いのです。
それに加えて、連銀が、4大銀行救済のために造っているお金は、ドル通貨を買っている国内外の人達をナーヴァスにしています。もし、投資家がドル離れすれば、ドル通貨の価値も下がり、連銀の買い増しが支えている金融道具(国債)の価値も下がり、そして金利が上がるのです。連銀がドル通貨を支える唯一の道は、金利を揚げる事なのです。そうなれば、債権保持者(日本・中国)は一掃され、米政府の負債にかけられる金利が爆発的に上昇するでしょう。
前回の国債と不動産の崩壊に続くこのような大惨事は、残りの人々の財産を一掃するでしょう。投資家は株式離れし「安全」な国債に投資してきていました。これが何故、連銀が債券の値をそんなに高く保つ事ができ、実質金利がマイナスである理由です。
大袈裟にプロパされた財政の崖は、崖の淵にぶら下がっているデリヴェティヴの危険性と米連銀の4大銀行を救うという献身によるドル通貨と債券市場の危険性に比べると、実を成していません。
今回も、メディアとその飼い主、米国政府は本物の問題を偽物の後ろに隠しているのです。財政の崖は、国を破綻から救うという名目で、1930年代に導入され、60年代半ばにリンドン・ジョンソンの「グレート・ソサエティー」政策で補助された、社会保障網を破壊するという共和党の手法になっているのです。
職がなくなった今となっては、実質の家族収入が停滞、もしくは減ってきている今となっては、富と収入がわずかな者達の手に集中していまった今となっては、共和党派は言います、社会保障網を破壊しろと、私達が財政の崖から落ちないためにと。
人類の歴史において、その様な政策は大抵、反乱と革命を引き起こし、それが米国が死に物狂いで必要としている事なのです。
恐らく私達のバカで腐敗した政策立案者達は私達にとって最終的に良い事をしているのでしょう。
(おしまい)
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